静かな鬼
帰ると、玄関に兄の靴があった。
「お兄ちゃん、帰ってきてるの?」
玄関先から兄を呼んだが、返事がない。寝ているのだろうか。
階段を上がり、兄の部屋の前に立った。
「お兄ちゃん?開けるよ?」
「やめてくれ。」
兄は起きていたようだ。
「何してるの?」
「勉強してる。集中したいんだ、用事があるならあとにしてくれないか。」
「わかった。」兄は、余程真面目に勉強をしているようだ。
リビングへ行き、テレビをつけた。通り魔が出た、とのニュースだった。この近くだ。怖いなぁ。
ガタン!
2階から、大きな物音がした。兄の部屋だ。
「お兄ちゃん、何の音?」無音。
「お兄ちゃん、部屋開けるよ?」無音。
もしかして、通り魔が家に居たのではないか?兄は脅されて私を部屋に入れないようにしたのでは?急に不安になった。
「お兄ちゃん、ほんとに部屋開けるからね?」無音。
私は勢いよく扉を開けた。
兄は、ヘッドホンをつけてパソコンに向かっていた。下半身は裸である。
ようやく私に気付いた兄は振り返った。
お兄ちゃんは、鬼いちゃんになった。