最終回から続く物語
時は桃美とトライガーの再会まで遡る。
トライガーと再会し魔法少女として再び悪と戦うことを決意した桃美であったが、魔法少女になったからといって特に何か変わった出来事が急に起こるわけでもなく、普段通り家事をこなしていた。
家族の布団を干し、洗濯機を回し、部屋の掃除をテキパキとこなしていくその姿は流石に主婦暦15年の手際のよさであった。普段と違うと言えば桃美の後ろを付いて回る空飛ぶぬいぐるみが増えたぐらいか。
家事の合間に最後の戦いからこの30年間の桃美のことや家族のこと、そしてスターランドのことなど様々な思い出話に花が咲いた。
「そういえばベリーとミントはどうしてるか君も知らないのかい?彼女達のプリティーコアの反応が星宮市から消えてるし、コアからの彼女達の魔力応答も途絶えているからこちらでは把握できていないんだが」
「焔ちゃんと葉月ちゃんのこと?私もあまり詳しくは知らないわね。焔ちゃんは中学に上がって派手な子達とつるむようになってから疎遠になっちゃったし、葉月ちゃんとは別々の高校に進学してそれっきりねぇ」
「なるほどね。君達は仲が良かったから意外だな」
「30年来の友達ってそうそうできる物じゃないわ。進学や就職の節目節目に出会いと別れがあるんだから、若いの時の交友関係ほど崩れやすいものよ」
いつからだろうか、時間という重みの前でかつての不思議な冒険の日々は桃美の中でぼんやり霞んだ物となっていた。
「魔法少女になっても何も変わらないのねぇ。30年前はなんだか忙しかった記憶があるけど」
そうこうしているうちに家事も粗方片付き、夕方のワイドショーのぼんやり眺めながらリビングでくつろいでいた桃美が呟く。トライガーはといえばなぜか先ほどから沈黙を保っている。
「……そろそろ頃合かな」
「何か言った?」
おもむろに飛び上がり桃美の元へ近寄るトライガー。
「大変だ!ヘイトレギオンが暴れている反応を察知した!既に君の娘さん達が向かったようだが何やら旗色が悪そうだぞ!」
「って、いきなりね。もうちょっと早く分からなかったの?」
「すまない、スターランドからの情報の同期が上手くいってなかったみたいだ」
突如敵の出現を報告したトライガーに訝しげな視線を投げる桃美。
「とにかく、すぐに変身するんだ!変身と同時に僕が現場へ転送するから!」
何やら焦りながら変身を促すトライガーの必死さに渋々桃美はプリティーコアを取り出す。
「夢もいるなら仕方ないか。プリティーチェンジ」
適当に変身の呪文を唱え光に包まれる桃美。そしてその光と共に桃美とトライガーの姿はリビングから掻き消えていた。
「(さあ舞台は整ったぞ。あの若造に一泡拭かせてやる)」
意識下でスターランドから送られてくるマギカフォースの戦況を最初から監視していたトライガーは最高のタイミングで桃美を転送できたことをほくそ笑んだ。