危うしマギカフォース!!新たな仲間はお母さん!?(5)
「いかに大軍を用意しようが頭さえ潰せば勝ちなのよ!覚えておきなさい!!」
漆黒の爆発を確認してサンシャインは高らかに勝利を宣言する。
「さて、前回と同じようにあとは残党狩りね。いくら多くてもボスの影響がなくなれば楽勝楽勝」
そう言いながらエナジーブレードを地面から引き抜き一歩踏み出そうとした次の瞬間、爆炎が収まり予想に反する光景が飛び込んでくる。
「なにが楽勝だって?」
「そんな……それになんなのよあの気持ち悪いのは……」
ダンテが立っていたはずの爆心地には黒色の異形の塊があった。
そしてそのウゾウゾと蠢く塊の中からダンテの声が聞こえたのだ。
ドリームの必殺技の直撃を受けた表面の異形の生物はボロボロと黒い粒子となって崩れつつあったが、その下、ダンテを覆っているものは健在であり、波が引くようにダンテから地面へと這っていく
。頭部と尾がなく表面に奇妙な文様が描かれた甲羅を持つ亀のような四足の異形はダンテの周りを蠢き魔法少女への包囲陣形へと加わった。
「腹立たしいがジャーアクの障魔獣とやらもなかなか役に立つではないか」
足元を這い回る障魔獣と呼んだ異形の生物を蹴飛ばしながらダンテは魔法少女達へ向き直る。
「さて、残党狩りがなんだって?」
先ほどまで意気揚々としていたサンシャインが後ずさる。
「貴様らが単純で本当に助かるよ。まさか本当にキールを倒した時と同じ戦法と取ってくるとはね」
キールとは前回の戦いでマギカフォース達が倒した鬼兵長の名だ。
その時も今と同じように苦戦を強いられるものの前線に出てきたキールをバインドで封じ、ドリームの必殺技で辛くも勝利した。
「こっちの手を読んでくるなんて、鬼にしてはなかなか頭が回るじゃないの」
サンシャインが苦し紛れに返す。
「言っただろう、ここが貴様らの墓場になると。そのために俺は徹底した準備をしてきたのだ」
「どうする?頼みの大火力も見ればヘバっているようじゃないか。ここで華々しく玉砕するか、それとも惨めに敗走するか選ばせてやろう!」
芝居がかった大袈裟な手振りでダンテは挑発する。
「クッソー、本当に不味いわね。でも逃げるなんて魔法少女としてカッコ悪すぎるし……」
「で、でもドリーム本当にキツそうだよ」
「ニャハ!ていうかこれ本当に逃げるのを待っててくれるかにゃー?」
「シリウスに皆を転送してもらうことのはできないのかしら?」
魔法少女達は背後のドリームを守るように背中を合わせながら小声で相談する。
「そうよ!シリウスなんとかならないの!?」
サンシャインは隠れていたシリウスを捕まえ振り回す。
「ぐぐぐ奴らの影響が強すぎて無理だ。そそそそれに出来たとしてもドリームは消耗が激しすぎて転送に耐え切れない可能性が高いいいい」
サンシャインから開放されヨレヨレになったシリウスは思考をめぐらせていた。
「(このままでは僕の計画は破綻してしまう、最悪ドリームを置き去りにしてでもモルモットの四人は逃がさないと)」
そんなことを考えているシリウスを知ってか知らずかドリームが呟く。
「私のことは放っておいて構いません、皆さんだけでも逃げてください」
「そんな!」「ドリーム、あなた……」「ニャハッ」「うぅぅ」
それぞれの口から声が上がる。
「私ならなんとかして逃げ切りますので、皆さんは体勢を立て直すことを考えてください」
ドリームの悲痛な意志がその言葉にこめられていた。
「で、どうするつもりですの?サンシャイン」
「そ、そこまで言われれば、私達だけでも撤退すべきかな……」
サンシャインは消えそうな声で呟く。
「(私達マギカフォースに敗北の言葉はないのよ。こんなとこで死ぬわけにはいかない……)」
「(確かに足手まといは置いていくのが正解かしらね)」
「(仕方ないけどこれが戦争なのよねー)」
「(ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい)」
ドリームの言葉と置かれている最悪の状況下で魔法少女達の思考は黒く染まっていった。
「さあ!覚悟は決まったな!?残る者は蹂躙あるのみだ!!」
ダンテが手を振り上げ悪鬼兵達が臨戦態勢となる。
一方マギカフォースは敗走の手はずを整えつつあった。
「行くぞ!」
「シリウス!転送を早く!!私だけでもいいから!!」
ダンテの声にサンシャインは取り乱しながら叫び縋る。
覚悟を決めたドリームが杖をぎゅっと握りなおしたその時だった。
桃色の眩い光が魔法少女達の前で爆発する。
「みんなの心にキラキラ笑顔!プリティーピーチ!ただいま参上!!」
光が収まったその場にはマギカフォース達とはまるでタイプの違う新たな魔法少女がポーズを決めて現れていた。
「なんだあれは!?」「なによあれ!?」
ダンテと魔法少女達から同じような言葉が飛び出す。
ただ一人ドリームだけを除いて。
「おかあ……さん……?」
突如現れた見知らぬ少女からドリームこと夢は母親と同じような気配を確かに感じ取っていた。