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かーちゃん実は魔法少女だったの……  作者: 海原虚無太郎
第5話 走れ青春!夏と祭と悪魔と魔法少女と
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動き始めた祭

「あー、早く交代時間こないかなぁ」

 壁に掛けられた巨大な6面のディスプレイにはいつも通りの表示がいつも通りに移り変わっていっている。

 星宮市内の負のエネルギー量の推移も、次元間のエネルギー交換量も、エネルギー交換効率もいつも通り問題なし。

 いつものように人の心のエネルギーがハートスポットを通りスターランドへ、そして様々な形で利用され浄化された心のエネルギーがハートスポットを通って星宮市へ。

 俺の仕事はそのデータをモニターして、時々手動でハートスポットの出入量の変化させたりフィルターを掛けたりするだけだ。

 

 星宮市内に多数設置されたハートスポットのデータは壁のディスプレイに地区毎に表示されており、気になればそこから個別に表示させたりすることもできるが今は必要がない。

 ざっくり見ているが、とりあえず駅前地区でエネルギー交換が若干追いついていないが日間変化による誤差レベルだ。

 それに例のプロジェクト間近ということもあるし波風は立てる必要も無いだろう。

 前回のメンテ以降、手動制御の必要もほとんどなくなりモニタールームの仕事はコーヒー片手に定時データの記録だけで気楽な反面暇でもある。


「おらっ!声に出てるぞ!」

 背後からバインダーで殴られた。

 振り向くと柴犬頭の老人が睨みつけているではないか。

「主任、まだ交代時間きてないっすよね?」

「お前がサボってないか心配で早めに来たんだよ。暇だからって気を抜いてるじゃないぞ」

 この老人はいちいち小言を言ってくる。


「問題はなかったんだろうな」

「あー、はい。特に大きな異常はありませんでした」

「大きな?小さな異常はあったのか?」

 そしてこういうやり取りがとても面倒だ。


「あー、いいえ。異常はありませんでした!」

 芝居がかった大袈裟な返事すると舌打ちが帰ってきた。

「引継ぎするから早くデータを出せ。まったく、俺の若い頃はハートスポットの制御も監視も全部魔法具で細かい操作をしなきゃならなかったんだからな。魔科学に更新されてお前でも出来るような簡単な仕事なったんだからこれぐらいきっちり気合入れてやらんか」

 はいはい、昔の武勇伝乙です。


「すぐ出しますんでちょっと待ってくださいよ」

 端末からデータを引き出そうと操作をしようと思った時だった。

 壁のディスプレイに見慣れぬ赤い表示が点滅し始めた。

「……ん?これはアラート?何のだ?」

 ぼんやりディスプレイを眺めていると次々と警告表示が増加していく。

「おい!これはなんだ!何か変な操作でもしたのか!!」

「い、いや。僕は何もしてなくて、勝手に警告が……あー、駅前地区のハートスポットですね」

「そんなの見ればわかるだろ!」

 モニタールームに怒号が響いた。



* * * *



「―会長、お時間よろしいでしょうか」

 内線から女性の声が聞こえる。

「構わん」

「本日のスケジュールですが9時より市役所で明日のセレモニーの打ち合わせ、13時より市長との会食、15時より本社にて明日の講演の打ち合わせとなります。また17時以降に会場の視察となっております」

「うむ。問題ない」

「かしこまりました。では、失礼いたします」

 内線のランプが消える。

 

 革張りの肘掛け椅子に深く腰掛けていた白髪の老人は白い口髭を撫でながらゆっくりと立ち上がった。

 その動きに合わせるように大きな黒檀のデスクの前にゆらりと黒い靄が立ち昇り、渦巻くように人の形へと変わっていく。

「司祭ゲイル、首尾はどうなっておるかな」

 人型となった黒い靄は受肉しカエルのような顔をした醜い二足歩行の魔物となり、老人に向かい跪いて報告を始めた。

「は、大司教ゼイドラ様。魔術陣はまもなく完成する模様です。明日のセレモニーに合わせて起動予定となっております。また祭壇も完成しております」

「よろしい。配置する悪魔と寺院の数も足りているだろうな」

「問題ありません。……ただ、一応ゼイドラ様のお耳に入れておきたいことが有りまして」

 カエル頭の悪魔の少し困惑したような様子に老人は眉を少し上げた。

「構わん、言ってみよ」

「これは悪鬼からの情報なのですが――」

 老人は黙って報告を聞いていたが、次第に口元に笑みが浮かび、いつしか大声で笑いだした。

「なるほど!フハハハ!これこそ悪魔神ダイアロット様のご加護というものだ。天は我ら悪魔の元に堕ちたのだ!!」

 地上10階の高みにある山三物産会長室におどろおどろしい笑い声が木霊するのであった。


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