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かーちゃん実は魔法少女だったの……  作者: 海原虚無太郎
第4話 フォームチェンジ!激突魔法熟女
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至宝の煌き(2)

 公園のグラウンドの片隅に現れた転移ゲートから桃美は姿を現した。

 一応人払いもされているようで周囲に人影は見当たらなかったが、遠くの遊具の方からは子供達の遊び声が聞こえていた。

「ここも久しぶりだなぁ」

 ここは桃美の母校である小学校のすぐ近くにある公園で、かつては学校帰りに友達と集まっておしゃべりしたり少女マンガの回し読みをしたりした他愛のない思い出に溢れた場所だ。

 思い出に浸りながら桃美は公園から母校へと歩き出した。

 公園から出て住宅地を5分も歩くと田んぼや畑が多くなり視界が開けていく、そして田んぼを挟んだ先には母校の校舎が見えていた。

 校舎の姿を見て桃美の心の中に様々な思いが湧いて来たが、それをぐっと噛み締めながら足を速めていく。


「こんにちわー。同窓会の案内状の確認は下駄箱でやってますので校舎の方へどうぞー」

 桃美は裏門側から学校へ入ったのだが、こちらにも同窓会の誘導係が配置されており親切に教えてくれた。

 下駄箱へと向かう道からは臨時駐車場となったグラウンドが見え、道路に面した北門側から次々と車が入ってきていた。

 正門から続く学校のメインストリートには桃美と同級の卒業生達がそこらで談笑しながら歩いており、校舎のそばは軽い人だかりになっていた。

 桃美達の世代はいわゆる第二次ベビーブームの生まれであり、40人学級が一学年6つや7つは当たり前で、桃美が在学時には全校生徒2000人を越えていたマンモス学校であった。

 卒業から30年近く経ってるので同窓会の参加者は年々少なくなっているが、今回は節目の会で母校での開催ということや自家用車での来場可能、近くには駅からのバスも走っているということでそれなりに賑わっているようだ。


 下駄箱前の受付で名簿にチェックをして名札を貰い校舎へと進んでいく。

 今回の同窓会では1号校舎の1階全ての教室にかつての写真のパネル展示がされ、1号校舎の脇に新設されている多目的ホールというのが同窓会のメイン会場となっているらしい。

 桃美はパネル展示がされている教室を回りながらも焔の姿を探していたが、今のところそれらしき人物はいなかった。

「ねぇ!杉田さんでしょ?」

 教室を出て廊下を歩いていた最中、急に大声で背後から呼び止められ桃美は一瞬ビクっとしてゆっくり振り向いた。

 背後にはふくよかな体型の眼鏡の女性が笑って立っていた。

 その笑顔が桃美のかつての記憶の中で符合する人物を思い出させた。

「えーっと、もしかしてエミちゃん?」

「正解!久しぶりね、桃美ちゃん」

 彼女は佐川恵美子、かつて新聞部であり、悪鬼が巻き起こす異変や桃美達の正体などを追って嗅ぎまわっていたクラスメイトだ。

「前の会は丁度仕事だったのよねぇ。あっ、そうそう今私新聞記者やってるから。星浜新聞取ってる?」

 名刺を差し出しながらかつてのようにマシンガントークの身の上話が続く。

「地域情報担当なんだけど最近変な事件多いじゃない?昨日だって駅前で爆発騒ぎがあってさぁ。今日出られるかヒヤヒヤしたからね」

 昨日の爆発事件というフレーズに桃美はギクリとしたが、恵美子は気にせず話を続けている。

 恵美子は最近変な事件が多くて忙しいと笑いながら話しているが、それらは割と桃美達が関わっていた事柄ばかりであり、桃美は内心冷や汗を書きながら適当に相槌を打っていた。


「それはそうと、エミちゃん。焔ちゃん見なかった?あと葉月ちゃんのことも何か知らない?」

 恵美子のマシンガントークの隙間を見計らって桃美が問いかけた。

「霧島さんと峰山さん?うーん、見てないわね。霧島さんのことは全然わかんないんだけど、峰山さんなら多分来ないはず。だって彼女今アメリカにいるはずだから」

「えっ?葉月ちゃん今アメリカなの?」

「あの子高校は県内トップの進学校に行ったのは知ってるでしょ?あの後アメリカの大学に入学してそのまま向こうで研究者として割と成功してるんだって。まだ記事になってないんだけど星宮市から海外に出て行って頑張ってる人を紹介する企画が持ち上がってて、そこのリストに彼女の名前があったのよ」

 峰山葉月は桃美、焔と共に魔法少女となった一人、かつてのプリティーミントのことである。

 当時から才女で知られ、大人びた態度と理詰めの行動を重視する頭脳派であり、考えるよりも先に体が動く行動派の焔とは度々衝突していた。

「向こうで結婚して子供もいたはず。流石に向こうに所帯もっちゃったらなかなか来れないわよねぇ」


「へぇ、葉月はそんなことになってたんだ」

 突如冷たい声に割り込まれ桃美は悪寒と共に声の元へと顔を向ける。

 振り向いた先には廊下を歩いてくる焔の姿があった。

 恵美子との会話に気を取られていたこともあったが、この距離まで焔の魔力を感知できなかったのは焔の周囲に魔力のモヤのような物が展開されているからだと桃美は気がついた。これがトライガーが言っていたジャミングのことなのだろう。

「あ、ああ。霧島さん?久しぶり」

 恵美子が少し引き気味に焔へ挨拶をした。

 そのはず、同窓会というのにジーパンに半袖のラフな出で立ちで、ろくに化粧もしていないやつれた焔の姿には鬼気迫る物があった。

 恵美子が変わり果てたその姿で焔と認識できたのは、かつてと変わらない釣り上がり気味の大きな目と覇気の宿った瞳のおかげだろう。

「桃美も久しぶりね」

 ゆっくりと桃美を見回して白々しく挨拶をしてくる焔に桃美は顔をこわばらせ挨拶を返した。

「焔ちゃん、久しぶり」

「佐川さん、ちょっと桃美借りていくわね。積もる話ってのがあって」

「え?ああ、あなた達仲良かったものね。桃美ちゃんもまた何かあったらその名刺の番号に電話頂戴ね」

 焔から逃げるように恵美子は素早く教室の方へ行ってしまった。

 廊下には他の同窓生もちらほらおり談笑していたが、桃美と焔の間にはかつてを懐かしむような和やかな雰囲気は一切存在しなかった。

「屋上にでも行こうか。人気のないところの方がいいんでしょ?」

 少しの沈黙の後、焔は邪な笑みを浮かべ踵を返して廊下を歩き出す。

 桃美も焔の背中を見詰めながらその後を付いていく。


 1階の賑やかな声が次第に小さくなっていくのを感じながら二人は階段をゆっくりと上っていった。

 そして屋上のドアをすんなりと開けて焔は屋上へと出て行く。

 真夏の太陽に焼かれたコンクリートの熱気を感じながら桃美は焔と向かい合った。

「ここも久しぶりね。桃美覚えてる?ここで良く集まってたよね」

「そうだね、私と焔ちゃんと、葉月ちゃん、あとトラちゃんと一緒に作戦会議をしたり、魔法の特訓をしたりしたね」

 何度か改修工事などがあったため屋上の雰囲気はかつてと違っていたが、そこからの風景などは確かに思い出の日々と一致する場所がまだまだ残っていた。

「焔ちゃんも魔法少女にまたなれたんだね。私もちょっと前にトラちゃんに頼まれたの」

 桃美は焔を刺激しないようやんわりと言葉を紡いでいった。

「葉月ちゃん今アメリカらしいんだけど、もし葉月ちゃんもこの街に戻ってたらまた3人で魔法少女やってたかもしれないね」

 焔は桃美の方を向いて沈黙を保っている。

「今またウラーム帝国や他の敵が暴れてて大変なの。焔ちゃんもよければ手伝って欲しいなって」

「白々しい。私は昨日の続きがしたいの」

 焔の言葉で桃美は口をつぐんでしまった。

「あんたも相変わらずぼんやりしたままね。まだ私達を捨てたトライガーのことを信用してるなんて呆れ果てたわ」

「違う!トラちゃんはちゃんと私達のことを気遣ってくれてた!」

「じゃあなんで最後の戦いの後で力をなくした私達を見捨てたの?散々利用しておいて力がなくなったら用済みってことだったんでしょ」

「違うの」

「違わない!魔力をなくさなかったら、あの時トライガーが失った魔力を戻してくれてたら私の人生はこんな風にならなかったのよ!」

「焔ちゃんそれは違うわ!」

 桃美の言葉は焔には届かなかった。

 ボルテージを上げる焔の体を中心に悪しき魔力が高まっていくのを桃美も感じ取っていた。

「だからこうして魔力を取り戻した今、全てを清算するためにこの街へ戻ってきた。この力で私はもう一度万能だった自分を取り戻す。そのために敵も、私の活躍を邪魔する魔法少女も全て倒す。そして再びこの街を救った英雄として人生をやり直すのよ!」

 焔はポケットからプリティーストーンを取り出していた。

「まずはこの忌まわしい思い出ばかりの学校諸共邪魔なあんたをぶっ潰す!そのあと葉月も見つけ出して魔法少女に戻る前に潰すわ」

「焔ちゃんのプリティーストーンは呪われてるの!あの頃の焔ちゃんを思い出してよ!」

 桃美もプリティーストーンを取り出し構えた。


「「プリティーチェンジ!!」」


 桃色と真紅の輝きが屋上で同時に弾けた。

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