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かーちゃん実は魔法少女だったの……  作者: 海原虚無太郎
第3話 ゆとり魔法少女セイントナース舞う
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杉田隆の他愛ない昼時

 7月○日:最近かーちゃんは良く出かけるようになった。今までは休みの日でも大体家で家事をやっているか買い物に行くかぐらいしかしなかったのに、先月あたりから休みの日は友達と遊ぶといって出かけることが多くなった。一度家に遊びに来ていたその「友達」と思われる人を見かけたことがあるが、どう考えてもかーちゃんより結構年下。やっぱりあのコスプレ関係の友達なんじゃ……


 俺は手帳をしまい机の前で大きなため息を吐いた。

 「魔法少女かーちゃん爆誕事件」以来オタク趣味もなんだか気力が萎えてしまい、最近はこのようにかーちゃん観察日記をつけている始末。神はなぜ俺にこのような罰を与えたもうたというのか。

 

 あれから俺とかーちゃんとの間ではちょっとよそよそしい雰囲気が漂っていて、ぎくしゃくした日々が続いている。

 オタク趣味を持っていて、親がそういうのに理解があったり実際にやっているなら最高の環境じゃないかという声(主にクラスメイトの悪友共)もあるようだがそんなのはアニメはマンガの世界だけだ。実際に40にもなる親がヒラヒラフリフリの魔法少女コスプレをして家を闊歩していたらどうだ?音速で自殺したくなるか殺してでも止めたくなるだろ?

 そういうことで我が家の微妙な空気はこれからも続きそうで本当に気が萎える。

 一応俺のかーちゃんはクラスメイトたちからすると若くて綺麗で羨ましい存在らしい。確かに高校生の俺を生んだのが23の時だ。そんな若々しい母親ならコスプレだって全然OK、むしろご褒美です、というか写メとって送ってくれって言ってた親友の中村には心底引いたけど、それでも他の連中はお前の母親ならギリ問題ないんじゃねという意見だった。

 確かにかーちゃんとは仲が良かったし、こんなことでギクシャクしてるのもアレだなって思ってはいる。それにオタバレ自体は両親にはそれとなくしているので良い。ただ、あのかーちゃんがコスプレをしているっていう事実だけは俺自身まだ上手く消化できていないのが問題なのだ。それだけ俺はかーちゃんのこと神格化していた素振りもあるのかなってぼんやり考えていた。


 ふと時計に目をやると12時になろうとしていた。今日は日曜だが両親共に不在だ。

 先日不幸にもとーちゃんが仕事中盲腸で病院に担ぎ込まれるという事件があった。幸い手術自体は無事終わったが、暫く入院しないといけないということだ。今日はかーちゃんが入院用の着替えなどを持っていくために出かけており、昼食は冷蔵庫の中の物で適当に作ってねという書置きが残されていた。

 腹も減ってきたし今日は俺の手料理を愛する妹にも振舞うか。そう思い立ったので俺は妹の夢の部屋のドアをノックする。

「夢ー、メシにしようぜ。兄ちゃん昼飯作るけど一緒に食べるか?」

 ガチャリとドアが開いて妹が出てきた。

「ご飯何にするの?」

 そう言いながら後ろに付いてきながら階段をポテポテ降りてくる妹、やはり可愛い。

 こう言ってはなんだけど、俺の妹は最高に可愛い。友人たちが羨むのも当然であり、俺はクソシスコンと言われているがまったく痛くも痒くもなく、負け犬共の遠吠えとして心地良いぐらいである。

「多分タマゴがあったはずだからオムライス作るか」

 オムライスの一言で背後の妹が笑顔になる気配を感じ俺は心の中でグッとガッツポーズをした。

 俺も俺で何ではあるが、妹も最近何故か両親と、特にかーちゃんと上手く行っていないらしく、よそよそしい態度を見せることが多い。家族が集まる晩御飯でも最近は口数がめっきり減ってしまったし、すぐに自分の部屋に篭ってしまうことが多くなった。

 夢はこれまではかーちゃん大好きっ子で、いつも傍にべったりくっついているぐらいだった。そのため夢の態度の変化にとーちゃんも最初は戸惑っていたが、最近では母親離れして大人になったんだろうというぐらいに受け止めているらしい。かーちゃんはかーちゃんでコスプレの件もあって少し後ろめたいのだろう。

 

 そんなわけで最近は夢の笑顔を見ることがめっきり減ってしまって兄ちゃん悲しい。

 だからこんな二人きりの時ぐらい以前の夢みたいに一杯笑ってもらいたい。

 俺はいつだって夢の味方だからな。

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