正義と生活を秤に掛けて(2)
「支部が一つ破壊されたという報告が上がっているが、調査はどこまで進んでいる?」
薄暗い会議室に落ち着きのある初老の男性の声が響く。
「は、悪魔寺院に関しては完全に破壊が確認されており、担当のアークデーモンと配置した悪魔は全て殺害されておりました。魔力の反応から例のマギカフォースが関係していると思われます」
円卓の向かい側でメガネをかけた痩せぎすの男が起立して報告書を読み上げる。
「あと、マギカフォース以外の魔力反応も検出されておりまして。それがその、あまり信憑性があるとは思えないのですが、スピリットアスリーテスも関与しているとの結果が出ております」
その単語が出た瞬間会議室がざわめきに支配される。
「まさか、奴らは20年も前の存在だぞ……」
「本当であればプランの変更も視野に入れるべきでは」
円卓の際奥に鎮座する初老の男性を中心とした幹部と思われる面々が口々に喚く声が木霊する。
「静まりたまえ、諸君」
初老の男性の一声で静寂が取り戻される。
「仮にスピリットアスリーテスが居ようが何する者ぞ。我々は20年前に下手を打ったゾーグ派とは力も規模も違うのだ。そして我々には大司教ゼイドラ様が付いておられる。我等ゼイドラ派こそダイアロット様復活を成し遂げると私は確信しておる」
初老の男の言葉は淡々としていたが力強い意志が感じ取れるようであった。
「まずは足元を掬われぬよう支部の再構築を急げ。あとはやられたアークデーモンは我が社の社員だったようだが、その後始末と後任を用意しておけ」
会議室には得体の知れない空気が渦巻くのであった。




