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かーちゃん実は魔法少女だったの……  作者: 海原虚無太郎
第2話 社畜から魔法少女へ、スピリットアスリーテス再誕
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正義と生活を秤に掛けて

 スピリットアスリーテスのリーダー、スピリットホワイトとして再び魔法の力を取り戻した環は魔法少女としての仕事を終え意気揚々と帰路へと付いていた。

 帰宅し、手元のスピリットメダルを改めて確認して独り言のように問いかける環。

「本当に魔法ってすごいのね。20年前のことすっかり忘れさせられてたのもだし、今でもあれだけの力を出せるなんて」

「タマちゃんの力は折り紙付きだからねぇ。本当なら他の子達もいれば良かったけど、20年前の力は殆ど残ってるし一人でも大丈夫よん。一応協力者のアテもあるしね」

 20年ぶりの魔力の感覚を反芻しながら興奮冷めやらぬ環だったが、ふと頭に引っかかっていたことを思い出す。

「そういえば、課長ぶっ飛ばしちゃったけど明日から職場どうなるんだろ?」

 ほんの数時間ほど前に対峙したアークデーモンは自分の部署の課長という人間界の姿を持っていた。そしてその課長ことアークデーモンを消滅させたことによる影響について今になって思い至るようになり、環は内心冷や汗をかいていた。

「ま、まぁ課長が悪魔だったんだから退治しないとダメだったしね。会社のことは会社の偉い人が何とかしてくれるはず……」

 言い聞かせるように口に出し環は寝支度を進めるのであった。

「そうそう、明日タマちゃんお休みでしょ?今後協力してくれる魔法少女に会いに行きましょ。もうアポは取ってあるからね」

「ちょっと!話が勝手に進みすぎでしょ!……まぁ暇だから良いけど、どんな人なのよ。私よりも若い子だったらちょっと恥ずかしいんだけど」

「それは行ってみてのお楽しみよ♪14時に駅前のカラオケ屋で待ち合わせにしてるからね~」

強引なスピネルの話に少し疲労感を覚えながら部屋の明かりを消しベットへと潜り込んだ。


 翌日、環はスピネルの指定したカラオケ屋へと足を運んだ。土曜の昼過ぎということもあり、店はそこそこ混みあっているようだった。

「(で、部屋はどこを取ればいいのよ。ていうか相手の名前も知らないのにどうすんのよ!)」

 環は胸ポケットに入っているスピリットメダルに小声で話しかける。

「(大丈夫よ。店員に店長を呼ぶように言ってから店長にメダルを見せればいいから)」

 頭の中にスピネルの言葉が直接響いてくる。

「本当に大丈夫かなぁ……」

 渋々言われたように店長を呼んでもらい、首を傾げながら店長を呼びに行ったバイトらしき店員に申し訳ない気持ちでいっぱいになった。カウンターへと呼ばれた店長はクレーマーの類かと身構えていたようだが、環の持つメダルを見るやすぐに一番奥の部屋へと案内するのだった。

「一体どういうことなの?」

 部屋に入るとスピネルに尋ねた。

「あの店長はスターランドの関係者なのよ。行ってみればここは秘密基地の一つみたいなものね」

 なんだがいまいち飲み込めない環であったが、通路からこの部屋へと近づく気配に気づき身構えた。ドアがガチャリと開けられ、見知らぬ女性がおっかなびっくりといった感じで入ってきた。

「えーっと?魔法少女の方でいいんです?よね?」

 全体的に可愛らしい印象を与えるその女性は恐る恐る訊ねてきた。

「そうよん、初めましてプリティーピーチちゃん♪この子はスピリットアスリーテスのリーダーをしてたスピリットホワイトって言うのよ、そして私は契約者のスピネル。以後よろしく☆」

 テーブルに置いていたメダルが勝手に自己紹介を始める。

「スピネル、部署が違うのに今回の計画に参加してくれて本当にありがとう。スピリットホワイト、僕はトライガーと言って、プリティーピーチの契約者だ」

「ぷ、プリティーピーチです……30年前の魔法少女です」

 女性のカバンから顔を出した猫のようなぬいぐるみに紹介されて女性も搾り出すように自己紹介をした。流石に自分よりも10歳も年上の女性からプリティーだの魔法少女だのという単語が出てくるのは聞いているこっちも少し恥ずかしい気持ちになってしまう。

 環は改めて赤面している先輩の元魔法少女を見るが、10歳年上という感じはあまりしない若々しさと可愛らしさのようなオーラを備えているなぁと感じた。


「さて、今回集まってもらったのはヘイトレギオンに対する魔法少女同盟の結成についてだ」

とりあえず環も桃美もソファーへと腰掛けて、互いの本名などの簡単な事情説明も一段落した後トライガーが切り出した。

「知っていると思うがヘイトレギオンを構成しているウラーム帝国、そしてダークヘイターについては君達がそれぞれかつて倒した敵だ。そしてそれらがまた復活したということで君達にも魔法少女として復帰してもらい、相手同様に同盟を結んで対処しようというのが今回の魔法少女同盟というわけだ」

「同盟って昔みたいに魔法少女チームを作って一緒に戦うってことなの?」

 桃美はアイスコーヒーを片手にトライガーに訊ねる。

「大体合ってるが、君達ももう大人でそれぞれ生活というものがあるからかつてのようにいつも一緒に出動というのは難しいだろ。だからこの同盟というのは基本的にはそれぞれ単独での活動とするが、かつて戦った相手に対する情報を共有したり、事件に関してそれぞれの方向からのアプローチしたりするような形でお互い助け合おうという物として動く」

「そういうことならあとはジャーアクと戦った魔法少女も同盟に参加するってことでいいのよね?あと夢……じゃなかった、マギカフォースはどうなの?」

「ジャーアクと戦った魔法少女についても同盟に参加が一応決まっているが担当者が魔法少女の復帰についてあまり乗り気じゃなくて少し遅れているんだ。マギカフォースについては前にも少し言ったかも知れないが。別のプロジェクトとして動いているからノータッチだ。しかも姫様の方が面白がってマギカフォースプロジェクトと魔法少女同盟についてヘイトレギオン討伐競争にするとか言い出しちゃったからライバル関係ということにもなっているんだ」

「姫様?」

 環が疑問を口に出す。

「スターランドの現女王様のことさ、桃美は色々とあったから覚えているだろ」

「あの子も今は女王やってるのね……元気にしているなら良かった」

 桃美にはスターランド現女王ティアラとの30年前の因縁があった。

 というのも30年前のウラーム帝国侵攻時にスターランドはウラーム帝王の呪いにより当時の王と妃が封印されてしまい陥落寸前の状況にまで追いやられていた。そこで当時王女だったティアラは残存兵を纏めて何とか抵抗続け、魔法少女運用部隊の精鋭であったトライガーにスターランドとその表裏世界である星宮市を救う戦士としての魔法少女の選定とその指揮権を与えて送り出した。

 トライガーに見出され契約して魔法少女となった桃美達の活躍で星宮市におけるウラーム帝国の影響は弱体化していき、次はスターランド奪還という段にまで至ったのだが、ティアラはウラーム帝王の呪縛によって悪の手に落ちてしまい敵として桃美達と対峙することとなったのだ。

「とにかく同盟についてはあと一人参加するからまた追々紹介するよ。最近はダークヘイターの活動が活発だからスピリットホワイトにはメインで頑張ってもらうことになるけど協力は惜しまない。マギカフォースに後れを取らないようにお互い頑張ろう」

 トライガーが力強く言葉を発してその場はお開きとなった。

 桃美と環はお互いの連絡先を交換してカラオケ屋を後にするのだった。

2016/11/03 スピネルの設定を修正しています

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