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かーちゃん実は魔法少女だったの……  作者: 海原虚無太郎
第1話 魔法熟女?プリティーピーチ復活
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40歳の魔法少女(2)

「プリティーチェンジ!……だったっけ?」

 その瞬間桃美は懐かしい光に包まれ、自分の意思ではコントロールできない大いなる力に体を支配された。


 プリティーチェンジ、魔法少女の姿へと変身するための呪文だ。

 放出された魔力はプリティコアを媒体として異次元フィールドを形成。フィールド内では魔力によって衣服の再構成、全身への魔力フィールド形成、魔法具の召喚および装着がフルオートで行われる。

 つまり、呪文が発動してしまうとそれに抗うことは不可能となり、否が応でも魔法少女への変身シークエンスが進行する。

 光に包まれる桃美の体、鳴り響く謎のコーラス、衣服が魔力により分解され一糸纏わぬ姿となるが瞬時に謎の光によって全身が覆われる。

 まずは右腕、次に左腕とテンポよく魔法具である白色のブレスレットと桃色のアームガードが装着される。そして右足、左足と輝き、純白のヒールが作り出され、体は桃色のレオタード、腰には白いフリル状のミニスカートが光とともに現れる。

 最後は頭に金色の羽飾りの付いたアミュレットが被せられ、謎のコーラスのノリも最高潮に、そして一拍おいて、

「みんなの心にキラキラ笑顔!プリティーピーチ!ただいま参上!!」

 決めポーズ、決めセリフとともに光の中より桃美が現れる。

 決めポーズ、決めセリフはもちろん呪文の効果によって季節的なイベントなど一部例外を除いてどのような状況下において変わらず実行される。また変身シークエンスは現実の時間軸から外れた異次元フィールド内で行われるため、現実の時間軸における変身は0.02秒しかかからない。


「……マジか」

「プリティーピーチ!いまこそ君の力が必要だ!」

 愕然としている桃美の背後から聞き覚えのある声がかけられる。

「……もしかして、トラちゃん?」

 振り返りそこにいた宙に浮く虎とも猫ともよくわからない古ぼけたぬいぐるみのような生き物を認めて問いかける。

「トライガーだ!」

「懐かしい掛け合い!っていうか30年ぶりだし!っていうかなんで私魔法使えるの!?なんで変身してんの!?」

 ぬいぐるみのような生き物を抱きつくように捕まえた桃美は矢継ぎ早に今の状況と問いただす。

「ちょっと不味いことになってな」

 もこもことしなトライガーと名乗るぬいぐるみ生物は桃美の胸に埋もれながらも喋りだす。


 トライガー、スターランドの妖精であり、スターランドと星宮市に忍びよるウラーム帝国の魔の手に対抗するためかつて桃美と運命の出会いを果たしプリティピーチの契約を結んだ。

 いわゆるマスコット的使い魔であり、ぬいぐるみのような外見はこちらの世界での仮の姿である。

「それにしてもトラちゃんなんだか薄汚れちゃってるね。またお風呂で洗ってあげようか?」

「話の腰を折るんじゃない!それに君はもう人妻なんだからそんな大胆な発言は慎みたまえ!」

「何照れてるのよ。ぬいぐるみのクセに」

「あー!もう!とにかく、君にはまたプリティピーチとして悪と戦ってもらう必要になったんだ!!」

 トライガーは桃美の胸から逃げ出し叫ぶ。


「それで、なんで私また変身できてるのよ?契約は帝王を倒してみんなにやさしさの心が戻ったから終わったんじゃないの?」

「それについてだが、実は契約自体に終わりはなかったんだ」

「は?」

 唖然とする桃美を尻目にトライガーは続ける。

「君は帝王との戦いで力を使いすぎて一時的に魔力の枯渇状態に陥っただけで、契約が切れて魔法が使えなくなったわけではなかったんだ。それを君が勝手に契約が切れたと思い込んで魔法を使わなかっただけさ。それに君の魔力自体はプリティーコア関係なしに自前で持ってたものだから、そもそも契約があろうがなかろうが君はある程度魔力を使えたんだよ。プリティーコアと変身の呪文はあくまでも魔法の使い方やベクトルをこちらである程度制御するためのものでしかないしね」


「頭痛くなってきた……。それでなんでまた私が魔法少女やるのよ。もう少女じゃなくてマダムなのよ!」

「……熟女とは言いたくないんだね」

 瞬間トライガーを笑顔で捕まえる桃美。顔は笑っているが完全に殺意がもれ出ている。

「何か言った?」

「いやなんでも。ていうか魔力ブーストした力で握るのやめて、千切れちゃう」

 桃美から開放されよろよろと浮遊したトライガーは続ける。

「帝王は君が倒したが、残党がまだ残っていたんだ。ただの残党であれば我々だけでも対処できたんだがちょっと不味いことになってね」

「ダークヘイターとジャーアクって知ってるかい?」

「ダークヘイターは20年ぐらい前にこの近辺で暴れてた悪魔教団だっけ?で、ジャーアクは10年ぐらい前に現れた夢世界からの侵略者だったかな」

「よく知ってるね、と言いたいがやっぱり薄々魔力が戻ってること気がついていたんだろ。」

「なんとなく、ね。魔法というかある時から勘が鋭くなった感じだったかな。でも魔法が使えるとは思ってはいなかったのよ」

 桃美は伏し目がちに答える。

 魔法を失った時の喪失感からあえて魔法に関する興味を失おうとしていた時期もあった。

 でもなぜか魔法や不思議な出来事に関する情報が自然と耳に届いてきたのだ。


「それなら話が早い。それらの悪はその時々の魔法少女たちによって駆逐されたことも知っているだろ?」

「まぁいろいろと」

 言葉を濁らせる桃美。

「そして今この町を中心にした星宮市内で起こっている事件はそれら悪の勢力の残党が集結して新たな巨悪、ヘイトレギオンと名乗って再度侵攻を始めた結果だ」

 トライガーは桃美の顔の前で改まってたずねた。

「桃美、君は契約の呪文を内容を覚えているかい?」

「……人々にやさしさの心が消え、闇に染まるとき、私は心の闇を払い、笑顔の光を取り戻すため魔法少女になります。……だっけ?」

「その通り、つまり今はその契約内容に合致する状況となったからまた君には魔法少女として働いてもらおうというわけだ」



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