かーちゃん実は魔法少女だったの……
「さて、あとは彼女達への説明だな」
トライガーはまだ呆けたように棒立ちしているマギカフォースを確認する。
「私は一刻も早くここから帰りたいんだけどなぁ……」
そう嘆く桃美だったが、マギカフォース達がこちらへ向かって来ていることに気づき忘れていた羞恥心が蘇ってくる。
「ちょっと!あんた一体何者なのよ!!後から出てきて美味しいところ持ってくなんてふざけんてんの!!見たことない顔だしあんたどこ中なのよ!!」
赤を基調としたスーツの魔法少女が怒気を荒げてずんずん迫ってくる。
「まったく、そんな因縁をつける魔法少女がどこにいますのよ……」
「ヤンキーかな?かな?」
「お、おちつきましょう・・・」
後から付いてくるほかの魔法少女達が口々に先頭に立つリーダーを咎める。
「とにかく!あんたのこと全部話してもらうからね!!伝説の魔法少女がどうのってのはなんなのよ!?」
「えっと……その……あの……ははは……」
若い娘達に囲まれて赤面した桃美は今の状況と自分の姿をどう説明したものか完全にパニックに陥り言葉にならない呟きを放つのが精一杯だった。
それを見かねたトライガーが桃美の前へと出る。
「やあ、僕はトライガー。僕も君達のところのシリウスと同じくスターランドの妖精だ。そしてこの子はプリティーピーチ。敵の悪鬼達が言っていたがかつてウラーム帝国を倒した伝説の魔法少女の二代目なんだ。さっきの魔法は初代直伝の必殺技といったところかな」
「あんたにも妖精が付いているのね。それで、あんたは一体何者なのよ?私達の学校じゃあ見たことない顔だし、それに目的は何なのよ?」
トライガーの説明に怪訝な顔をしながらも食って掛かるサンシャイン。
「すまない、彼女の正体やこちらの目的に関しては魔法少女との契約によって他の魔法少女へ詳しく話すことはできないんだ。一応ヘイトレギオンを滅ぼす目的は君達と一致しているし、我々は敵ではないとだけ言っておこう」
トライガーはシリウスを一瞥してまたサンシャインへ視線を戻す。シリウスは冷や汗をかくしかなかった。
「味方でもない、ということでいいのかしら?」
アクアがトライガーを一睨みして指摘する。
「それはどう解釈しても構わない。ただ、君達とこちらから敵対する意志がないことは誓おう」
トライガーは淡々と返答する。
この間桃美は彼女達と目を合わせないよう俯いてもじもじしているだけだった。
「なんでもいいわよ!でも今度は邪魔しないでよ!あそこから私達の大逆転劇が始まるところだったんだからね!!」
「善処しよう」
喚くサンシャインへトライガーがそっけなく返す。
「もういいわよ!シリウス、帰るわよ!帰ったらあんたの知ってること全部話しなさいよ!!」
サンシャインはシリウスを掴んで怒鳴っていた。
シリウスはサンシャインの手の中で呻きながら転送ゲートを出現させる。
転送ゲートへと向かうマギカフォース達であったが、入り際にサンシャインが振り返りまたこちらを睨みつける。
「今度はあんたの出番なんてないんだからね!指をくわえて私達の活躍を見てなさい!!」
捨て台詞を吐いて最後に転送ゲートへ駆け込むサンシャインであった。
「……はぁ。やっと行ってくれた」
安堵の息を吐く桃美。
自分の娘がずっと目を逸らさないことに気が気でなく、サンシャインが喚いていた内容など全然頭に入っていなかった。
「あの子達本当に大丈夫なのかしら?なんか夢のこと見捨てようとしてたし」
「彼女達はまだ魔法少女としては未熟だから仕方ない。そして現役の魔法少女の心も蝕みそうになるほど敵の影響力も強くなっているということさ」
マギカフォースたちは装備で一人前の力を持っているものの、魔力素養自体はほぼ一般人である。
そのため邪悪なエネルギーによって心が悪へと傾きやすいのも事実だった。
「まぁその辺は彼女達担当の後輩がなんとかするさ。なんとかしなければ首が飛ぶしね。本当にヤバい時は君が助ければいいし」
完全に他人事のような感じでトライガーは答える。
「さて、我々も帰ろうか。しかし、最後の必殺技は少しやりすぎだな。余波で現実世界にも影響がでているぞ」
「えっ!?なんかヤバイことになっちゃった!?」
トライガーのいきなりな情報にうろたえる桃美。
「人的被害は出てないが団地のガラス窓が結構な枚数割れているようだ。まぁ明日の新聞の地域欄に怪事件の記事が一つ増えるだけだろう。力のコントロールはまた練習が必要かもね」
「そんなぁ……」
落胆する桃美と共にトライガーは次元回廊を後にする。




