その後のメガミたち 6
最近下ネタというか、エロが続いたので反省しています。
「んん……ああ、ここは……保健室?」
けだるげにつぶやく。その吐く息までがぞっとするくらい色っぽい。爪の垢を煎じて飲ませたいってのはこういうときに使う言葉だろう。あえて、誰にとは言わんが。
「良かった、先輩無事だったんですね」
「先輩? なんで、そんな呼び方? 一子って名前で呼んでよ」
またこの展開? なんで会長といい、先輩といい、下の名前で呼ばれたがるんだろう? そう不思議に思いながらも、オレは照れながら先輩の名前を口にした。
「一子、無事でよかった」
「サンキュー、和夫」
(和夫!?)
どうやら、先輩はオレと父さんを勘違いしているらしい。
「でも全然無事じゃないし。チョー怖い夢見たし。和夫が急にいなくなって、そのまま死んじゃうっつう夢。あたしたち二度と会えないんだよ。ひどくない? もうサイアク。夢でよかったぁ」
「……先輩」
「まぁた先輩? アタシそんなにフケてるかな?」
「ごめん」
「もういいわよ。その代りぃ、もっとギューッてして」
逆らうことなんてできなかった。オレは白神先輩の細い体を力いっぱい抱きしめた。
「思いっきりされるの好き……なんだか、また眠くなってきちゃった」
「眠いときは寝るのが一番だよ。オレのことは気にせずおやすみ」
「でも寝たくないなぁ。またさっきの夢を見たらどうしよう」
「大丈夫だよ、オレがついてる。どんな夢を見ても、目が覚めたらオレがいるから」
「そっか、そうだよね。言うじゃん……かずお……の……くせ……に」
そう言って、先輩は不自然なくらいあっさりと眠りに落ちた。
被害の少なかったベッドに先輩を移すと、散らばったガラス片や家具の片付けを始める。
掃除をしながら、オレは保健室におこった出来事を推理した。
白神先輩の持っていた鳥かごと、彼女を避けるような不自然なガラス片の散らばり方からして、かごの中身は「幸運を呼ぶ白烏」だったんだろう。白烏がもたらす幸運のおかげで、先輩は怪我をまのがれることができたわけだ。
ここ数日保健室にこもっていたのは、内緒で「白い烏」を飼い始めたからか?
なぜ先輩がオレたちに烏のことを黙っていたのかはわからない。美少女人形の心の内は底知れない。
さらに謎なのは、鳥かごの中にいただろう白烏の行方だ。
地震の際にかごが開いて逃げ出したのか? 透じゃあるまいし、あの白神先輩がそんなドジをするだろうか?
もしかして、白いカラスを狙った何モノかが先輩を眠せた!?
一体誰が、何の目的でそんなことをしたんだろう?
それも、オレには皆目見当もつかない。明日になったら、真紅さんか透に相談しよう。
「……でも今は、先輩についていなくちゃ」
オレはベッドで寝息を立てる美少女人形の顔を覗き込んだ。計算されつくしたかのような完璧な美しさ。でもそんな外見よりも、彼女の内面にはもっと光り輝く宝物があることをオレは知っている。
そして、今日わかった一番大切なこと。
それは……白神先輩が父さんの死を全然振っきっていないってことだ。きっとあの日から毎晩、夢で父さんに会い、一人目覚めて泣いてたんだろう。
ベッドの傍らに座って、その白い手を握った。ひんやり冷たい手が次第に温かくなっていく。涙が出そうになるのをぐっと堪えた。
「あのバカ親父、なんで死んじまいやがったんだ!」
オレは今ほど、父の死を恨んだことはなかった。




