不可思議セブンティセブン5
精神的ダメージを負ったオレと会長が次に訪れたのは体育館だった。
『学園七不思議その5、「体育館に転がるバスケットボール」
無人の体育館に、なぜかバスケットボールの弾む音がする。それは、大会前に交通事故で亡くなった男子生徒の幽霊、体育館の太郎さんの仕業だった』
体育館の重い扉を開けると、真っ暗な空間が広がっている。
けれど、ボールの弾む音はおろかラップ音一つ聞こえてこなかった。
「アレ、何もないですよ」
「まあ、霊ってのは気まぐれだから、出ないときは何日も出てこないものよ」
「そりゃ困る。一刻も早く封印帳を制覇しなきゃいけないんですから。体育館のどこかに潜んでいるかもしれません。会長も探してください」
手分けして探したけど、もともと体育館には隠れるところもない。
「そうだ、体育倉庫かも!」
倉庫を覗くとそこには人影ならぬ霊の影が一つ、いや
「えっ、二人?」
よくみると、一人は体操着姿の男子生徒。もう一人は……さっきトイレから出てきた赤いスカートの女の子、トイレの花子さんだった。
花子さんは、オレの顔を見るなり小さく悲鳴を上げた。すると男子生徒が花子さんをかばってオレの前に立ちはだかる。
「キサマが、僕の花子ちゃんを襲った変態かぁ!」
「ええっ!? 変態って、いきなり何を言い出すんだ?」
わけがわからずキョトンとしていると、会長が耳打ちしてきた。
「どういうことなのか、ノートで調べてみたら?」
慌てて透ノートをめくる。すると、ページの隅っこに小さくカッコ書きがついていた。
(体育館の太郎さんは、トイレの花子さんと付き合ってるんだって)
付き合ってるって、じゃあこの太郎さんは彼女持ちなのか? 幽霊の分際でリア充とは許せん。死ねばいいのに……って、もう死んでるのか。
「さっき、花子ちゃんを卑猥な遊びに誘っただろ。僕の花子ちゃんに手を出すヤツは許さないぞ!」
「卑猥な遊びって、さっきのお医者さんごっこのこと? あのねえ、君ら、お医者さんごっこが卑猥な遊びって決めつめるのはどうかと思うよ。本物のお医者さんが聞いたら気を悪くするだろ」
「うるさいっ! 僕はスポーツマンだから喧嘩はしない。1ON1で勝負だ!」
「しょうがないなぁ、その勝負受けてたってやるよ」
こうしてオレは、体育館の太郎さんとバスケット勝負をすることになった。実は中学三年間バスケ部だったんで、いささか腕に覚えがあるんだ。
そして10分後――
そこには拍子抜けなくらいあっさりと敗北を喫し、体育館の床に這い蹲るオレの姿があった。
「こんなのインチキだろ!」
涙ながらに抗議する。なんとバスケットボールも霊体で、人間のオレには指一本触れることができなかったんだ。
だが、周りの反応は冷たい。
「姫雪君、ちょっとガッカリだわ。まさかボールに触ることもできないなんて」
「キャー、太郎ちゃんカッコイイ! それにくらべて変態さんは、ぷぷぷ」
「コレに懲りたら、二度と花子ちゃんにちょっかい出すんじゃないぞ」
オレは泣きながら体育館を後にした。唯一心が救われたのは、封印帳が朱に変わっていたことか。




