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カノジョ人形1

(4) 


 次の日。


 目が覚めると、もう夕方近かった。


「やべぇ、寝過ごした……って、今日は学校休みか」


 昨夜、なんだかんだでオレたちが寮に帰り着いた時にはもう夜が明けかかっていた。それからベッドに潜り込んで、かれこれ十時間以上眠り続けていたことになる。


(まあ、あれだけのことがあったんだから、しかたないか)


 頭の中に、ありえない出来事の連続だった昨日が甦る。


 まず弓道場で白神先輩に出会ったことからして普通じゃなかった。オレは魅了の呪いとやらを掛けられ、封印帳を預けられた。さらに大変だったのが夜の学校だ。そこでオレと透は学園七不思議に遭遇した。まさか本当に学園七不思議なん

てオカルト現象が本当に存在するなんて。


 最後のとどめが、次郎丸真紅生徒会長だ。


 刀を振り回して襲ってきたり、一緒に篭り鼠の落とし穴に落ちたり、でも一番の驚きはその後だった。まさか学園カースト最上位の生徒会長から彼女になってあげると言われるなんて、一昨日の自分が知ったら目ん玉飛び出るぞ。


 まあ彼女といっても封印帳との引き換えにって条件だから、別にオレのことを好きってわけじゃないんだよな。うん、わかってる。そこまでオレも身の程知らずじゃない。そもそも、会長は学園カースト上位の名だたる男子達の告白を袖にしてきたんだ。だから言ってたじゃないか、自分は新品だって。


「新品って……やっぱ、そういう意味だよな」


 会長はこうも言ってたっけ、彼女になったら覚える、物覚えはいい方だって。


 なんだか、想像しただけで鼻血が出そうになってきた。


 まさか本気じゃないとは思うけど、そうとも言い切れない理由が机の上にあった。


 会長が貸してくれた「八曜鏡」だ。


 封印帳を魑魅魍魎に奪われないようにと貸してくれた次郎丸家の秘宝。


 鏡といっても手のひらくらいの丸い金属の板で、普通の鏡のように物が映るわけじゃない。きっと日本史に出てくる銅鏡ってのがこんなカンジなんだろう。ホントに必要になるかはともかく、そんな大事なものを貸し出すなんて、たんなる冗談でそんなことするだろうか?


 ってことは、本気で彼女になってくれるつもりなのかな?


 少なくともオレのことを嫌ってはいない、くらいには考えていいんだよな。


「アレ? でも確かここに……」


 浮かれ気分で机の上の八曜鏡を手に取ったオレは、卓上の異変に気がついて一瞬で我に返った。


 ここには八曜鏡と一緒に封印帳を置いていたはずだ。


 肝腎の封印帳がなくなっている。


 まさか、早速盗まれちまったのか!



「あ、起きたんだ」


 蒼ざめていると、部屋のドアが開いて透が帰って来た。


「透、大変だ、封印帳が失くなってるんだ!」


「ああ、昨日言ったじゃん。ボクがちょっと借りたんだ」


 透は苦笑いを浮かべてコートの下から古文書を取り出した。それは紛れもなく、白神先輩から預けられた封印帳だ。


「よかったぁ」


 安心して床にへたり込むオレに、透は一冊のノートをに手渡した。


「九郎ちゃんの参考になると思って、封印帳を翻訳してきたんだ」


 ページをめくると、ノートには几帳面な小さい字でびっしりと書き込みがされている。


「ボク、古文は得意だし、図書室には草書体の資料もあるからね。ただ、封印帳に書かれていたのは七不思議の名前と簡単な説明だけだったから、学園新聞にあった学園七不思議の特集と合わせてわかりやすくまとめておいたよ」


 そこに書かれているのは、青嵐学園七不思議その1からその77までの記録だった。なるほど単なる封印帳の現代語訳ではなく、透なりの解釈やコメントが付け加えてあるみたいだ。


「こりゃいい。白神先輩が封印帳を盗んで何をしたかったのか、これでわかるかもしれないぞ」


「どう? ボクって役に立つでしょ」


「ああ、さすがはオレの相棒だ」


「へっへっへっ、そうでしょそうでしょ……ふう」


 得意気に笑っていた透がいきなりため息を付いた。よくみると少し様子がおかしい。いつも血色のいい唇が紫色で、眼の下にはクマができていた。


「なんだ透、おまえ、大丈夫?」


「たぶん、寝不足だと思うけど……あっ」


 言うが早いか、その小さな身体がグラリと傾いた。慌てて透の肩を抱いたオレはその熱の高さにギョッとした。


「おい、凄い熱じゃないか。寝不足ってことはあれから寝ないでこれ作ったのか?」


「へへへ」


「へへへじゃないよ。健康管理には人一倍気をつけるようにって、いつも口を酸っぱくして言ってるだろ。おまえは滅多なことじゃ医者に掛かることもできないんだからな」


 寮生が病気や怪我になった場合、学園の隣にある青嵐市立病院に行くのが通例だ。でも生徒の多くが通院する市立病院で診察を受けたら、女だってことがバレてしまうかもしれない。


「うん、ごめん」


 とりあえずベッドに寝かせ、常備の解熱剤を飲ませると、透はあっという間に眠りに落ちた。


 子供のような寝顔を見ながら、不吉な想像が頭をよぎる。


(まさか、昨日の学園七不思議に祟られたってわけじゃないよな)


 自然に封印帳に目が行った。もちろん中身は読めないけど、今は透が訳してくれたノートがある。


 机に座って、ノートを広げてみた。

 その冒頭には、こう書かれていた。

『この封印帳に青嵐の地に伝わる七不思議の妖かし、その七十七を記す。すべての妖かしを巡りしものに、封印されし青嵐の●●(ここはわからないようにわざと塗りつぶされているみたい)を授けるものとする(つまり、不思議を全部見るとXXがもらえるってことらしい)』

()の中は透がつけた補足らしい。

 七不思議を全て巡ったら何かがもらえるのか。たしか、白神先輩もそんなこと言ってたような気がする。封印帳はスタンプラリーみたいなもんで全部みるといいことがある、とかなんとか。


 更にページをめくった。次は、どうやら目次らしい。青嵐学園七不思議その1からその77までの名称がずらっと並んでいた。


その1、『トイレに潜む赤い着物の少女』

その2、『おばけ階段』

その3、『真夜中の調理実習』

その4、『プールサイドの相撲レスラー』

その5、『体育館にころがるバスケットボール』

その6、『怪人赤マント』

その7、『すすりなくロッカー』

その8、『異次元につながる鏡』

その9、『カシマレイコ』

その10、『踊る理科室の骨格標本』

その11、『紙をくれ』

その12、『深夜のオーケストラ』

その13、『踊る作曲家たち』

その14、『美術室の壁の傷』

その15、『屋根裏の秘密の部屋』

その16、『廊下を歩く足だけ妖怪』

その17、『理科室の生物標本が動き出す』

その18、『アトランダム百科事典』

その19、『職員室ののっぺら先生』

その20、『尻尾が二つに分かれた猫』

その21、『猿の手を持つ少女』

その22、『隠された自画像』

その23、『トイレに潜む緑の着物の少女』

その24、『トイレに潜む黄色の着物の少女』

その25、『トイレ大家族』

その26、『自動販売機のクレクレ男』

その27、『校庭を走る二宮金次郎』

その28、『保健室の美少女人形』

その29、『保健室の人食いベッド』

その30、『2―Aの吸血鬼』

その31、『2―Aの狼男』

その32、『2―Aのゾンビ』

その33、『生き返りの桜』

その34、『うめき声をあげる焼却炉』

その35、『緑のポストマン』

その36、『生きているロボット』

その37、『ジャージマン』

その38、『近づく赤い彗星』

その39、『パソコンの画面が落せない』

その40、『パソコンの画面が立ち上がらない』

その41、『金色に輝く校長像』

その42、『野球部のマドンナ』

その43、『漫研のヒバゴン』

その44、『食堂の雪女』

その45、『閉めても閉まらないドア』

その46、『キューピッド通信』

その47、『死神通信』

その48、『屋上の誘い神』

その49、『幸運の白い蛇』

その50、『幸運の白い烏』

その51、『安井先生の貧乏神』

その52、『視聴覚室に映る呪いのビデオ』

その53、『蟲毒の檻』

その54、『UFOと交信できる場所』

その55、『過去と交信できるラジオ』

その56、『アイドル教師の素顔』

その57、『真夜中の暗室』

その58、『黒塗りの卒業アルバム』

その59、『血のシャワールーム』

その60、『怪奇、人食い植物』

その61、『校庭を彷徨う落ち武者の行進』

その62、『甦るゾンビの群れ』

その63、『校舎裏の人面石』

その64、『公衆電話からさとるくんへ』

その65、『ガラムマサラハウス』

その67、『鳥居は霊の通り道』

その68、『蛍光灯が教えてくれる』

その69、『掲示板文通』

その70、『踏んじゃ駄目だ』

その71、『十年めだか』

その72、『シャー芯の神』

その73、『だるまさんが転んだ』

その74、『キャサリンとマイク』

その75、『下駄箱プレゼント』

その76、『職員室のポルターガイスト』

その77、『校庭を走る地獄の番犬ケルベロス』


 それから番号順に、一つ一つの怪奇現象についての詳細な説明が書かれていた。


(ホントに七十七個あるんだ。透のヤツ、身体弱いくせに無理しやがって)

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