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「瞬間的な短編」集  作者: AK(r
9/13

9 TNKスペシャル「悪の結晶 ミール計画の真相」

 さて丑三つ時がやってまいりました。


 今回は内輪ネタでお送りいたします。


 没になった脚本、そこに隠された「ミール」の真実……。


 お楽しみに。

 挿入:映像1・走り込みシーン



ナレーション(以下ナレ):


 その建物の朝は早い。午前5時に全員が起床、走り込みが始まる。『適切な人間』であるための大事な時間だ。だらしない生活をするものなど、ここにはいない。そう、いずれ訪れるその瞬間へと、彼女らは必死に走り続ける。


 前世紀の汚濁、その根幹となった「ミール計画」の真相に迫る。




 タイトル表示「悪の結晶 ミール計画の真相」


 挿入:オープニング



ナレ:


 この年、全世界の人口は130憶に達した。急ぎそれらを養う必要があったが、地球の全資源を人間のみの生存に傾けてさえ、それは不可能だ。どうあっても100憶が限界、欲を言えばその半分。


 政府は、人口を減らす必要があった。



 挿入:映像2・滅亡宣言



ナレ:


 画期的な提案があったのはその半年後のこと。


 ある政治学者が、合法的に人間から人権を剝奪する方法を考え出したのだ。そしてある科学者も、人間を食糧化する研究を発表した。常ならば、時代が百年も早ければ発表もされなかったであろうこの成果は、残念ながら大歓迎された。


 「人権の存在しない人間を作り出すことができる!」


 このあまりにも大胆な宣言は、隣人にうんざりした彼らに、すんなりと受け入れられることとなる。亜硫酸塩トランスジミチウムという耳慣れない名前を耳にした人もいることだろう。これこそが、多数の人間の人権を剥奪し、世界の人口を三分の一にまで減らした「悪魔の薬」なのである。



 挿入:グラフ1・処理人数



ナレ:


 「人間であるためには、自分で何事をか成す能力を持っていなければならない」


 後世、意味を違えて金言とされるかの政治学者アーノルド・ワイヤーの言葉である。ワイヤーは自分で自分の摂取するものを判断し、自分で情報を取捨選択できる人間のみを人間として認める、と宣言する。それはすなわち、わずかでも流される人間には人権など必要ない、という魔の宣言だった。現在そのように解釈されることはないだろう。


 マス・コミュニケーションにおどらされ自分の摂取するものを選択できない人間は必要ではない。また危険なものを好奇心だけで口にする人間も、本能的に人間として不適格であるとされた。かの「悪魔の薬」はその役目にぴったりだったのだ。



 挿入:写真1・被害者群像



ナレ:


 マスコミがこの年にこぞって宣伝した薬剤「エミスF」。主成分は別だが、多量の亜硫酸塩トランスジミチウムが含まれていた。これは、人間の体を「食材として整える」という薬効があり、体内には明確に物質として残らない。男性が摂取すれば食べやすい女性になり、女性が摂取すると味が良くなる、とされている。フィクションに多く見られた「トランス・セクス」現象として大々的に報じられたものの、真相は別にあった。


 すなわち、人権を剥奪しても問題ない人間の多量出現である。医療機関を受診したもの、新たに服を買いに行ったものなどは即座に捕捉された。そして不自然な休暇を続けるものもかなりの速度で「狩られて」ゆき、ほとんどが残らなかった。


 残ったのは、意外にも隠され続けたものだったのである。



 挿入:映像3・車両による拉致



ナレ:


 これは実際にあった「連れ去り」の映像だ。ミール計画の的になり、食料として体を整えられたものは恐るべき頻度、精度で発見された。効果はまったくないながら、購入の記録の割り出しや尿検査による割り出しなども行われていたという。どのような手段によってか「ミール」は発見され、こうして拉致されることとなった。比較的和やかに見えるこの光景だが、こののちに待っているのは、地獄だ。



 挿入:写真2・工場

 挿入:写真3・工場2

 挿入:写真4・工場3

 挿入:写真5・工場4



ナレ:


 一見なんの変哲もない工場だ。だが、過剰に配備された監視カメラ、警備員を見ればその異様さは伝わる。秘密裏に設置された地下施設や増設された宿泊施設など、細かく挙げていけば違和感にはきりがない。なんとなく嫌な予感がする、不気味な雰囲気がする場所。そう、この工場こそが、計画のもっともおぞましい部分、厳重に秘匿されていた「精肉工場」なのだ。



 挿入:写真6・パック詰めの肉



ナレ:


 これは実際に発売された「肉」の見本である。専門家の分析によるとどうやら大腿部の筋肉らしい、とされている。消費者の感想によると「おいしい。どうして今まで食べなかったのか疑問」「初めて命に感謝した」「動物がどうして共食いを忌避しているのかよく分かった。こんなことを知ったらすぐ滅びるに決まっている」ということである。


 商品として出荷された部分はあらゆる部位におよび、病気の危険があるとして忌避された脳以外はほとんどの筋肉、内臓が出荷されたという。実際に記録されている表によると


「肌」(特に質の良いものに限る)

「腕・足等筋肉の多い部位」(疾患のないもの)

「胃」「小腸」(疾患のないもの)

「肝臓」(特に健康なものに限る)

「生殖器」(特に健康なものに限る)


 などが記載されている。また、生きるべき人間のうち内臓疾患を持つ人々には優先的に臓器移植が施され、結果的に病気に苦しむ人々は旧時代では考えられないほどに減少した。


 途中経過から考えると「ミール計画」は大成功していたのだ。



 挿入:写真7・痕跡



ナレ:


 順当にいけば人口削減に成功し、地球全体として立て直しに成功していたはずの計画、その成功の記録はここで突然途絶える。人口の三分の一が計画の犠牲となったアメリカで、支部工場がひとつ残らず破壊された。あまりに人道を無視したこの計画に反旗を翻すものがいたのだ。


 この写真はロシアにおけるミール計画の本拠地だった場所が、跡形もなく破壊された様子である。ありとあらゆる分析が施されたものの、外部の人間が侵入した痕跡や、爆破テロらしき証拠は発見されなかった。犯行声明を出した集団が言うとおりに、本当に「超能力」だったのだろうか。



 挿入:写真8・影



ナレ:


 中国の施設で撮影された唯一の「彼」の写真である。半分ほどは人間に見えるが、翼のようなものがあり腕が伸びて巨大化している、ようにも見える。




 彼と数人の協力者によって全世界のミール計画に携わる施設を破壊し、人間を殺害した。倫理を超えて人口を減らそうとした計画は一部で成功したものの、結局のところ人口の調整というディストピア的理想の実現には失敗してしまったのである。


 もしもディストピアが成り立っていたら、どうなっていたのか。それらの予想を完璧にすることはできないが、環境保全ははかどり、有用な人間を差別する風潮が出来上がっていたものと思われる。人間が人間を管理することはできるのだろうか? その管理に反逆するものはやはり現れるのだろうか?


 我々は、運命の岐路に立っているのかもしれない。



 ◇



 けっきょくおじゃんになったんで脚本送るわ。あのひと何だったと思う? 俺ときみ以外全員殺されたよね。マジの超能力者がこの世にいるってのは分かったんだけど、それ以上のことがわかんなかったよねえ。あの男「ゼット」って名乗ってたっけ?


 思い出の再確認がてらまた飲もうぜ。割り勘で。



 ◇



 イヤミかよ。

 全体的には「ミールの真実を追う」というのがラジオの主体らしいです。そのほかの話は、副次的に行っていた実験や、実際に起きた怪異ってところなんですかね。


 いや、遅くなって申し訳ありません。気分が乗らなかったもので……。

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