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「瞬間的な短編」集  作者: AK(r
6/13

6 高校生の日常?

 さて今宵も丑三つ時がやってまいりました。


 M県在住、匿名希望の方からのお便り。


 ある時ある日、ある薬。彼は一夜にして変貌を遂げた……!


 当時の貴重な資料です、お楽しみに。

 憧れの人が宣伝なんかやっているのを見て、そこまで落ち目なのかなと思ったのが始まりでした。


 コマーシャルに出演するような人ではなかったのです。というよりも嫌っていたみたいです。どうせお金をもらっているのだろうから、ちょっとでも助けになればいいと思いました。


 向かった先は薬局です。その人の「老若男女みんなが飲める! 健康増進、エミスF!」という宣伝文句は語呂が良いものでしたが、効果を説明していないところに種があるのかなと思いました。ピンク色の箱に入った小さなビン、これに入った液体をふたに一杯入れて飲むといいという説明書に添付された文書に少々の怪しみを感じながらも、ぼくはそれを飲み干しました。


 青汁がまずいからもう一杯くれ、という謎のコマーシャルがありますが、エミスFは大変おいしい薬でした。不思議なことにすぐに体中に巡るような温かい感じがして、ぼくは優しい気持ちになることができました。でもすぐに眠くなってきて、風邪薬よりもひどい眠気だ、なんて思いながらぼくはベッドに向かいました。心なしかいつもより布団は暖かく、よく眠ることができたのです。






 ぎゅっと抱きしめた布団が肌に心地よかったので抱きしめ直して、ぼくは目覚めました。ところが、ぼくは胸元をはだけてなどいなかったはずなので、いつの間に寝相が悪くなったのだろうと思いながらボタンをはめなおそうとしました。


 ボタンはしまりません。微妙な柔らかみを持った大きなものがぼくの手を妨げ、なおかつ背中までパジャマをぱんぱんに張らせているのです。いたずらでもされたか、と胸についている大きなそれを、ぼくは手ひどく平手打ちにしました。


 あんまりに痛かったので、しばらく声も出せずにのたうちまわりました。


 ええ、それは女性のものでした。ライトノベル風に言うならおっぱい、芸術的に言うならば乳房、隠語的に言うならOPです。ぽんぽんと叩くまでもなく分かったことですがぼくの小さな棒はなくなってしまっており、代わりのものがないまま下半身はトランクスに包まれておりました。脱いで鏡にうつしてもやはりありません。幽霊は鏡に映ると噂ですが、ぼくの下半身の棒は幽霊ですらなくなってしまったのです。


 それにしても大きすぎるだろうと思いました。そのときはそう思ったのですが、実際計測してみるとそこまで大きいわけでもなく、日本全体の平均ほど、学校で言っても大きめという程度でした。しかしぶら下がっているそれの存在感は恐ろしいほどに大きく、怖いものに思えました。




 母に言いますと、じゃあ服を買いに行きましょうと言われました。


 学校に連絡した母が言うには、同じ理由で休んでいる人が何人もいるのだそうです。世の中の男子がどんどん減っていく様を思い浮かべて恐ろしくなりましたが、未曽有の災害と最弱の主人公には例外がつきものです。休んでいる人は全体の三割ほどらしいと聞いて、ぼくは安心しました。


 昔は迷い込んだ瞬間に泣きだしてしまった婦人服売り場のマネキンは、やはり不気味でした。でもそれが着ている服は、何となくほしいなと思えます。つまり心まで女の子になったということでしょうか。何着も服を買って、ぼくらは家に帰りました。


 鏡の前で裸になったぼくは、まったく女性らしい体つきと呼ぶにふさわしいそれになっていました。少し脂肪が付きすぎているような気もしますが、そこはそれ、そもそも巨乳というものが余剰な脂肪を集めたものであるからでしょう。柔らかいところは柔らかく、固いところは固い、ちゃんとした体です。母に付き添ってもらいながら服を着て、ぼくは今日学校に行く意味もなくなってしまったような気がして、部屋で寝ていました。


 迷いました。


 ぼくはこれからどうしたらいいのでしょうか?


 男であることに悩む人を知っていました。体が男だから、心まで男に縛られているのではないかと、本来の心がどちらの性質を持っているかも知らずに盲目的に自分の体のみにしたがっていてもいいのかと、彼は言っていました。その彼は、悩みぬいた末に自殺してしまったのですが。


 女であることに恐怖した人を知っていました。女子同士のいじめに男を使って、初めて男が怖くなったのだそうです。自分があの中にいたらどうだろうなんて、行う前に考えるべきことでしょうに、彼女は想像もせずに同い年の少女を死体に変えるきっかけを作りました。手を下した彼らが口を割らなかったために彼女は裁かれなかったのです。


 ぼくはどうしたらいいのでしょう?


 男の目線を持ち続けられるでしょうか?


 心まで女になることができるのでしょうか?






 サイレンが聞こえました。


 見ると、窓の外に黒い車が止まっていました。車体の横に大きな黒い文字があります。


 M.E.A.L


 黒い服の、サングラスをかけた男の人たちが、車から出てきました。

 アニメのように12話完結でやろうかなと思っているのですが、ということはそろそろ解決のヒントくらい見えてこないとまずいかな……。


 次回「高校生、見学に行く」

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