表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
「瞬間的な短編」集  作者: AK(r
4/13

4 ミール

 さて今宵も丑三つ時がやってまいりました。


 T県在住のT様のお便り。


 いつもの風景に紛れる、非日常の気配……。


 私がクビになる前のお話です。お楽しみに。

 俺には特殊能力がある。


 おっと笑うには早いぜあんちゃん。


 たとえば俺の目の前にある料理には毒が入ってない。俺の料理の毒見役はいらないのさ。だって俺自身がそれを感覚的に知ることができるんだからな。ま、毒見役を雇えるような身分じゃないがね。


 それだけかって? それだけさ。しかしこれが意外と便利なんだ。


 暗殺者なんか警戒するわけじゃあないぜ? 俺の能力は絶対に秘密なんだ。たまに食いもので嫌そうな顔をするのは「化学物質に敏感だから」ってことにしてある。実際のところそれに近いが、ちょっと違う。


 化学物質の中でも、わずかでも毒性のあるものならすぐに分かる。その強さが強ければ強いほど、危ないものが入ってるってことだな。本物の毒なんぞ、まだ見たこともない。だが危ないものはすぐにでも分かるさ。


 気配のしないところってのは珍しいぜ。本当に気配が感じられなかったのは、なんだろうな、山の頂上で、風が途切れた瞬間かな。ありゃよかった。


 まあ現在の食卓の、いかに毒物の多いことか。


 健康オタクには説明しなくても分かってもらえると思うがね、食品添加物のほとんどは人体に有害なのさ。ところが酸味料やら甘味料やらと言ってごまかすだろう? あれが怖いんだよ。数種類混ぜて使わないと効果が出ないから、もちろん一個の表示に、五から二十の薬品が紛れていやがる。


 どこのレストランに行ってもこれだ。まったくやりきれんよ、高級レストランですら毒物の影から逃れることはできなくなってしまっている。どこから紛れこんだのかは分からないし、人間に混じっていたのかもしれない。時間がたてば危ないものもあるし今すぐにでも危険なものが紛れこんでいることも多い。


 空気にも毒物。水にも毒物。食べ物にも毒物。


 いやになるよ、まったく。






 さて、そういう俺も普通の会社員だ。能力者で組むなんてことができたなら権力のあるやつに取り入ってグループになるのも悪くないとは思ってるが、あいにく能力の気配ってやつは分からなくてね。


 ま、普通の会社員だよ。別にきもいおっさんじゃないから悪質なJKに引っかかったりもしないし、電車に乗っただけで騒がれるようなイケメンでもない。能力もののイラストを見てつくづく思うよ、フィクションはフィクションだって。


 いつも通りの風景さ、何にも変わらない。そう思ったんだ。


 ドアの前に女の子が三人。その近くにサラリーマン。んで男の子が一人。おばあさんがいて、痛いファッションのおばさんが一人。あ、男の子と女の子は高校生だろうな、背丈からして。


 まあ平和なんだよ。薬局で知らない気配を感じたくらいか。


 ところが会社の休日と学校の休日が重ならないからか、電車の中の人数の編成がちょっとばかり変わっててね。


 ドアの前に女の子が四人、近くにサラリーマン。おばあさんと痛いファッションのおばさん。男の子は、まあどこかに行ったんだろうと思ったのさ。


 ところがね、女の子のうち、新たに加わったらしい子から、ひどい毒物の気配がするんだ。かわいらしいとは思ったが、なんだか野暮な印象もあって、どういえばいいのかな。いなくなっても分からないんじゃないか、と思わせるような顔でねえ。仲良く話しているからいなくなったら心配されるだろうが、忘れられるに違いないね。


 しかし俺は、その気配が電車中からすることに気が付いた。どれもこれも女の体からだよ。不気味だった、なんて言葉じゃ表わせないね。敵陣に切り込んだことなんてないし、こんなに毒に囲まれた気配なんて知らない。


 誰も、自分の中に毒があることを知らないんだ。致命的な毒があるのに。致命的じゃない、もっともっと恐ろしい毒なんだよ。確かに死ぬ。だがその死に方は人間には許されないはずの死に方だ。


 な、毒物の気配がするってのが、そもそもおかしいのさ。


 俺は「食べ物に混じった」ものしか分からないんだよ。つまりは、ね。


 ……なるほど、いなくなってもいいような顔をしているわけだ。



 ◇



 ここからは私が書きますか。


 突然ドラッグストアに登場した「エミスF」って医薬品。その成分の中には、健康オタクならだれもが知らない成分が入っていました。


 亜硫酸塩トランスジミチウム。


 それこそが増えすぎた人口に対する決定的な打撃、そして福音。もちろんのことエミスFは人口に膾炙しましたし、大人気。そりゃまあ、面白いことになるわけですよ。私もそのころは人気だったので、宣伝に参加させていただきました。



 『老若男女みんなが飲める! 健康増進、エミスF!』



 なーんてね。亜硫酸塩トランスジミチウム自体はあまり効果を持ったものとして宣伝されたものじゃなかったんですが、そのうちに有効成分として偽の結果が上がり、有名になってしまった……。


 正直言って、このお話が届いたときははっとしましたよ。でも匿名なので、困りましたね。すぐにでも撤回させないととんでもないことになると思ったわけなんですが、うえの方は「心配しなくていい」なんて言いますから。


 政府も思い切ったことを考えたものだな、と思いましたよ。でも息子がそれを口にしようとするまで、私はその危うさに気付いていなかった。


 プロジェクト・ミール。


 生き残ったのは私だけでした。

 このパターン多いなー。何がとは言いませんが、私の作品の傾向ってこうなんですよね。潜在的腐男子なのか。


 そもそもTSが腐女子向けだったって知ってる人、どれくらいいますかね。


 次回「学校」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ