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「はい、これ飲んで。落ち着くから。」
そう言いながらルーカスさんはホットミルクを出してくれた。
ルーカスさん登場の後私は見知った顔を見て安心したせいか泣くまいと堪えていたのに思いっきり泣いてしまった。私が大泣きしたことで驚いて固まっていたルーカスさんが冷静になりここにいて誰かに見つかってはまずいと言いどこかの部屋に移動してきた。もちろん壁さんも一緒に。
「ルーカス、それでこいつは誰なんだ?」
ホットミルク最高!と思いながらソファに座っている私を指差して壁さんがルーカスさんに聞く。ルーカスさんは少し悩んだ後口を開いた。
「んー・・・彼女はシー。巫女姫だ。」
「そうか・・・。巫女姫か。・・・・・・・・・・・・・って巫女姫!?」
おお、ナイスノリツッコミ!壁さん怖い人かと思ってたけど案外そうでもないのかな?
「おい、ルーカスお前今巫女姫って言ったか?俺の聞き間違いか?」
「いや、巫女姫って確かに言ったぞ。」
「あの、俺の部屋のソファで体育座りして普通のホットミルクなのに馬鹿みたいに大切そうにアホ面で飲んでいるあの女が巫女姫なのか?」
「ああ、あの殿下の部屋のソファで体育座りをして何の変哲もないホットミルクを最高級の食事をしているかのように馬鹿みたいにアホ面で味わって飲んでいる彼女が巫女姫だよ。」
・・・・なんだろう。この2人いたってまじめな顔をして話しているから一瞬流しそうになったけどものすごーく失礼な事言われている気がする。いや、気がするじゃなくて思いっきり言われている。
なんて無礼な奴らなんだ!ここは1つ文句を言ってやらねば。
「ちょっと、ルーカスさんも壁さんも言わせておけばどんだけ勝手な事言ってるんですか!!」
私がそう言ってやったら2人とも「何言ってんの?こいつ」みたいな顔をしてこちらを見た。
え?そんな変な事言ったつもりはないんだけど・・・・・
いきなり話したから驚いてるのかな?
「シーちゃん、一応確認するけど壁さんって彼のこと?」
「あ、私壁さんって口に出してました・・・・・・・・?」
「うん思いっきり。それで彼のことなんだよね?」
心の中でのあだ名を口に出していたことに冷や汗をかきつつ頷くとルーカスさんがそれはもうこっちが引くくらい爆笑し始めた。
「アッハハハハハハハハ!!か、壁さんって・・・・最高だよシーちゃん!ハハハハハ!!!」
一人腹を抱えて爆笑するルーカスさんに唖然とする私。そして無表情なんだけど確実に人一人殺せそうな眼力でルーカスさんを睨む壁さん。
なんともシュールな空気が部屋に流れた。
「・・・・・・・・ルーカス、いい加減に笑い終えぬなら殺るぞ。」
このときの壁さんの声はまさに地を這うようなっていう表現がピッタリな感じだった。とりあえずめっちゃ怖い!その目と声だけで人殺せそう!!
「ご、ごめんごめん。ククッ。あ、あんまりにも面白くてさ。今までお前にそんなこと言う奴いなかっただろ?そう思ったら可笑しくなっちゃってさ・・・・・。」
ようやくルーカスさんの爆笑が収まったみたいだ。なんやかんやで3分は爆笑してたぞ。カップラーメン作れちゃうくらいは爆笑してたぞあいつ。
「あのぉ・・・ルーカスさん彼はどなたなんですか?」
「ん?ああこの方はエドモンド=マックリン=フェルバンティエ様。この国の王子殿下だ。」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・え?今なんていった?なんかすっごいサラッと大事なことを言った気がするぞ?王子殿下?え?ええ!?
「あのルーカスさん私の聞き間違いじゃなければ今王子殿下といいましたか?」
「ああ、言ったぞ。この方は王子殿下だぞ。」
「私の知識によれば王子殿下って王様の子供でとっても偉い人だと思うんですけど。」
「おう。シーちゃんが言ったとおり王子殿下は陛下の子供をさすよ。」
ふぅーと笑いながらため息をつく。そして大きく息を吸い込み叫んだ。
「嘘だろォォォォォォォォォォォォォォォォ!!!!!」
いやいやいや。ありえないだろう。何で王子殿下があんな所にいたんだよ。そしてなんで騎士の服装なんだよ。いやいやいやいやいやいやいや。まっさかー。そんな訳ないって。
「ルーカスさん、私を騙そうとしても無駄ですよ。さすがに騙されませんって。ありえないでしょう。そんなこと。」
「いや、騙そうとしてないからね。本当に彼が王子殿下だもん。ね?殿下♪」
語尾に音符をつけながら壁さんに話を振る。
「・・・・・・・・・ありえなくて悪かったな。俺がこの国の第2王子殿下、エドモンド=マックリン=フェルバンティエだ。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・まじでか」
ふ、不敬罪ってこの国存在してたっけ?この歳で前科ありは嫌だよぉぉぉぉぉぉぉ!!!