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「ハァ・・・・どうしてこうなったんだっけ?」
私は周りを見渡してため息をついた。
私が今いるのはお城の中の客室の一つ。豪華絢爛という言葉が似合うような贅沢でキラキラしているお部屋だ。さらにアホみたいに広い。バスルームとかも含めた面積だと多分私の通っていた高校の体育館の面積に匹敵する位だろう。とにかく無駄に広くて豪華なのだ。
そんな部屋に何故私がいるかというと話は8日前にさかのぼる。
「こちらが王都、オルインピアダでごさいます。」
にこやかにアレンさんが説明してくれている。レイさんたちが逃がしてくれるといった次の日の夕方私達は王都に到着した。王都は話に聞いていた通りとても美しい景観だった。町並みは地球でたとえるならイタリアの町並みみたいだった。まあ私イタリア行ったことないけどね。イメージだイメージ。
そして何より人が多かった。フェーンだったら町の人全員の名前覚えられたけどここでは絶対無理だろうなぁ。
「美しい景観でしょう。シー様。」
そうランスさんが笑いかけてきた。私の呼び方が様付けになっていたり敬語だったりするのは王都に入るちょっと前に皆から要請があったからだ。今までは旅路だったから大丈夫だったけどさすがに王都に入るとタメ語でちゃん付けは厳しいんだって。なので最初の頃の堅苦しい感じに戻っているが名前に様付けであるのはみんなの優しさな気がする。
「ええ。とっても美しいです。」
うん。めっちゃ綺麗。ヤバイ!!といいたい所を抑えて演技モードに入る。なんだろう、この演技に慣れてきた自分がいる。慣れって恐ろしい・・・。
「お城からはこの景色を一望することができますよ。さ、急かす様で大変申し訳ないのですが早速お城に向かいましょう。」
そう笑顔でアレンさんに言われたので私はもう少し見ていたいという名残惜しい気持ちを抑えて城に向かった。
そして着いたお城もすごかった。まずめっちゃくちゃ大きい。なんでも王都のどこにいても城は見える位大きいんだって。それってかなりすごいよね・・・。
そして見た目は某超有名テーマパークのお城を大きくさせた感じでものすごく綺麗だった。
内装も絨毯すら輝いていて踏むのがためらわれた。ま、普通に踏んだけどね。
そしてアレンさんたちに連れられるがまま進んでいくと大きな扉の前に着いた。アレンさんはその大きい扉を開けると私を中に促した。
「どうぞ中にお入りください。」
なんとなく入りたくなかったけどそういわれて断るのは巫女姫ではない。ありがとうといいながら中に入る。すると豪華絢爛な部屋だったって訳だ。
豪華すぎて絶句しているとアレンさんが
「こちらは本日より巫女姫様が過ごされるお部屋です。王からコンタクトがあるまではこちらの部屋でお過ごしください。」
と言った。そしてその後仕事があるから申し訳ないが失礼するといって出て行った。ちなみにアレンさんの部下さん達も一緒に出て行った。
残ったのはレイさんたち5人だ。
「あの、本当にこの部屋で過ごすんですか?キラキラしすぎてて目に悪そうなんですけど・・・。」
思わず5人に聞いてしまった。だって部屋のいたるところに宝石みたいなのがあるからさそれが光を反射してキッラキラなのよ。明らかに目に良くないでしょう!
「こんな豪華な部屋で喜ぶんじゃなくて目の心配って・・・。相変わらずシーちゃん面白いねー。」
「うるさいですルーカスさん。だって普通にこんな部屋与えられてももてあますだけですよ?」
「ま、確かにこんな広くてもねぇ。意味ないよな。でも多分ここで王から何かあるまで大人しくしてないと駄目っぽいね、アレン隊長の口ぶりから言って。とゆーことでシーちゃん申し訳ないけどしばらくここで大人しくしててね。」
彼らもそういって部屋を出て行った。
そうして8日経ったんだが・・・・・・
「どぉぉぉぉぉしてなんのコンタクトもないんじゃボォケェェェェ!!!つか軟禁生活になるなんて聞いてないっつーのぉぉぉぉぉぉ!!!!」
回想していて気分が高まったので心の思うままに叫んでみた。
王様遅すぎだろっ!何やってんの!?私退屈で死んでしまうよ?もう8日もこの部屋から一歩も外に出てないよ!
そう思い叫んでいたら部屋に鈴の音を転がしたようなかわいらしい声が響いた。
「シー様?何かございましたか?」
そう言いながらリーゼロッテが入ってくる。
「あ、リーゼ。ううん大丈夫。ちょっと気分が高まっただけだから。」
「そうですか。大丈夫ならよかったです。あ、そうそう先ほど新しい紅茶の茶葉が手に入りましてもし良かったら飲まれますか?」
「うん!飲む飲む。退屈でおかしくなりそうだったからありがたいわー。」
そういうとリーゼはお茶を用意し始めた。
皆様お気づきだとは思うが彼女リーゼロッテことリーゼはわたし付きの侍女だ。
最初はそんなもの付けてもらうような人間じゃないからと言って遠慮していたけどリーゼが「シー様が私を要らないというと私お仕事がなくなって路頭に迷ってしまいます。どうか私のためだと思って側にいさせてください。」と言うので働いてもらっている。
最初はいらないなんていったけど今はいてもらって本当にありがたい。話し相手がいるって本当に素敵だわ。
そんなことを考えながら私がお茶用のソファーに腰をかけて待っていたらいい香りと共にお茶用のテーブルに紅茶とお茶菓子が置かれた。今日のお茶菓子はマドレーヌっぽいのだった。非常においしそうである。
「わぁおいしそう!ありがとうねー。さ、リーゼも座って座って!おしゃべりしよう!!」
私がそういうとリーゼは向かいの席に座った。
本当は侍女が主とお茶を飲むなんてありえないらしいけど一人でお茶を飲むなんてつまらないので彼女を誘ったのだ。そしたら案の定即行断られた。でもめげずにしつこくしつこくお願いすると彼女が折れてくれた。そして約束を取り付けることに成功した。
「で、リーゼ昨日はどこまで話したっけ?」
「確か私が侍女仲間の面白い失敗について話したところまでですわ。本日もその続きで?」
「うーんそうだなぁ。今日は違うことにしようかなー。」
約束の内容は『お茶の時間だけは友達でいること』だ。このときだけは身分も気にせず友達になって欲しいとお願いしたのだ。このお願いをしたとき彼女はかなり困惑していたけど了承してくれた。そして私達ははれて友達(期間限定)になったのだ。
「違う話だと私の馬鹿すぎる幼馴染の目も向けられないような残念で死にたくなるような失敗談しかないですわ。あの失敗談は話しているほうも聞いているほうも死にたくなるほど惨めでかわいそうなのであんまりお勧めでないのだけど・・・」
リーゼとお友達になって分かったことだが彼女はかなり毒舌だ。かわいらしい容姿でかわいらしい声で恐ろしい事を言う。時たま出てくるこの幼馴染君に対しては通常の5割り増しで毒舌なので私は彼に心から同情している。
「うーんじゃあやっぱり昨日の続きで!そんな怖そうな話聞きたくないしねー。」
「分かったわ。では早速。あれは一昨日の事で・・・・・・。」
そういって彼女が話し始める。その話はやっぱり毒舌だけど面白く腹筋が痛くなるまで笑った。
でも笑いながらも頭ではこの軟禁生活はいつまで続くのだろうという考えが離れなかった。
某超有名テーマパークは歌って踊れるねずみさんがいらっしゃる所です。