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「え?に、逃げるですか?それはどういう意味で・・・」
いきなり言われた言葉に理解が追いつかない。逃げるってどこに?つーか何から?
訳が分かんなくて頭にいっぱいハテナマークを浮かべていたらレイさんが続きを話し始めた。
「逃げると言うのはここから逃亡すると言う意味だ。」
うん、レイさんそれ言い方変わっただけで同じ意味だから。全然わかんないから。ハテナマーク一個も消えないから。
「レイ隊長それじゃ意味わかんないっすよ。俺がかわりに説明します。」
ルーカスさんの意味わかんない発言に少し心に傷を負ったっぽいレイさんがかすかに頷いた。
それを確認してからルーカスさんが話し出す。
「えっとねシーちゃん、ここにいる4人と今外で見張りをしているギルバートはねシーちゃんをほぼ拉致状態で連れてきたことに罪悪感っていうのかな?まあそういったものをねを感じているんだ。王の勅命だったからといっても昨日まで普通に暮らしていたのに急に巫女姫とか言ってもね全然理解できなかったでしょ?」
その言葉にうんうんと私は深く頷く。はっきり言って巫女姫とか言われたときはこの人頭大丈夫かとか思ってたもん。
「うんそれが普通だよね。でも俺達はそれが分かっていたのに君が逃げれない状況を作って無理やり連れて来た。君の親しい人たちを人質みたいにして。まあ俺は実際町に着いたときは別に無理やりでもいいかなって思ってたんだけどね。」
ハハハと笑いながら話す。
いや最後のセリフ笑いながら言うことじゃないぞルーカスさん。何だよそれ。一気にいい話感が吹き飛んで行ったぞ、オイ。
「ちょっ睨まないでよ。思ってたのはその時だけだって。王都への旅が始まってさシーちゃんと話しているうちにさどんどんさっきも言ったように罪悪感が芽生えてきたんだよね。こんな小さないい子を拉致同然に連れ去ってあの王城に向かってるなんて自分は何をしているんだろうって。」
そういってルーカスさんは深くため息をついた。
あーあイケメンってどんな表情でもイケメンなんだね・・・。ルーカスさんとかを見てると切実にそう思う。だって今のルーカスさんめっちゃ色っぽいんですもの!ため息とかもうやばいです。世の中って不公平にできてるんだなぁ。
という現実逃避をしてみました。なぜ現実逃避をしたかというとルーカスさんが王城の前に『あの』なんて意味深なことばを付けたからだ。明らかに危ないフラグが立ってるじゃないか!
「えっとあの王城ってどういう意味で・・・?」
聞かないほうが幸せだって分かってても聞いてしまう、それが人間だ!
すると今度はレイさんが口を開く。
「・・・・・この世界は巫女姫様がいなくなってから50年くらいは皆より良い世界を作ろうと努力をしていたらしい。しかし時が経つにつれ、巫女姫様の力を知るものがどんどん減るにつれ、より良い世界作りは忘れられてしまった。おかげで100年後くらいにはすでに醜い世界に戻ってきてしまった。」
そういうレイさんの目はひどく悲しそうで何もいえなかった。
「特に今この国、フェルバンティエの王宮はひどい。聞いたことあるかもだが神殿と争っているのだ。そんなくだらないをしている場合ではないというのに・・・・。そんな権力争いのさなかにたまたま王宮とつながっている神官が神から予言を聞いた。そしてそれを知った王は貴方を探せとわれわれに命を下さいたのだ。」
「それでねシーちゃん、私達は貴方をそんなところに連れて行きたくないし巻き込みたくないのよ。貴方は巫女姫であった記憶が無いのでしょう?そんな貴方があんなところで耐えられるはずも無いわ。それほど醜いのよあそこは・・・。だから私達は貴方に逃げて欲しいの。申し訳ないけどもうフェーンにはすめないと思うけどそれ以外の平和な所で過ごして欲しいのよ。」
そのシェリーさんの言葉に3人も頷いていた。
「だから逃げてくれシーちゃん。俺たちでちゃんと手引きはする。なぁに俺とシェリーは騎士団に入っているわけでもないし派手に動いたって問題ないしな!」
私はそんなみんなの優しさに泣きそうになった。なんだ、フェーンの人以外にも私を思ってくれる人いっぱいいたんじゃん。
「皆さん私のためにありがとうございます。とってもとっっっっっっても嬉しいです。でも、逃げることはできません。」
少し震えた声ででも確かにそういうとみんなは戸惑った表情をした。
「シーちゃん!?なんでよ?もし私達のこと心配しているなら大丈夫よ。さっきランスも言ってたように主に動くのは私とランスだから問題ないし。だから逃げて、ね?」
必死に言ってくれるシェリーさんに再び涙腺が緩む。けどここで泣いてしまったらしっかり私は意見を言えなくなってしまうだろう。グッとこらえて私は言い募る。
「そんなはずないです。シェリーさんとランスさんが動くといっても2人にも罰は下るでしょう?ギルドのほうで。それにレイさんたち騎士団の方達も絶対罰せられると思います。そうですよね?」
そう強く言ったら全員目線を合わせてくれなくなった。・・・・・嘘下手だなこの人たち。
「私はこんなに私のことを考えてくれて優しくしてくれる皆さんを危険な目に合わせたくないです。それに拉致同然って思ってますけど私は自分の意思で来たから大丈夫ですよ。ちゃんと自分で決めたんです。なので後悔してません。それにこうやってレイさん、ルーカスさん、ランスさんにシェリーさんそしてギルバートさんに出会えたことはは王都に行く憂鬱感より絶対大きな収穫ですもん!今なら王都にいけてよかったって思えますもん。」
そうやって微笑んだら皆くしゃっと顔を歪めた後に笑ってくれた。
「・・・はぁ、もうしょーがないなシーちゃんは!せっかく逃がしてあげるって言ってるのに断るなんて。こっちは結構決死の思いだったんだぞ!」
「そうだな、まさか誘いを断られるなんて想像してなかったな。」
「ああ、まったくだ。本当にしょうがないなシーちゃん。」
「ええ、本当に。まったくもう我侭さんなんだからぁ。」
口々に文句を言い始めた皆さん。おい、さっきまでの労わりっぷりはどこに消えたんだ。
「ま、しょうがないから決死の思いで話を持ちかけたのに速攻断って俺達を困らせてくれるシーちゃんの我侭を大人な俺達は聞いてあげるとするか。」
「ルーカスさん・・・。ありがとうございます。」
「ん。その代わり絶対一人で無茶はしないこと。それといつでもここにいる人たちは頼っていいからな。むしろ頼れ。約束。これが守れないなら無理やり逃がす。」
「了解です!神に誓って破りません。皆さん本当にありがとうございます。」
そういって私は再び微笑を浮かべた。