序章2
私の「ここはどこ」発言でアネットさん達3人は我に返ったようだった。
固まり状態からの復活である。そこまではいいんだけどその後の行動が問題だった。なんとまあ我に返ったドミニクさんがナイフらしきものを懐から出したんだよね。
あはは・・・やっぱり普通に懐に刃物入ってる時点で日本じゃないよなぁ銃刀法違反してるくらい刃渡り長いし。
私がこんなくだらないことを考えている間にドミニクさんは私のすぐそばまで来ていて刃先を私の首元に向けていました。なんてすばやい行動。
「手、挙げろ。余計なことはするなよ?血は見たくないからな」
もちろんソッコー挙げますよ手。だって怖いからね刃物。平凡な女子高生は刃物向けられたら言いなりになっちゃいますよ。つか物騒なセリフだなオイ。
そんなこと現実逃避じみたことを考えている私をよそにドミニクさんはおとなしく手を挙げた私を縛ろうと棚から縄を取り出していました。
しかも結構太めの縄です。紐とは間違っても呼べないくらい太い。縛られたら絶対痛いです。M気質の人以外は絶対無理ですアレ。ちなみに私はどちらかといえばSです。うん要らない情報ですね。そう、これも現実逃避です。
ってまた変なこと考えている間に目の前に縄がっ!つか私ってさっきから変なことしか考えてないな!!しょうがないかこの状況が変だもんね!!!
あーでもやっぱり嫌だよこんなの。大人しくしてたほうが良いだろうけどやっぱ嫌だ。私悪いことしてないのに何で縛られなきゃいけない訳さ!そんな趣味は無いんだよ!!
・・・あ、泣けてきた。急に泣けてきたよ私。さっきまで落ち着いてたのにね。グスッ。感情の起伏が激しいんだよね女子高生は。うー人前で泣くなんて屈辱。我慢せねば・・・グスッ。
って泣いても無視かよ!この男は!!か弱い?女が泣いてるのにシカトだよシカト。なんて冷徹なんだ。この悪魔、人でなし、鬼畜ヤローがあああああ!!!
逃げたい。けどもう遅い。縄は私の手首に巻きつけられている。
そして縄が縛られる瞬間
「やめなドミニク。今すぐナイフを置いて縄もしまいなさい」
凛とした声が響いた。
そのときの私は涙で視界が潤んでいたしドミニクさんを内心ののしる事と逃げる方法を考えることに必死だったので一瞬誰が言ったのかわからなかった。というよりここにいる誰かが私をかばうなんて思ってなかったので空耳かと思ってしまったのだ。
「でも母さん!結界を張ってるのに中に入ってくるなんてありえないだろ!?そんな怪しいやつを捕らえないなんて」
しかし目の前の男が反論しているから空耳ではない様子。まじか。かばってくれる人がいたのか。この声からして1人いた女の人だな。
「いいからしまいなさい。そんな小さな女の子泣かせて・・・。いい年した大人が何やってるの。」
女の人が言う。ああ、なんていい人なんだろう。でも小さな女の子って私一応17歳だけど。まだ小さいのか?
「泣いてるのも油断させる作戦かもだろ!?それに見た目も魔法で変えてるのかもだし!」
鬼畜男(いま命名)も言い返す。確かにごもっともですけどそんなことはありません。
「うるさいよ!もう20年近く食堂やってきた私をなめんじゃないよ!悪いやつかどうか見極める目ぐらい持ってるわ!!それとも母さんを信じられないの!?」
とうとう女の人が叫ぶと鬼畜男が黙り込んだ。どうやら女の人の勝利のようである。
言い終えた女の人は私のそばにやってきて微笑みながら言った。
「悪かったね、怖い思いさせて。もう大丈夫だから安心なさい」
私はさっきまで恥ずかしいとか考えていたくせにその言葉と微笑みに思いっきり泣いてしまった。