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とある町の宿で一人、少女がベッドの前に立ち尽くし感激で悶えていた。その顔は喜びにあふれていて下手したら泣きそうである。
「ああ、ベッドよ・・・。アレだけ夢見ていたベッドが目の前にあるなんて。感激だわ。奇跡だわ。」
感激で悶えていた少女、シーは幸運に浸っていた。
あーもうキャンプって楽しめるのは2日までだよねー。それ以降はベッドの素晴らしさの方がキャンプの楽しさより勝るわやっぱり。そしてその素晴らしきベッドが目の前にある現状。素敵だわ。もう本当素敵。しかもこの宿町で一番いい宿みたいだしラッキー!
ギルバートさんと初めて喋った日の翌日(といっても結局朝日が昇ってから分かれたけど)いつもどおり馬車を走らせて途中止まってお昼ごはんを食べてから5刻は経っただろうかという頃に町に着いた。日はもう傾き始めていてだいぶ肌寒くなっていた。
町はルーカスさんの言っていた通り少し寂れているというか廃れていた。観光客は少なそうだしお店も静かで不気味な雰囲気で賑わってるとはいえない感じだった。
フェーン以外の町は初めて来たのでちょっと期待していただけに残念だった。
でもアレンさん達がこの町で一番いい宿をとってくれたみたいなのでぶっちゃけ町がどうなってようと関係ない。宿が綺麗ならそれでいいのだ。ベッドがあって屋根があればそれでいいのだ。
ちなみに宿の部屋は私が一人部屋(しかも一番いい部屋)、レイさん、ギルバートさん、ルーカスさんが1部屋、あとの騎士達も2部屋を6人で使っているみたいだった。これは夕ご飯のときに確認しました。ちなみに夕食は久々に料理を食べたなーって感じで感動しました。まあアネットさんの料理には劣るけどね。
そういや私レイさん、ルーカスさん、ギルバートさん、アレンさんとニコラスさんしか名前覚えてなかったな。だってみんな漢字じゃなくて横文字なんだもん!覚えにくいんだもん!まあ実際前の3人さえ覚えておけばいいかなーなんて考えてますけどねー。私の脳はそんなに記憶できないから必要最低限しか覚えないのさ!
・・・こういう言い方だと3人以外が必要ないように聞こえるかもだがそこはノーコメントで。
ってこんなこと考えている暇があったら早くベッドに寝転ぼう。
バフンッと勢いよく音を立ててベッドに飛び乗る。
むふふ、フッカフカやん!めっさごっさフッカフカーーーー!やっぱベッド最高!寝袋は長期間は駄目だわー。
しばらくゴロゴロして文明のありがたさに浸った後にこれからどうするかを考える。ちなみに時刻は19刻。規則正しい生活をしている人はもう寝ているくらいだ。
まあ考えられる選択肢は
1,このまま宿でゆっくりして体を休める
2,騎士達と交流を深める
3,町に繰り出す
ぐらいですかね?
うーむ1はそんなに疲れてないからなー。
2は移動中でもできるから却下。時間がもったいないもんね。
じゃあ3しかないかね?でも町に行くなら騎士と一緒は嫌だよな。というか町に下りるなら魔物から剥いだ皮とか売るつもりだから駄目だ。
でも騎士達が笑顔で1人で送り出してくれるはずも無い。絶対護衛(という名の見張り)つけるよなー。撒くこともできるけどそうしたらそうしたで後がめんどくさそう。
ふー・・・・・。じゃあ残された道は一つしかないよね。まあしょがない。一つしかないんだもん。私悪くないもん。しょうがないもん。
20刻ちょうど。
私は心の中で「しょうがない」を連発しながら部屋にカモフラージュの結界を張り麻袋に今までゲットした素材をつめてこっそりと窓から抜け出した。
その姿に気づくものは誰もいなかった。