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消し跡のあるページと、夕暮れ時の重なる影

作者: 中百舌鳥 愛音
掲載日:2026/02/28

蛍光灯が低く唸っている。


放課後の教室は

まだ体温を残している。


机の上、

開きっぱなしのノート。


隣の文字をなぞった跡が

わずかに濃い。


筆圧の違いだけが

他人の証拠だ。


ページの端に

消しゴムの粉が溜まっている。


払わない。


払えば、

何かが終わる気がする。


正解の形は

いつも均一で、

角ばっている。


そこに自分の線を重ねると、

わずかに震える。


震えた部分だけが

後から消される。


白い擦過傷。


穴に近い。


廊下の窓が

夕方を引き延ばしている。


空の色は曖昧で、

名前をつけるには足りない。


机の中に

折れた芯がいくつもある。


書こうとして

止まった痕跡。


少し離れた席。


磨かれた筆箱。

角の揃った教科書。

折り目のないプリント。


外側は整っている。


ページをめくる指が

一瞬止まる。


消し跡の多いノートの前で。


そこだけ、

均一ではない。


削られた紙の繊維が

光を乱反射する。


一枚、

ページが破られる。


乾いた音。


教室は

わずかに広がる。


破られた部分に

風が入る。


整った机の上から

額縁がひとつ消える。


代わりに、

空白が置かれる。


外に出る。


夕方はすでに

夜の準備をしている。


街灯はまだ点かない。


破られたページは

丸められず、

そのまま持たれている。


指先に

消し跡の白。


並んで歩く。


触れない。


影だけが

重なりかけて、

すぐ離れる。


空は何も言わない。


それでいい。


紙の繊維が

まだ指に残っている。


消された線は、

完全には消えていない。






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