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9.果ての開拓_後


『船首』



ザブン ユラ~



情報屋「…確かに羅針盤が示す方角と太陽が沈む方角の辻褄が合わない」


商人「ゆっくり変化しているから誰も気付かないんだよ」


情報屋「これだともう現在地も分からないわね」


商人「それより魔女はずっと荷室に籠りっぱなし?」


情報屋「そうよ?何かの術を掛けるから近付くなって…」


商人「そうか…剣士は明日行ってしまうと言うのに」


情報屋「商人?あなたはどうするの?」


商人「僕はこの船に残る…まだ君と話足りない」


情報屋「あら?歴史の事でも?」


商人「まぁね…でも剣士をこのまま行かせて良いのかどうか…」


情報屋「魔女との事ね?」


商人「関係にヒビが入ったまま距離を置くのはどうかと…」


情報屋「魔女はこの間までずっと剣士の自慢ばかりだったのよ?」


商人「だったらなお更だ」


情報屋「魔女は剣士の事を認めて居るわ…すでに自分を超えているって言ってたもの…剣士を縛る呪縛を解いただけよ」


商人「う~ん不器用というか何というか…」


情報屋「今までの子弟関係が消えて無くなる訳でも無いのだから気にしなくて良いと思うわ」


商人「剣士は少し落ち込んで居たよ…それっきり話をしていないよね」


情報屋「商人?あなた心配性になったのね?年を取ったせいかしら?」


商人「ハハそうかもしれない…年かぁ…久しぶりにバーベキュー食べたいな」


情報屋「今日買って来た材料があるわ?やりましょうか」




『甲板』



ジュゥゥ モクモク



商人「肉が食べられると思ったら海鮮ばっかりか…」モグモグ


情報屋「肉は中々手に入らないの…貴重だから少しだけ」


商人「剣士も食べなよ」


剣士「僕は少しで良いよ…」


商人「なんだ…食べてるの僕だけか」モグモグ


女戦士「私も少し頂く」ハムハム


アサシン「この船はなかなか食料が減らん」グビ プハァ


剣士「あ…そうだアサシンさん」


アサシン「んん?」


剣士「線虫!」ニョロリ


アサシン「なんだこの虫は?」


剣士「毒を食らう虫さ…その虫が体に居ると腐敗が止まるみたい」


アサシン「ほう?エリクサーが不要になると?」


剣士「エルフゾンビさんで実証済みだよ…喉の渇きは変わらないみたいだけど」


アサシン「奴に会ったのか…元気にしているか?」


剣士「精霊樹の森をエルフ達と一緒に守って居るよ…大変そうだった」


アサシン「クックック奴がエルフの仲間入りとはな」


剣士「今頃僕が呼んだ虫達がドリアードを食い漁ってる筈…エルフゾンビさんも少しはラクになる」


商人「10年前の夜に見たダイダラボッチ?みたいな事になってるのかい?」


剣士「その筈だよ」


アサシン「そうか…あの虫の大群がもう一度動いて居るのか」


情報屋「そういえば巨大なゴーレムも虫にやられていたわ」


剣士「酸を吐く虫のお陰さ…何でも腐食させるんだよ」


アサシン「これでやっと平和が来る…私は死に場所を探す必要がありそうだ」


商人「それはまだ早い…昨日聞いた話だとセントラルの貴族の一人…公爵という人物がフィン・イッシュに密偵を送って居るんだ」


アサシン「ほう?知った顔だ」


商人「どうもキナ臭い…物流の相場も不自然に操作されている」


アサシン「私は俗世を離れていたせいかそういう話に興味が湧かなくなってしまった」


商人「まぁこれから情報は集めれば良いさ」


アサシン「もうそういう話は聞き飽きた…静かにしておいてくれ」グビ



---------------


---------------


---------------




『夢』



僕「ママ?今日はここで休むの?」


ママ「暗くなって目標物が見えなくなった…探索は明日やる」


僕「ふぁ~あ」ムニャ


ママ「おいで…あんた寒いんでしょ?」


僕「僕は大丈夫だよ」


ママ「良いからおいで…」グイ


僕「ママ暑苦しいんだよ」モゾモゾ


ママ「こうしてるとママが温かいの」ギュゥ


僕「僕達ずーっとかくれんぼだね」


ママ「ごめんね…今度街に連れて行ってあげるから」


僕「本当?友達いっぱい居るかなぁ…」


ママ「早く寝なさい?」


僕「うん…ママの匂い」


ママ「ん?匂う?」クンクン


僕「いい匂い…」スゥ


ママ「フフ…」ギュゥ


僕「すぅ…すぅ…」zzz





『居室』



ギシギシ ユラ~



剣士「ハッ!!」キョロ


剣士「ビッグママ?」キョロ


剣士「居ない…」




流氷に当たったか…


船体に傷が付いて居ないか調べて来る


まぁ見た所大きな氷山では無い…無事だろう


流氷は左方に流れて行ってる様だが?進路変えるか?」


うむ…流氷に沿って進めば又当たるリスクも減る


しかし狭間に入れんでは先が長いな


仕方あるまい…



剣士「…」---流氷を見つけたか---


剣士「…」---もう一回同じ夢見れるかな---


剣士「…」---寝よ---


剣士「すぅ」zzz





『翌朝』



ザブン ユラ~



商人「ふぁ~あ」ゴシゴシ


剣士「商人さん…この地図は貰って行くよ」


商人「あれ?剣士君…もう行くのかい?」


剣士「早く行かないと僕も迷っちゃう…それにこの船は居心地良すぎる」



タッタッタ



女戦士「居ないと思ったら…もう行くのか?」


剣士「ビッグママ…じゃなくて女戦士…僕は変えたい未来があるんだ…だから行く」


女戦士「そうか…これを持って行け」ポイ


剣士「貝殻…」


女戦士「これでいつでも会話出来る…もう無くすな?」


剣士「大事にするよ」


女戦士「フフ行って来い…そして必ず戻って来い」


剣士「大丈夫…事が済んだらフィン・イッシュに行く…約束さ」


女戦士「…」ノシ



フワリ バサバサ



商人「あぁぁ…あっという間に居なくなる」


女戦士「フフ妹の子だ…こうなるのは分かって居た」


商人「そういえばそうだなぁ…そっくりだなぁ」


女戦士「さて商人…大事な地図を持って行かれた…もう一度描け」


商人「う…そうだった」


女戦士「地図無しで航海は出来ん…特に外海側の地形を優先して書け」


商人「分かった書き直す…」



----------------


----------------


----------------




『飛空艇』



シュゴーーーー バサバサ



剣士「…まいったな完全に現在地見失ってる…そろそろ陸地が見えても良い筈なのに」


剣士「夜の内に進行方向変わっちゃってるのかなぁ…」ブツブツ


剣士「太陽はアテにしても良いのか?…大分高度高くなってきてるけど」


剣士「なんで反対から登るんだ?意味がわかんない…まてまて僕が反対なんだ…あああ!!見えた陸地だ」


剣士「よしよしよし…これで現在地分かる」



---------------



剣士「木が見える…ここは北の大陸だ…えーとえーと断崖がある所」


剣士「港町だ…120°も進行方向ズレてた…まぁ良いや兎に角現在地が分かった…」



えーと偏西風が吹いてる


これに乗って岩塩地帯を抜けた先は未踏の地…


その先の海を越えるとオークの領地の筈


そうさ偏西風に乗って行けばこのままオークの領地まで飛べる


遠いけど2日飛べば向こうの大陸だ


その後は目視で行けば良いか…火山の噴煙が目印だな



---------------


---------------


---------------




『ハテノ村』



ザザザーー ビシャビシャ



盗賊「こりゃ雨が止む気配が全く無ぇな…」


僧侶「太陽が出ないと麦を育てても品質が悪いでしゅ」


盗賊「今日は木を植え無ぇのか?」


僧侶「もう植えて来たですよ…魔力が無くてフラフラなのです」フラ


盗賊「魔法使いはどうした?」


僧侶「同じく教会で横になって居ましゅ」


盗賊「まぁお天道様が出無ぇと皆元気出ないわな」


僧侶「ところで余ってるどんぐりは村の外に出しっぱなしで良いのですか?」


盗賊「オークがうろついてんだろ?村を襲われない為の供物だ…どうせ死ぬほど余ってる」



スタスタ



影武者「盗賊さん…僕は託児所を任された覚えは無いんだけどどういう事かな?」


盗賊「おぉ影武者の姉ちゃんか…どうだ?キ・カイとは違った環境は?」


影武者「僕は取引所を任されたつもりだったんだけど…」


盗賊「ちっと我慢だな…この雨で建築が滞ってる訳よ」


影武者「参ったな…完全に左遷されたようだ」


盗賊「まぁそう言うな…顔出すのは慣れたか?」


影武者「フードを被っても子供達に脱がされるんだ…困って居る」


盗賊「この村じゃ顔を隠す必要なんか無ぇぜ?豪族も居ないしな?ぬはは」


影武者「ふぅ…どうしたもんか」


盗賊「一応説明しておくがよ…」



ハテノ村はドワーフ領で王様が海賊王の爺


ほんで村長は赤毛の魔法使い


主な産物は硫黄と石炭…ほんで鉄鉱石か


お前はこの村の物流コントロールが主な仕事


俺はそれを運ぶ役



影武者「取引相手は海賊王という事か…」


盗賊「まぁそういう所だ…欲しい物を聞き出して来いよ」


僧侶「盗賊さん忘れてるです…私は酒場の女将でし!」


盗賊「おぉ!そうだったな」



ほんでな?ハンターっていう狩人が村を獣から守ってる


足りないのは村を自衛する民兵が居無ぇ



影武者「民兵を募集すれば良いんだね?心当たりがあるよ」


盗賊「この村にか?ヌハハそんな奴居無ぇぞ?」


影武者「連れて来たギャング達さ…武器さえ調達出来れば取引できる」


盗賊「ほう?面白い…武器は海賊王の爺が作れる」


影武者「よし!必要な数量を纏めよう…依頼の対価は…」


盗賊「対価なんて要ら無ぇ…爺に相談したら何でもやってくれる」


影武者「そうか…それなら利用しよう…つまり」ブツブツ


盗賊「変な姉ちゃんだな…商人にそっくりというか…」



武器が入手できるという事は次に必要なのは防具…


防具に欠かせないのが皮と布


皮は獣からまかなえるとして布を生産するには亜麻が必要だ


代替として羊毛だけど生産量が限られる


確かに物資が不足しているな



影武者「よしこうしよう…僧侶さん」


僧侶「はいな?」


影武者「明日から麦では無く亜麻を育てて貰えないかい?亜麻からは油が採取できるのと布を作る事が出来るんだ」


僧侶「種が無いでし」


影武者「少しなら持って居る…増やして貰いたい」


僧侶「分かったです」



---------------


---------------


---------------



『ハテノ村_古代遺跡外』



エッサホイサ エッサホイサ



海賊王「よっしゃ屋根はこれくらいでえーやろ」


女オーク「これで濡れないで済むわ」


海賊王「おまんはよー働くのぅ」


女オーク「フフこの場所は何に使う予定なの?」


海賊王「鍛冶場や…ここで鉄を溶かしてツルハシ作らにゃイカン…おまんもやって見るか?」


女オーク「自信が無いから見ておくわ」


海賊王「まぁええわ…ちっと見とれ」チッチッ シュボ



これがドワーフが使うフォージっちゅうもんや


石炭燃やしてここで鉄を溶かす


解けた鉄を小分けしてやな…この型に入れるんや


固まって来たら硬くなる前に打って慣らす



カーン カンカン カーン カンカン



-------------


-------------


-------------



『1時間後』



海賊王「出来立てホヤホヤのツルハシとスコップや…これを鉱山まで運んでもらえんか?」


女オーク「はい…」ガッサー


海賊王「ちょちょ…一気に持って行かんでもえーんやで?そんなん重いやろ」


女オーク「持てる分だけ持って行くから…」ノソノソ


海賊王「がははは豪快な娘や…さすが剣士を奴隷にするだけある訳や」


女オーク「ウフフ…」ノソノソ



スタスタ



影武者「失礼します…」


海賊王「おぉ!おまんも剣士の仲間かいな?」


影武者「はぁ…仲間と言えば仲間だよ」


海賊王「まぁゆっくりして行き」


影武者「はい…実はお願いが有って来たんだ」


海賊王「なんや言うてみぃ」


影武者「武器を少し作って貰えないかと…」


海賊王「そんなかしこまらんでもえーぞ?どないな武器が欲しいんや?」


影武者「一般的な剣とか槍で良いよ」


海賊王「ううむ…誰が使うんや?おまんか?」


影武者「いえ…子供達で自警団を…」


海賊王「子供に武器持たせるちゅうんか…チャンバラで使いよったら死によるで?」


影武者「子供と言っても僕と同じくらいの体格で…」


海賊王「ふ~む小さい子供を守りたいちゅう訳か…ほなしゃーないなぁ」ノソリ


影武者「ふぅ良かった…」


海賊王「小さい子供に武器持たせたらアカンで?事故が起きるよって」


影武者「分かったよ…後僕は村で取引所をやる事になったんだ…何か調達して欲しい物があったら言って欲しい」


海賊王「そやなぁ…宴会用の酒が欲しいなぁ」


影武者「酒…」


海賊王「酒を持ってきたら高く買い取るで?頼むわ」


影武者「分かったよ…なんとかするさ」



麦は十分あった筈


酵母はキノコから採取できる


よし…確か僧侶さんは酒場の女将という建前


麦酒は生産に時間が掛からないから作って貰おう




『教会』



ワイワイ キャッキャ


粉にした麦芽を低温のお湯でゆっくり温める


色が変わって来たら火力を上げて沸騰する前に釜から出す


このまま自然に冷やして常温になったらキノコから採取した酵母を加えて混ぜる


この手順でどんどん作って



盗賊「お前等何やってんだ?」


僧侶「影武者さんにお酒の作り方教えて貰ってるです」


盗賊「おぉ?こりゃエール酒か?」


影武者「ホップが無いけど一応エール酒だよ」


盗賊「おおおおお!!ちっと味見して良いか?」


影武者「まだ発酵して居ないよ」


盗賊「良いんだ…ちっとだけだ」ペロ


影武者「どう?」


盗賊「なるほどホップが無いからちっと寂しいな」


影武者「何か良いアイデア知らないかな?」


盗賊「こりゃ後でフルーツ加えると化ける…そうだなこの辺にゃフルーツなんか無ぇな」


僧侶「芋ならあるでし!!火山灰の土で出来た芋は甘いのです」


盗賊「お?そういやナシみたいな味がするな…そうだ芋を擦って最後に加えて見ろ」


影武者「分かったよ…」


盗賊「こりゃ明日が楽しみだな」


僧侶「盗賊さん私の酒場を作ってくれませんか?」


盗賊「おっし!!やる気が出て来た…今から木材加工するぞ…おい魔法使い!いつまでも寝て無いで手伝え!!」


魔法使い「えええ!?私が?」


盗賊「お前何もやって無いだろ…ちっと体動かせ」グイ


魔法使い「ちょっと引っ張らないで!!」


盗賊「俺が木材切り出すからお前が組み立てろ」


魔法使い「外雨降ってるじゃない…濡れるの嫌よ」


盗賊「うるせぇ!来い」グイ




『廃屋』



トンテンカン ギコギコ



魔法使い「ねぇ寒いんだけど…木材のきれっぱし燃やすわよ?」


盗賊「おう!俺も体冷えまくりだ…」ギコギコ


魔法使い「暗くなって来たからもう明日にしたら?」


盗賊「その木材燃やしゃ明かりになる…おっしカウンター一丁上がり!!」


魔法使い「なんか殺風景な酒場ね」


盗賊「お前岩塩のランプ持ってたよな?テーブルに置いとけ」


魔法使い「え?本当にここで酒場やるつもり?」


盗賊「俺ぁ酒場の有る所に戻って来るんだ…言い換えれば俺の家だ」


魔法使い「なんか必死ね」


盗賊「うるせぇ!飾りつけはお前等に任せるから酒場だけはなんとかヤレ」


魔法使い「ちょっと僧侶も呼んで来る」


盗賊「お前逃げんなよ?あーそうそう酒樽をこっちに運んできてくれ」


魔法使い「中身の入った樽なんか持ち上げられません」


盗賊「僧侶と一緒にやりゃ運べる!!さっさと行け!!」


魔法使い「…」



トンテンカン ギコギコ


------------


------------


------------



『翌朝』



チュンチュン



盗賊「んがががが…すぴーーー」zzz


魔法使い「呆れた…夜通し酒場を作って居たんだ」


僧侶「スゴイです!!テーブルも椅子も作ってあるです」キョロ


魔法使い「どうするのこの爺…」


僧侶「そのまま寝かせておきましょう」



ドスドスドス ブモモー



ハンター「ただいま…もう一匹ヘラジカ捕まえて来たよ」


魔法使い「おかえり!!心配してたのよ」


ハンター「川が増水してて渡れなかったんだ…やっと戻ってこれたよ」


僧侶「今日は雨が上がって良かったでし」


ハンター「まだ空があやしいけどね…それよりヘラジカが腹を空かせてるんだ」


僧侶「どんぐりが余ってるです…木の皮も食べるですよね?」


ハンター「早く食べさせないと…」


僧侶「こっちですぅぅ」スタタ




『教会』



ワイワイ キャッキャ



ハンター「ふぅぅ…お腹膨れた」ゲフー


魔法使い「ヘラジカが増えて木材の運搬が楽になるわね」


ハンター「もう野生のヘラジカはかなり遠くまで行かないと居ない…2頭でなんとかするしか無いかな」


魔法使い「他の動物は?」


ハンター「ヤクが居るけど餌代を考えるとあんまり沢山居てもなと思ってね」


魔法使い「家畜はブタが4頭でまだまだ足りないわ」


ハンター「う~んまだまだ捕まえて来なきゃ安定しないかぁ…」


魔法使い「鳥がもう少し居ればね…」


ハンター「野鳥は家畜に出来ないからねぇ…鶏なんか北の大陸に行かないと居ないし」


魔法使い「やっぱりシカが一番良さそうね」


ハンター「うん…夜行性だから狩りが夜になるのがさ…」



トンテンカン トンテンカン



ハンター「んん?何か始まった?」



今の内やぁ!!一気に壊れた建屋を直すでぇぇ!!


エッサホイサ エッサホイサ



魔法使い「あ!!お願いしてた建築が始まったみたい…」


ハンター「そうか…僕はちょっと寝るよ…ずっと寝て無かったんだ」


魔法使い「ベッドあるけど使う?」


ハンター「うん…ありがとう」ノソリ




『畑』



サワサワ



僧侶「成長魔法!成長魔法!成長魔法!」サワサワ サワサワ


魔法使い「私もうダメかも…」フラフラ


僧侶「今日も魔力スッカラカンですぅ」ヘロヘロ


魔法使い「収穫しなきゃ…」ヨロ


僧侶「少し休むでし…収穫はいつでも良いです」


魔法使い「そうね…後で盗賊にお願いしよ」




『川』



ジャブジャブ



海賊王「この水車は脱穀の機械仕掛けや…ここに麦を入れて脱穀するんや」


影武者「これで脱穀の人員が省ける…」


海賊王「そやな?子供達にも出来るで教えてやればええ」


影武者「今上流から運んでいる物は?」


海賊王「大釜や…おまんら亜麻を育てておるやろ?あの大釜で水に浸すんや…布にするまで色々加工せにゃならん」


影武者「それは助かる」


海賊王「それも子供達に教えてやればええ…武器を持たせるよりずっと大事な事や」


影武者「そうそう武器の方はどうなったのかな?」


海賊王「鍛冶場に置きっぱなしや…持って行って構わんで?」


影武者「ありがとう…そうだ!お礼にお酒を用意したんだ」


海賊王「ほんまか?昨日の今日やで?」


影武者「良かったら今晩村の酒場で振舞おうかと…」


海賊王「おおお!!そらええな?」


影武者「食事も出来るだけ用意するので皆さんでお越し下さい」


海賊王「祭りやな?ようし!!わいらも食い物持参するで?」


影武者「ハハ忙しくなりそうだな…」


海賊王「ようし!おまんら!!今日は祭りや!!残りの仕事を早よう終わらせるでぇぇぇ!!」


者共「ほいさーーー!!」




『教会』



ワイワイ ガヤガヤ


はい…移民の方々2組から


廃屋を修理した建屋を使って下さい


大工さん一家はこちらの家を


農夫さん一家はあちらの家で…


孤児たちは教会で寝泊まりします



盗賊「ほう?一応村長の役はこなしてんだな…やるじゃ無ぇか」


僧侶「盗賊さん起きてきたですね?私の家も決まったでし!!」


盗賊「んぁ?酒場か?」


僧侶「酒場の裏の家なのです…影武者さんと一緒に住むことになったです」


影武者「昼間は取引所…夜は酒場という住みわけだよ」


盗賊「なるほど…酒飲み相手に取引しようってのか…まぁ良い案だ」


影武者「僕は左遷されたつもりだったけど…なんか楽しくなって来た」


盗賊「そら良かったな?」


影武者「やる事が沢山あってね…解決するのにやっぱり物流なのさ…僕に合ってる」


盗賊「そーかいそーかい…俺は早く酒が飲みてぇ」


影武者「そうだ昨日作ったエール酒は樽で4つ分しか無い…足りるかな?」


盗賊「大丈夫じゃ無ぇか?酒飲める大人はそんなに多く無ぇぞ?」


僧侶「私明日の分も作って来るです」


盗賊「そりゃ良い…良い酒になったら俺がキ・カイで売って来てやるぜ?」


僧侶「楽しみですぅぅ…早く作ってくるでし!!」スタタ


盗賊「じゃぁちっと俺も夜まで働くか!!」


影武者「あ!!盗賊さん…今晩は酒場に海賊王を招待しているんだ」


盗賊「ほう?」


影武者「食事の振る舞いでバーベキューを考えてる…お願い出来るかな?」


盗賊「干し肉にしようとしてたシカ肉が有るが…よっし!一丁狩りに行くか」


影武者「お願いするよ…その他の食事は子供達で何とかする」


盗賊「こりゃ酒場がいよいよ楽しみだ…女は魔法使いと僧侶…ほんでお前だな?」


影武者「僕は勘定に入れないで欲しい」


盗賊「よーし!!ハンター起きろ」ドカッ


ハンター「うぐ…ぅぅん…何?何事?」


盗賊「今から狩り行くぞ…2時間で戻る」


ハンター「ええ!?どういう話になってる?」


盗賊「今晩の食い物だ…お前の張った罠見回りに行く…案内しろ」


ハンター「今?直ぐに?」


盗賊「そうだ!晩飯に間に合わせる…行くぞ」グイ


ハンター「あ…ちょちょ」




『夜_酒場』



ワイワイ ガヤガヤ


わいがこの国の王…海賊王や!!


ええか?この村はわいの領地や


せやから何も心配せんでええで?


兎に角新しいハテノ村の祝いや…みんな飲めぇ!!



ジュゥゥゥ モクモク



ハンター「イノシシの肉焼けてる…持って行って!」


魔法使い「忙しい忙しい…」ドタバタ



-------------



盗賊「ふぅぅぅやっと酒にありつける…カウンターに座るぜ?」


僧侶「盗賊さんお疲れでし!!」


盗賊「例の酒くれ!!早く飲みてぇ」


僧侶「分かってるでしゅ…どうぞ!!」ドン


盗賊「おぉ…冷えてそうだな?こりゃ魔法使いに何かやらせたな?」


僧侶「氷で冷やしてあるです…飲んでくだしゃい」


盗賊「むぐっむぐっ…ぷはぁ」


僧侶「どうですか?」


盗賊「アルコールは控えめだがスッキリ飲める…こりゃ何杯でも行けそうだ」


海賊王「どぶろく持って来たで?これも飲めや?」


盗賊「おぉぉ海賊王の爺さん…ご機嫌そうだな?」


海賊王「子供達が作った酒がなかなか美味いもんでな…今日は気分がええで?」


盗賊「俺もちと驚いてんだ…昨日の今日でこの酒作るってのは大したもんだヌハハ」


海賊王「ワイの手下どもも喜こんどるわガハハハハ」


盗賊「しかしこの村もやっと軌道に乗り始めた…このまま上手く行けば良い」


海賊王「この村はなんちゅーか夢がある…そういう村は登って行くもんや」


盗賊「やっぱ酒場があると活気が違うな」グビグビ


海賊王「そやな?美味い酒が飲めるなら手下どもは毎日ここに来るで?」


僧侶「私も飲みたいです…」


盗賊「おぉ飲め飲め…今日は飲んでも良いんじゃ無ぇか?影武者のおごりだろ?」


僧侶「そうですよね?私も飲むでし!!」グビグビ


海賊王「おぉええ飲みっぷりや…気に入ったで?」



ガハハハハハ


------------


------------



『翌日』



ヨッコラ ドスン



盗賊「よし…これ以上はもう積め無ぇな」


影武者「これが買い取り品目のメモだよ…出来るだけ早く戻って欲しい」


盗賊「へいへい…酒樽は全部俺が飲んじまうが良いな?」


影武者「全部は飲めないでしょ…残りは一応売りに出して反響を見て欲しい」



ええと石炭と木材は高めで売却


硫黄は競売で相場見極め


買い取りが布と香料…ほんで種を各種か



盗賊「あとは移民を乗せて来りゃ良い訳な?」


影武者「移民は2家族までだよ…工夫だと稼ぎが良い」


盗賊「分かった…まぁ任せろ…助手にガキ一人連れて行くが良いな?」


影武者「好きにすると良いさ」


盗賊「よし!乗れ小僧!飛行船の動かし方教えてやる」


少年「…」ジロリ


盗賊「武器の使い方も教えてやるから付いて来い」


少年「フン!」スタスタ


盗賊「じゃぁ行って来るわ…」ノシ



フワフワ


---------


---------


---------




『数日後』



コーン コーン メリメリ ドスーン



女オーク「ふぅ…」


僧侶「女オークさん木を切り倒すの早いでしゅねぇ…」


女オーク「切り株を掘るから離れておいて?」


僧侶「はいな!」


女オーク「ふん!!」



ドコーン ドコーン メリメリ ガッサー



女オーク「ふぅふぅ…この作業が大変…」ズルズル


魔法使い「私が土を埋め直しておくわ」ザック ザック


女オーク「この切り株でテーブルが作れるから大事な資材ね」ヨッコラ


僧侶「あれ?空に何か飛んでるでし…」


魔法使い「え?」


僧侶「あれ剣士さんの気球かもです」


女オーク「ハッ!」


魔法使い「…」チラリ


僧侶「大きな鳥ですかね?通り過ぎて行ったです…」


女オーク「…」ヨッコラ ヨッコラ


魔法使い「その切り株は荷車に乗せて置いて?後で運ぶから」


女オーク「うん…」ドスン


僧侶「切り倒した木は川に投げると下まで流れて行くです」


女オーク「分かったわ…」グイ ザブーン


僧侶「下で木を引き上げに行くでし!!」スタタ


魔法使い「私は荷車引いていくから先に行ってて」


女オーク「うん…」ドスドス




『村の川辺』



ジャブジャブ



女オーク「ふん!!」ザバァ


僧侶「私が枝を落としておくので女オークさんは休んで良いです」ギコギコ


女オーク「大丈夫よ?」ブンブン スパスパ


僧侶「あ!!!さっきの大きな鳥!!やっぱり剣士さんの気球!」


女オーク「え!?」キョロ


僧侶「村の方に降りそう…」


女オーク「私行って来る!」ドスドス


僧侶「私もいくです…」スタタ



-------------



『村の外れ』



フワリ ドッスン



剣士「ふぅぅぅ…やっと着いた…随分迷った」


女オーク「剣士?…剣士?…」ドスドス


剣士「良かった…女オーク無事だったね?」ダダ


女オーク「え?無事って…私はここで普通に…」


剣士「良いんだ…無事なら良い」


僧侶「剣士さ~~ん!お帰りなさぁぁい!!」スタタ


剣士「偏西風の向きがおかしくて中々辿り着けなかったんだ…やっとたどり着いて安心したよ」


僧侶「??どゆこと?」


剣士「まぁ色々あった訳さ…皆居るかな?」


僧侶「盗賊さんがキ・カイに行ったです」


剣士「少し休みたいかな…体が冷え冷えだよ」


女オーク「上の方に温泉があるわ?」


剣士「そうだったね…入りたい」


女オーク「連れていってあげる…背中に乗って?」


剣士「いやいいよ自分で歩くさ」


僧侶「皆に報告してくるです」


剣士「うん…僕は温泉に浸かってちょっと休む」


僧侶「はいなー」スタタ


女オーク「こっちよ?」グイ




『古代遺跡に続く道』



サラサラ サラサラ



剣士「ちょっと見ない間に随分整備されたね」


女オーク「剣士のお爺さんのお陰よ?」


剣士「ハハ爺いじは村作るのとか大好きなんだよ…そのうち城作り出すよ」


女オーク「もう遺跡の周りは要塞になって居るわ?」


剣士「ほらね?次は使いもしない大砲さ…散々そういう話聞かされたんだ」


女オーク「そうだったんだ…フフ」



ガタゴト ガタゴト



魔法使い「あ…剣士…帰ってたのね…」


剣士「今帰った所だよ…整地かい?なんか大変そうだね」


魔法使い「お爺さんに会いに行くの?」


剣士「ちょっと体が冷え冷えでね…疲れてるし少し休みたいんだ」


魔法使い「じゃぁ温泉に行くんだ…」


女オーク「私が案内しているの」


魔法使い「そう…」チラリ


剣士「少し休んだら教会の方に挨拶に行くよ…後回しにしてゴメンね」


魔法使い「いえ…ゆっくり休んで…」


女オーク「剣士?こっちよ?」


剣士「うん…」ヨロヨロ


魔法使い「…」


魔法使い「……」


魔法使い「………」シュン



ガタゴト ガタゴト




『温泉』



モクモク



女オーク「この辺りが丁度良いお湯になっているわ」


剣士「ありがとう…」チャプ


女オーク「私はお爺さんに剣士が帰って来たと伝えて来る」


剣士「ちょっと待って!!爺いじが来ると休めない…僕が起きた後にして」


女オーク「フフそうね」


剣士「それより女オーク?体に調子悪い所は無い?」


女オーク「え?どうして?何もおかしい所なんか無いわ?」


剣士「そうか…それなら良いんだ」


女オーク「どうしたの?」


剣士「何でも無いよ…兎に角安心した」


女オーク「変な剣士…私は木材加工の続きをして来るからゆっくり休んで?」


剣士「うん…寝る」ウトウト



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『古代遺跡』



メラメラ パチ



うーむ…なんで直らんのや?他の羅針盤も一斉に壊れるちゅうんはおかしいな


親方…日の出の方角も大分北よりなんでがす


船に硫黄運ばせとる気球は帰って来んが羅針盤おかしゅうて迷っとるんかいな?


この周辺は不思議な事が起こるんかも分からんでがす



剣士「ふぁ~あ…」パチ


海賊王「おぉ剣士!温泉で寝取ったらアカンで?茹でダコになる」


剣士「んん?う~ん…良く寝た」ノビー


海賊王「大分疲れとった様やな?」


剣士「あぁぁ…一人で飛空艇操作してたから何日もずっと寝て無かったんだよ」


海賊王「腹減っとらんか?」


剣士「大丈夫…それより爺いじ…今世界が大変な事になってる」


海賊王「今空がおかしいちゅう話をしとった所や」


剣士「地球の地軸が移動して太陽が昇る方向も星の位置も…羅針盤が北を差す方向も何もかも狂ってる」


海賊王「う~む意味が分からんのやがゆっくり話せ」


剣士「結論から言うともう海は航海出来ない…空を飛んでも迷う…今まで使ってた地図に意味が無くなった」


海賊王「世界大移動かいな?」


剣士「そんな感じだよ…詳しくはこうさ…」



カクカク シカジカ


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海賊王「そらえらいこっちゃ無いか!!わいはドワーフの国へ戻らなアカン…」


剣士「航海出来ないよ…間違い無く遭難する」


海賊王「今の話からすると外海に出れば良いんやろ?」


剣士「ええとドワーフの国は島が沢山だったね…島を目標に渡ればもしかすると行けるのかも」


海賊王「ハテノ村にいつまでもゆっくりはしとれんな…ちぃと考えるわ」


剣士「今移動するのは良くないと思うよ…行けると思っても本当に迷う」


海賊王「状況が安定するまで待ちかいな…ちゅうか気球が帰って来ん事にはわいも動けんな」


剣士「僕はちょっと星を観測してどれだけズレがあるのか計算してみる」


海賊王「そやな?そやそやおまんの地図も写させてくれ」


剣士「後で持って来るよ」




『酒場』



ワイワイ



女将「いらっしゃいませ~でし!」


剣士「ハハ…これは本格的だね」


女将「剣士さん!!飲んで行くですか?」


剣士「一杯貰おうかな…」


女将「魔法使いさん!!影武者さん!!剣士さんが来たです」



ドタドタ



魔法使い「剣士!今日はもう来ないかと思ってた」


剣士「少し休んだら調子良くなったよ…なんか良い酒場になったね」


魔法使い「酒場と言っても村の皆の食事処よ」


剣士「一杯欲しいな…どんぐりも欲しい」


女将「はいなー!!自家製のハテノ酒でし!!」ドン


剣士「ハテノ酒か…どんな味なんだろう?」ゴクリ


魔法使い「どう?錬金術で作った炭酸を混ぜてみたの」


剣士「おいしい!!コレ売れるよ…すごく飲みやすい」ゴクゴク プハー


影武者「いくらなら出せるかな?」


剣士「大き目のグラスで銀貨1枚」


影武者「フフ十分元が取れそう…1日樽4杯作れるとして金貨4枚分…材料費引いて金貨3枚の儲け」


魔法使い「ポーション作るより効率良さそう」


剣士「なんか楽しそうだ…もう一杯頂戴」


女将「はいなー!!」ドン


剣士「さて…酒場に来たからには…何か面白い話無い?」


女将「あるですよ…」



村の外にどんぐりを置いておくとですね…


いつの間にか薬草に変わってるですよ


多分オークがどんぐりの代わりに置いてくれてるです


そこでオークが他に何が欲しいのか調査したいのです



剣士「ハハそんなの簡単さキノコと松ぼっくりだよ…木の根も良いね」


影武者「ふむ…僕達に不要な物をトレード出来るのか…明日試してみよう」


女将「楽しみが増えるですね」


魔法使い「ところで剣士?今度はいつまでこの村に?」


剣士「しばらく滞在しようと思ってる」


魔法使い「どのくらい?」


剣士「そうだなぁ…1ヶ月?2ヶ月?…ちょっと色々調べなきゃいけない事が有ってね」


影武者「あ…それなら剣士さんに依頼したい事が…」


剣士「ん?僕に出来る事なら…」


影武者「細工が得意だったよね?防具が少し欲しいんだ」


剣士「おけおけ…確か樹皮が一杯積んでたね…それで作れるよ」


魔法使い「しばらく滞在するなら開いている家を使っても良いわ?」


剣士「あーこの村の主役はやっぱり君達だよ…僕は上の遺跡で良いさ」


魔法使い「そう…ずっと住んで居てくれても良いのに」


剣士「僕の家は名もなき島という所にもうあるんだ…この村では居候さ」


女将「寂しい事言わないでくだしゃい」


剣士「しばらくは滞在するからよろしくお願いするよ」グビ




『翌日』



ブーン ブンブン



剣士「蜜蜂!ここで巣を作れ!」ブーン


魔法使い「何をしているの?」


剣士「虫を集めてるんだ…そうそう今日はまだ木を育てて居ないね?」


魔法使い「え?うん…まだ」


剣士「今日から辺りに花を育てて欲しいんだ…種は持ってる」


魔法使い「花?ハチミツの為?」


剣士「それもあるんだけど…実はね…この村に足りないのは虫なんだよ」


魔法使い「虫…居ない方が良いと思うんだけど」


剣士「虫が多いと鳥が来るんだ…水生動物も虫を餌にする…その水生動物を餌に色んな動物が集まるんだ」


魔法使い「そういう事ね…虫は暮らしを豊かにしてくれているのね」


剣士「害虫も居るけどそれは退治すれば済む…虫は命を運んで来るんだよ」



そう…命を運ぶのは虫なんだ


僕は大事な事を忘れていた


虫を使ってドリアードを倒す事ばかり考えてた


虫を育てて命を運ばせないといけない



剣士「土の中に居るワームは殺しちゃいけないよ?火山灰を食べて栄養のある土に変えてくれてる」


魔法使い「分かったわ」


剣士「クモは縄張りを守ってる…同時にハテノ村も守る…虫ってすごいでしょ?」


魔法使い「本当は興味無いけどあいづちだけ打っとく」ウンウン


剣士「アハハはっきり言うね…まぁ良いさ…花を育てるのお願いね」




『製材所』



ゴリゴリ シュッシュ



剣士「みんな見ててね?樹皮は茹でて柔らかくした後に油を含ませてしごいてなめすんだ」ゴシゴシ


剣士「なめした樹皮をこうやって編んで行けば籠の材料になる」アミアミ


剣士「厚手の質の良い奴は防具の素材に残しておく」


剣士「やわらかい内に形を整えて縫い合わせれば防具の出来上がり…真似してやってごらん」


子供達「すごーい…」


剣士「自由にデザインして良いよ…後で僕が直してあげる」


影武者「あっという間に防具が出来るんだね」


剣士「ちゃんとした装備にするには内側に細工が必要なんだ…それは僕がやる」


影武者「皮の防具という感じかな?」


剣士「うん…工夫次第で上等な防具になるんだよ…軽いから僕は好き」


影武者「樹皮はヘラジカの餌にと思って居たけど…こうして見ると使い道が広い」


剣士「餌にするには勿体ない…加工して余った部分を餌にすれば良いかな」


影武者「籠はいくつあっても良い」


剣士「そうだね…ベッドにもなるし宝箱にだってなる…最後は燃料としても使える」


影武者「勉強になったよ」


剣士「それは良かった」



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剣士「次は亜麻の加工だよ」


剣士「亜麻を布にするまで加工するのは難しいからロープと麻袋までにしよう」


剣士「水に漬けて乾燥させた亜麻をしごいて繊維だけ取り出す」


剣士「これを寄ってロープにする…繋ぎ合わせは順に継ぎ足して寄って行く」ヨリヨリ


剣士「繊維だけ編み込んだ物で麻袋になるけどこれは時間が掛かるから暇なときに…」



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影武者「布を作るには織機が必要だね」


剣士「うん…作っても良いけど細工に手間が掛る…布は買った方が早い」


影武者「亜麻を沢山育て過ぎたかな」


剣士「えとね…鍛冶場で大量の鉄鉱石の残りくずが出てると思うんだ…骨粉と亜麻のくずを混ぜて建材に加工できるよ」


影武者「モルタルだね?」


剣士「ちょっと違うけどそんな感じ…レンガみたいな石になる」


影武者「建材で木材の消費が抑えられるか…大工に相談してみるよ」


剣士「木は切り倒すのが勿体ない…切るのは最低限が良いかな」




『古代遺跡』



メラメラ パチ



剣士「爺いじ?地図持って来たよ…」パサ


海賊王「待っとったわい…見せてみぃ」


剣士「その地図は海士島が南極になった想定の地図だよ」


海賊王「見慣れんで気持ち悪いなぁ?」


剣士「うん…でもね?この地図もアテにならない…僕が空を飛んだ感覚だともう少し斜め向いてる筈」


海賊王「どのくらいや?」


剣士「う~ん20°くらいかなぁ…目印になるのは南極星だけなんだ」


海賊王「季節も分からんのやな?」


剣士「うん…しばらく星の観測続けないといけない」


海賊王「ここは山があるで観測もやり難いなぁ?」


剣士「そうだね…今から南極星の角度測定する道具を作ろうと思う」


海賊王「わいは機械仕掛けの良い時計を持っとるで?使うか?」


剣士「おお!!それがあると時間ごとに星の角度測れる…貸して」


海賊王「体感やとだんだん温くなっておる様に感じるが?」


剣士「そうなんだ?」


海賊王「まぁ天気もあるしよー分からんな」


剣士「ねぇ女オークは何処行ったか知らない?」


海賊王「硫黄鉱山行っとる思うわ…よー働く娘や」


剣士「ちょっと心配なんだ」


海賊王「なんでや?体は丈夫そうやで?」


剣士「話はややこしいんだけど…急に死ぬ可能性があるんだ」


海賊王「そらあかんな…おまんの事やからなにか理由があるんやな?」


剣士「うん…」


海賊王「分かったわ…ちっと戻る様に言うてくるわ」ノソリ


剣士「ありがとう」



---違う未来を歩んでいる筈なのに---


---不安が消えない---




『夜_遺跡の外』



カチャカチャ ギリリ



剣士「…一時間に15°か…一日の長さは変わって居なさそうだ」


女オーク「メモしておく?」


剣士「それは良いや…南極星が変わってるのは書いておいて」


女オーク「南極星が変わるというのはどういう意味が?」


剣士「地球の傾きが変わってるという事さ」


女オーク「傾き?理解できない…」


剣士「駒の軸がクルクル動くでしょ?回転の軸が動いちゃってるんだよ」


女オーク「どんな影響があるのか想像出来ない…」


剣士「僕も良く分からない…天候が安定しないのはそのせいかもね」


女オーク「この観測を朝まで続けるつもり?」


剣士「日の出前まで仮眠しようかな…大事なのは日の出と日の入りなんだよ」


女オーク「ここで休むのね…」


剣士「そうだよ…毛皮も用意したし君が居れば暖かい」


女オーク「ウフフ寝泊まり出来る場所があるのに野宿ね」


剣士「石炭は一杯あるし暖は取れる…まぁ馬車で寝泊まりするより快適さ」


女オーク「剣士は先に寝ても良いわ」


剣士「うん…日の出の観測逃さない様にもう寝るよ」



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『夢』



ヴヴヴヴ ドサリ ピチャ



僕「動いたらダメだよ…方陣の中から出ないで」


君「ガァァァ…」ズルズル


僕「今楽にしてあげるから…もう少し抱っこさせて」グイ


君「ヴヴヴヴ…」ピクピク


僕「君の魂は今何処にあるかな?浄化が済んだら僕に掴まってね…」


君「グルルルル…」ノソ


僕「ダメだって方陣から出たら…」ゴソゴソ



グイ ギュゥゥゥ



僕「なんでかなぁ?涙が出ない…ただ心が寂しい」


君「ヴヴヴヴ…」ズルズル


僕「行くよ?しっかり掴まって…浄化魔法!」シュワーーー


君「アガ…」サラサラサラ


僕「おいで!僕の所へ…」


灰「…」サラサラサラ


僕「…」ポロ


僕「……」ポロポロ


剣士「楽になったかい?君は何処に行ったんだい?」


灰「…」サラサラサラ



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『早朝』



剣士「ハッ!!…」


女オーク「起きた?もう直ぐ日の出よ?ほら空が暁色に…」


剣士「夢か…嫌な夢だ…」


女オーク「怖い夢でも見たの?」


剣士「何でもないよ…君は痛い所無いね?」スリスリ


女オーク「どうしたの?くすぐったいわ?」ハテ


剣士「ゴメン寝ぼけてるんだ」


女オーク「観測はしなくて良いの?」


剣士「あぁそうだ星座を確認しないと…えーと…へび座と一緒に登るのか」パラパラ


女オーク「何か分かる?」


剣士「南半球だから多分もうすぐ春になる」


女オーク「暖かくなるのね?それは良かった」


剣士「よし!これで大体の緯度が推定できる…」メモメモ


女オーク「月が全然違う方向に沈んでいたわ」


剣士「ええええ!?どっちの方向?」


女オーク「この地図で言うとこっちの方角ね」


剣士「南南西…そうか月の公転まで変わってるのか…道理で迷う訳だ」


女オーク「私も役に立ったみたいね」ニコ


剣士「明日から月の観測もしないといけない…でも何でそんな事が起こる?」



地球は自転をしているからほぼ太陽と同じ様に動く筈…


まてよ月が縦周りに変化していたとして南南西に沈むという事は南南東から登る…


南極星方面に位置した場合ずっと沈まないという事もある訳か



剣士「そうだ夜は月の方角を見て空を飛んだ事もある…だから迷う」


女オーク「はい地図とペン…私は文字が書けないから剣士が書いて」


剣士「あぁありがとう…女オーク!太陽の方角を観測して」


女オーク「うん…」


剣士「機器の使い方は分かるね?」


女オーク「見て居たから大丈夫よ」カチャカチャ ギリギリ




『数日後_会議』



分かった事


南極星は一日3°づつ移動している


地軸の移動が始まったのは多分15~20日前でもう50°くらい回転した


今の緯度は南半球のこの位置…このまま行くとどんどん暖かくなる


地軸の傾きは今29°で多分駒の様にクルクル動いてる…周期はまだ分かって居ない


月の公転は明らかに変化…どの様に変わったのかは長期間の観測が必要



剣士「これが新しく作った地図…今までと上下が反対になって東西の方向も変わったよ」


魔法使い「信じられない…この間までの冷たい長雨もこれが影響して?」


剣士「それしか考えられないよ…南極点が近くを通ったんだと思う」


僧侶「オークの領地のずっと南が未踏の地だったですが…」


剣士「そこにあった極点が今はキ・カイ付近な筈」


魔法使い「これから予測される影響とかは無いの?」


剣士「う~ん僕の知識じゃあんまり確かな事言えないんだけど…内海は全く航海出来なくなる」


影武者「キ・カイは商船での貿易で成り立ってるんだけど…」


剣士「完全ストップだね…でも近海での漁業はまだ残るかもしれない」


僧侶「いつまでその地軸の移動が続くですか?」


剣士「これも確かな話じゃないけど4000年前にあった地軸の移動は90°回転して止まったらしいよ」


海賊王「わいは船でドワーフの国へ帰らにゃあかんのやが…」


剣士「遠回りになるけどこの大陸沿いに航海すればなんとか行けると思うな」


海賊王「次来るときは外海側のオーク領から来た方が良さそうやな」


剣士「うん…外海の海図を作って行くしか無いね」


海賊王「ハテノ村の開拓が半ばで悪いが気球が戻って来たでわいは一旦戻るわ…豪族と争っとる場合やないわ」



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剣士「爺いじ!僕が直した地図持って行く?」


海賊王「済まんな?この地図に海流と風向き加えてまた持ってくるわ」


剣士「うん…気を付けて」


海賊王「兵隊と鉱夫は残して行くけぇ仲良うやってくれや」


剣士「爺いじはこれからどうするの?」


海賊王「そら王様の仕事や…領地を守らなアカンでな…影響を見ていろいろやるやろ」


剣士「…という事はハテノ村も守るんだね?」


海賊王「当たり前や…直ぐに連絡の気球が来るで待っとれ」


剣士「良かった」


海賊王「そやそや…わいがやろうと思っとったんやが川沿いに道を整備したかったんや」


剣士「何か作るつもりだった?」


海賊王「川を下る船で物資の移送や…気球より大量に運べるでな」


剣士「なるほどね…下流に村を構えるんだね?」


海賊王「まぁ待っとり?直にようさん人を送るで…わいも折角見つけた硫黄鉱山を手放したく無いんよ」


剣士「ハハそうだよね大砲が無いと海で戦えないからね」


海賊王「ほな急いどるで行くわ…女オークと仲良うやれや」ノシ




…こうしてハテノ村の開拓は順調に進みだした



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『古都キ・カイ_酒場』



ガヤガヤ ガヤガヤ


外は死ぬほど寒みぃ…あぁぁきついウォッカくれ!!


流氷が邪魔で商船が出られないのさ…まぁしばらくここで飲んだくれだよ


お酒が高騰してて少しお高いですがよろしいですか?


ガハハハ酒なら俺の船に大量に積んでるんだ



盗賊「よう!遅くなった…金は用意してあるか?」


ローグ「盗賊さん…こんな目立つ所で待ち合わせは無いっすよ…」


盗賊「フード被ってるなんざお前らしく無ぇじゃ無ぇか」


ローグ「あっしはちっと豪族に顔が知れてるもんで動きにくいんすよ」


盗賊「そうか悪りぃ悪りぃ…ほんで金は準備出来たな?」


ローグ「耳を揃えてここに…」ドスン ジャラ


盗賊「ほぉぉ…手ぶらだと思ってたがちゃんと用意出来たな」


ローグ「あっしが持ってた魔石がえらく高く売れたんでやんす」


盗賊「まぁ俺の方も貴重な木材を身内に売れて良かったわ…んで?何に使うのよ?」


ローグ「盗賊さんと同じ大型の貨物用気球が値落ちしてたんで買ったでやんす」


盗賊「そら良い!帆を張って俺と同じにするってんだな?」


ローグ「そーっすね…あっしだけキ・カイに留守番はイヤなんすよ」


盗賊「はは~ん…ハテノ村の往復便をやろうって訳か…よっし!俺が手伝ってやる」


ローグ「そう言って貰えると嬉しいっす」


盗賊「丁度布の買取もやってて帆を張る分くらい工面出来るぞ?」


ローグ「明日あっしの気球まで案内しやす」


盗賊「ところで話が有るって言ってたな?気球の件だったか?」


ローグ「いやいやちっと盗賊さんの耳に入れておきたい話が有ったんすよ…ここじゃ何なんで個室行きやしょうか」


盗賊「おう…人に聞かれたく無い話しな訳か」


ローグ「一番奥の右手の部屋っす…酒も持って行くんで先に行ってて下せぇ」




『酒場_個室』



ガチャリ バタン



ローグ「瓶ごとに成っちまいやすがキ・カイじゃ珍しいワインっす」


盗賊「おぉぉ済まんな…」キュポン グビ


ローグ「ほんで聞いて欲しい話なんすが…セントラル貴族の公爵という人物を知って居やすか?」


盗賊「会った事は無ぇが何度か俺にコンタクト取って来たな?」


ローグ「先に結論を言っちまいやすが…多分黒の同胞の生き残りなんすよ」


盗賊「なぬ!?10年前に全滅して居なかったのか…」


ローグ「あっしは豪族の立場を利用して色々調べたんすが…どうもセントラル第3皇子の戦死からずっと関わってる重要人物っす」


盗賊「20年ぐらい前か…100日の闇事件だな…」


ローグ「そもそも20年前の魔王復活はセントラル第3皇子の戦死から始まって居やす」



当時の黒の同胞達の狙いは復活した魔王を魔石に封じ


ドリアードの中にあるアダムを復活させる事でやんした


その実現に10年近く掛かっているんすが結果的に成功してる訳でやんす


一見それで平和になった様に見えやすが


その実子供が生まれない事や黒死病の蔓延で人口がどんどん減っている訳なんす


これに気付いた未来君がこの間アダムを破壊した…大きな流れはこんな感じっす



盗賊「俺の認識もまぁ大体そんな感じで有ってるんだが…公爵がどう関わってるんだ?」



公爵はですね…表の舞台にはほとんど関わらないんすが


兎に角仕込みが上手いというか裏で手を引いて上手く物事を誘導するんすよ


昔からセントラル貴族では穏健派の時の王派閥と強硬派のその他貴族で分かれていたんすが


公爵は穏健派で常に時の王の陰に隠れた存在だったんす


上手く時の王を誘導してこの20年の動乱を導いてる…それがたぶん公爵なんす



盗賊「狙いが良く分からんのだが…」



あっしが公爵に疑いを持ったのは


時の王の屋敷を公爵が美術館にして一般公開するようにした事っす…


時の王の遺産の肝心な遺物は全部公爵が接収してるんすよ


その事実を隠蔽する為に美術館として一般公開した



盗賊「ほう?お前は時の王の遺産に何があったのか知って居るのか?」


ローグ「全部は知らんのですがシャ・バクダ遺跡で発掘された冒険の書…これと同じものを公爵が持ってるのを見たでやんす」


盗賊「冒険の書?未来が読んだという奴だな?」


ローグ「そーっす…あっしが思うに未来の出来事を知って居るのは未来君だけでは無いと言う事なんすよ」


盗賊「なるほど…お前の言いたい事は分かった…本当の黒幕は公爵だと言いたい訳か」


ローグ「断言は出来やせん…ただ未来君の予言はすべて当たっていたんす」


盗賊「う~む…しかしどう考えても公爵の狙いがよーわからんな」


ローグ「アヘン酒が大量に出回っていやすよね?」


盗賊「あぁ…俺は飲まんがな」


ローグ「製造元の元締めは公爵っす…それから出回っている魔石の出所」


盗賊「そらスプリガンじゃ無ぇのか?」


ローグ「なんでスプリガンに魔石が入っているんでしょうね?」


盗賊「なんでって…まてよ?なんでだ?魔石のエネルギーは誰がどうやって入れてんだ?」


ローグ「ここからは憶測なんすが魔王が封じられた魔石…そこから取り出して居やせんかね?」


盗賊「つまり魔石の出所も公爵って訳か?」


ローグ「そうなんす…魔石のレートを決めるのも公爵が関与してるんすよ」


盗賊「な~るほど…ほんで俺に盗んで欲しい訳か」


ローグ「未来君がアダムを破壊したのは良いんすが…魔王を封じた魔石が何処に行ったか分からんのです」


盗賊「こりゃまたデカイ仕事だ…ちっと考える」


ローグ「へい…未来君の頑張りの裏に今言ったようなキナ臭い事案が起きてるんす」


盗賊「しかし今の状況じゃセントラルに行くのも難しいな…」


ローグ「そうでやんすね…昼とも夜ともわからん日が続いていやすからねぇ…」



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『翌日_港の倉庫』



ギコギコ トンテンカン



盗賊「おい!クソガキ…反対側持て!」


少年「いい加減名前で呼べよ」


盗賊「クソガキはクソガキだ!…おぉそこを押さえてろ!!」トンテンカン


ローグ「盗賊さんロープを持って来やしたぜ?」


盗賊「ローグは回転帆のロープ繋ぎ分かるな?俺はプロペラの改造やっからロープ張りは任せる」


ローグ「さすが盗賊さん…気球の改造はお手の物っすね」


盗賊「まぁ船に長い事乗ってりゃ帆の修理なんざ何回もやるからな」トンテンカン


少年「俺どうしよう?」


盗賊「ロープの結び方でも勉強しとけ…てかお前もヤレ」


ローグ「盗賊さんの新しい助手っすか?あっしが結び目作るんで見て居て下せぇ…」ヒョイヒョイ クルリ


少年「分かんねぇよ!!」


盗賊「おいローグ!そいつは頭じゃ理解出来無ぇから体で覚えさせろ…ぶっ叩いても構わん」


ローグ「いやいやいや…あっしはやさしくですね…」ヒョイヒョイ クルリ


少年「だから早すぎて見え無ぇって!!」


ローグ「えーとですね…」スラーン


少年「な…なんで短剣抜くんだよ」


ローグ「癖なんす…黙って言う事効かせる為の癖なんすよ…見てて下せぇよ?」ヒョイヒョイ クルリ


盗賊「おいクソガキ…そいつはローグって言ってな?短剣使いじゃ恐らく世界一だ」


少年「え!?もしかして海賊王の娘の右腕って…」


ローグ「恥ずかしい事言わんで下せぇ」


盗賊「分かったらロープ張りを文句言わんでヤレ!」



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トンテンカン ギコギコ



盗賊「…そうかアサシンがそんな事を言って居たか」


ローグ「アサシンさんは失った物が多すぎでしたねぇ…生きる理由がもう無いんでやんすよ」


盗賊「まぁ死に場所を探すと言ってもな…」


ローグ「あっしはアサシンさんの孤独がなんとなく理解出来やす…もう俗世に関わりたく無いのも分かりやすねぇ…」


盗賊「う~む…魔王を滅してもアダムを破壊してもな~んも変わりゃし無ぇしなぁ…又公爵みたいな奴が出て来る始末…」


ローグ「あっしらは只勇者2人失って…家族も友人もどんどん居なくなる…寂しいっすねぇ」


盗賊「なんつーかこういう絶望みたいな感覚こそ魔王の支配じゃ無ぇか?」


ローグ「ソレ!それなんすよ…あっしが思うに公爵が誘導しているのはそういう感じだと思いやす」


盗賊「やっぱ女海賊みたいな底抜けな光が欲しいな」


ローグ「姉さんはカリスマでやんした…未来君にはちっと足りない部分なんすが…」


盗賊「いや…資質はある…手段が正統派の勇者では無いだけだ」


ローグ「虫っすね?」


盗賊「光る虫なんかどうよ?」


ローグ「蛍っすか…盗賊さんもおかしな事を…ん?蛍を操る勇者…なんかロマンを感じやす」


盗賊「ぬはは馬鹿な事言って無ぇで…サッサと作業終わらせるぞ」



---でもまぁ悪く無ぇ…なんつかー少し希望が湧く…不思議なもんだ---


---闇を照らす光…虫でも構わ無ぇ---




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ギリリ ギュゥ ギュギュッ



ローグ「ふぃぃぃ…これで終わりっす」


少年「港にキ・カイの軍船が入って来てる」


盗賊「なぬ!?この霧の中キ・カイの軍船は航海出来んのか…」


ローグ「盗賊さん知りやせんでしたか?キ・カイの軍船は音の反射で障害物が分かるらしいっすよ?」


盗賊「ほぉぉぉそら知らなんだ…羅針盤要らずなのか?」


ローグ「聞いた話なんすが海底の地形を見ながら航海するらしいんす」


盗賊「欲しくなるじゃ無ぇか…盗めるなら盗って来るが…」


ローグ「大きな機械を丸ごと盗む感じになりそうでやんす」


盗賊「なんだデカいのはダメだな…しかし商船の代わりにあのデカイ船が荷を運ぶってのは有りだ」


ローグ「キ・カイの軍船なら流氷に当たってもどうってこと無いっすね」


盗賊「うむ…ただアレを奪った所で盗んだのがバレバレだな」


ローグ「帆が無いんで動かし方も分からんでやんすよ」


盗賊「まぁ奪うってのは冗談だ…軍船から荷が出てきたらちっと物資も潤うな…俺ぁ何が出て来るか見て来る」


ローグ「あっしも行きやすぜ?」


盗賊「おいクソガキ!商人ギルドに戻って軍船が入って来た事伝えて来い」


少年「受付のおばちゃんに言えば良いのか?」


盗賊「ぬはは…おばちゃん…まぁそうだ」


少年「分かった…」


盗賊「寒いからお前は商人ギルドで温まってろ…ローグ!行くぞ」ダダ




『軍港_立ち入り禁止』



衛兵「…これより先は立ち入り禁止!帰った帰った!!」


盗賊「堅い事言うなよ…商船入って来無ぇから期待してんだよ」


衛兵「ここから見るだけにするのだ」


盗賊「しゃぁ無ぇな…ローグ!何か見えるか?」


ローグ「大きな荷をいくつも降ろして居やすね…多分専用の荷下ろし場から直接地下に運んでる様でやんす」


盗賊「外の街には入って来無ぇか…ちぃ」


衛兵「…」ジロリ


盗賊「ハハ皆物資に期待してる訳よ…ここん所魚しか食って無いからよ」


ローグ「地下行った方が良さそうっすね…ここからじゃ箱しか見えんでやんすよ」


盗賊「地下の荷下ろし場って何処だ?」


ローグ「さぁ?レールが有るのはチカテツ街道なんでその何処かじゃないすかね?」


盗賊「まぁ良い…クソガキが詳しいだろうから案内させる」


ローグ「地下の方が暖かいんでそっち行きやしょう」



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『チカテツ街道8番』



ここの奥から廃線に繋がる抜け道があるんだ…


廃線は昔オークの奴隷を奴隷船に積むのに使われて居た場所


ギャングの姉御はそこから逃げて来たんだ


それで廃線の少し先に軍用の施設がある…そこはキラーマシンが沢山居て危ない



盗賊「なるほど…その軍用の施設に荷物が降ろされてる訳だな?」


少年「多分…」


ローグ「軍の施設に忍び込むのはちっとリスクありやすぜ?」


盗賊「まぁ俺らにはハイディングがある」


ローグ「少年を置いて行くでやんすか?」


盗賊「これは勉強だ…俺が背負ってやる…荷が何なのか見て戻る」


ローグ「それだけならなんとかなりやすね」


盗賊「おいクソガキ…お前何があっても絶対しゃべるな…出来るな?」


少年「当たり前だ…」


盗賊「ようし!背に乗れ…走る事もあるから振り落とされんなよ?」


少年「…」コクリ


盗賊「じゃぁローグ…いつもの感じで行くぜ?」


ローグ「あいさー」


盗賊「ハイディング!」スゥ


ローグ「ハイディング!」スゥ


盗賊「迷って無ぇな?行くぞ…」タッタッタ



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『軍の倉庫』



盗賊「リリース!」スゥ


ローグ「リリース!」スゥ


盗賊「こりゃまたデカイ倉庫だな…」


ローグ「後ろにキラーマシン歩いてるんで気を付けて下せぇ」ヒソ


少年「…」ユビサシ


盗賊「アレか…もうちっと寄る」ヌキアシ サシアシ


ローグ「何っすかね?」ソローリ



-------------



盗賊「ほとんどが食料の様だな?」


ローグ「肉と野菜…多分フィン・イッシュから帰って来た感じでやんす」


盗賊「しーーっ…何か話してる…」


ローグ「…」



食料は順次市場に流せ


銀と鉄鋼は一旦備蓄…黄銅は直ぐに工場へ運ぶんだ



高官「魔石は入荷して居ないのか?」


将校「予定の半分以下ですが一応入荷しています」


高官「ふ~む…やはり出し渋って来たか」


将校「はい…恐らく遺跡探掘の権利が狙いと思われます」


高官「古代兵器出土の情報がリークしたのは間違い無いな」


将校「朗報もあります…この異常気象で航海出来るのは我々の軍船だけ…もう豪族は敵ではありません」


高官「ふむ…兵はこの異常気象をどう思って居そうだ?」


将校「賢い者は地軸の異変に感づいて居ます…そろそろ発表した方が混乱しないかと」


高官「うむ…しかし予言がこうもピタリと的中するとは…」


将校「魔石は引き続き向こうの言い値で取引を続けてよろしいのですか?」


高官「相手の出方を探りたいのもある…まずは言い値で進めるのだ」


将校「ハッ…豪族に資金が回って行くのはなんとも…」


高官「航海出来るのは我々だけなのだろう?取引のカードはこちらにある」


将校「荷物を降ろし次第出港の準備に取り掛かります…失礼」



盗賊「戻るぞ…」ヒソ


ローグ「へい…」ソローリ



--------------


--------------


--------------




『チカテツ街道8番』



盗賊「リリース!」スゥ


ローグ「リリース!」スゥ


少年「ぷはぁ…」


盗賊「…とまぁ隠密ってのはこんな感じだ…勉強になっただろう?」


少年「俺も出来るようになるかな?」


盗賊「そのうちな?」


ローグ「盗賊さん…さっきの聞いた話…」


盗賊「うむ…どうやら国のトップ共は地軸の移動を前もって知って居た様だ」


ローグ「やっぱり公爵が暗躍していそうっすね」


盗賊「この異常気象をきっかけに裏の取り合いやってんだろうな…民を後回しにして迷惑な話だ」


ローグ「察するにキ・カイにも密偵が潜り込んで居るみたいっすね?」


盗賊「まぁ俺達にゃぁ関係無い…しかし相手の出方を見たいというのはちと引っかかるな」


ローグ「古代兵器って何なんすかね?もしかして10年前の光る隕石かも知れやせんね…」


盗賊「…俺は見た事あるぜ?商人と一緒に遺跡探掘に行った事あんだよ…だが動かし方が分からん」


ローグ「な~んかしっくり来ないっす…公爵が欲しがるように思えないんすよね」


盗賊「どういう事よ?」


ローグ「公爵は利益とか興味無いんすよ…扇動するだけなんでやんす」


盗賊「という事はキ・カイに使わせるという事か?」


ローグ「そっちの方がしっくり来るでやんす…ちっとまだ情報が足りないっすね」




『中央ホーム』



ワイワイ ガヤガヤ



盗賊「おいクソガキ!適当に玩具買って土産に持って帰るぞ」


少年「マジ!?」


盗賊「ここは安いからな…袋一杯に詰めて持って帰る」


ローグ「盗賊さんはいつハテノ村に戻るんすか?」


盗賊「明日だ…移民との約束があんだ」


ローグ「あっしも一緒に行きやす…ハテノ村まで案内して下せぇ」


盗賊「それなら荷を目一杯積んでけ」


ローグ「何を積んで行けば良いっすかね?」


盗賊「粗方物資は調達したんだが…そうだ魚が安い筈だ…あっちにゃ魚が無ぇ」


ローグ「分かりやした…後アダマンタイト余って居やせんか?」


盗賊「おぉそうだな…確か商人の隠し部屋に色んなサイズが保管していたな…そうそう俺が拾った武器も余ってる」


ローグ「全部積んで行きやす」


少年「チカテツ街道にまだはぐれのギャングが数人残ってる…連れて行って良いか?」


盗賊「おぉ仲間は多い方が良い…直ぐにローグの気球に乗せて待たせろ」


少年「玩具と一緒に明日の朝までに気球に戻る…それで良いか?」


盗賊「遅れんな?…ほらよ!金だ」チャリーン ポイ


少年「必ず戻る」パス スタタ


ローグ「いやぁぁ中々見所のある少年っすね?」


盗賊「だろ?あれで仲間思いなのが良い…なんつーか昔の俺みたいだ」




『商人ギルド』



ザワザワ ガヤガヤ


取引所の一時移転のお知らせ


デパチカ居住区の支店へ一時的に取引所を移転します


露店を出店する際は中央ホームに専用区画を設けてあります



盗賊「やっぱ寒みぃから通常営業は厳しいか?」


受付「地下の方が取引活発なんだよ…遅れると客逃がす」


盗賊「この建屋はどうすんだ?俺は荷物置きっぱなしなんだが…」


受付「しばらく施錠しとく…入るんなら自分で鍵開けて」


盗賊「他の娘と子供達はもう地下行ってんのか?」


受付「もう支店の方で取引開始してんだよ…あたしも行くから早く出てって」


盗賊「俺の荷物出すからちっと待てや」


受付「待てない…あと勝手にやって」ガチャリ


盗賊「ぬあぁなんだアイツ…ちぃ俺一人か」


盗賊「しかし…誰も居無ぇとココも寂しいもんだ」


盗賊「まぁしょうが無ぇか…石炭で暖を取るのも金捨ててる様なもんだしな」



ガチャリ ギー




『隠し部屋』



ゴソゴソ ガチャガチャ



盗賊「錆びを落としゃまぁ一端の武器になる…しかしボルトが重い」ヨッコラ ヨッコラ


盗賊「クロスボウはなんだかんだで使うから全部持って行こう」


盗賊「おぉぉそうそうアダマンタイト忘れる所だっだ…ええと」ゴソゴソ


盗賊「あったあった…しかし商人もガラクタばかりよく集める」


盗賊「んん?何だこりゃ…指示書」ヨミヨミ


盗賊「こりゃ公爵からの指示書じゃ無ぇか…なんでアイツが…」


盗賊「なるほど先物取引の密約か…条件に古文書」


盗賊「公爵が古文書を餌に商人と密約交わしてんのか…なるほど分かってきたぜ」


盗賊「公爵は商人と同じ様な立ち回りすんだな…あいつも表にゃ出無ぇ」


盗賊「つまり影武者が沢山居る訳だ…用心し無ぇとな」


盗賊「古文書らしき書物が見当たらんという事は…あいつ持ち歩いてんのか?」


盗賊「どうやら公爵とやり合うなら商人が肝になりそうだ」


盗賊「くそうタイミングが悪りぃ…まぁ一旦様子見か」




『貨物用気球_改』



ガタゴト ガタゴト



盗賊「武器持って来たぜ?乗せとくぞ」ドスン


ローグ「炉に火が入って居やす…ちっと温まって行って下せぇ」


盗賊「おう!!死ぬほど寒いな」ガチガチ


ローグ「あっしは早速クロスボウセットして来やす」ガチャ ガチャ


盗賊「んん?どうしたのよ?」


ローグ「どうやらあっしは見張られてるみたいでやんす」


盗賊「やられる前にヤレ」


ローグ「もう懲らしめてやったんで近付いては来ないでやんすよ」


盗賊「誰だったんだ?」


ローグ「豪族の密偵っすね」


盗賊「まぁデカイ気球使って何処に行くのか気になるんだろうな?」


ローグ「商人ギルドの方は明かりが消えているみたいでやんすが?」


盗賊「デパチカ居住区にしばらく移転だとよ…もう商人ギルドの建屋には誰も居無ぇぞ」


ローグ「寒すぎっすもんね…豪族に襲われないのもこの寒さのお陰かも知れやせん」


盗賊「ぬはは違い無ぇ…こっちはヌクヌククロスボウで応戦すりゃ手も足も出んわ」


ローグ「この昼か夜か分からない天候は何なんすかねぇ」


盗賊「もうちっとの辛抱だ…ハテノ村は温泉が合ってな…酒場もあって天国よ」


ローグ「そら楽しみっすわ…そうそうフィン・イッシュ産の芋酒を樽で仕入れときやした…飲みやすか?」


盗賊「一杯だけな…あんま飲むと寝過ごしちまうから」




『翌朝?』



タッタッタ



盗賊「ローグ!クソガキ共は気球に乗ったか?」


ローグ「寝てるでやんすよ」


盗賊「クソガキ!!お前何やってんだ」ドガ


少年「うぐぅ…」


盗賊「お前が気球操作すんだろ!寝てんじゃ無ぇ!!」グイ


少年「マジか…」ヨロ


盗賊「ほんでローグ…簡単な地図書いてきた…飛んだら直ぐに狭間に入って移動しろ」


ローグ「案内してくれるんじゃ無かったんすか?」


盗賊「途中で合流だ…羅針盤は使え無ぇからその地図通りの目標目指せ」


ローグ「火山目指すんすね?…えーと初めに見えた川沿いに…」


盗賊「そうだ…川沿いに上流目指すと大きな湖がある…その真ん中で合流だ」


ローグ「分かりやした」


盗賊「他の小さい気球も火入れが始まってる…追いかけてくんぞ?」


ローグ「マジっすか…」


盗賊「ガキ共起こしてクロスボウでも撃たせろ…兎に角上手く撒け…じゃ行くぞ!」ダダ




『貨物用気球』



フワフワ パタパタ



盗賊「本当遅せぇなこの気球は…おいクソガキ!縦帆を3番目に結び変えて風を横に受けろ」


少年「3番…3番…」ドタバタ


移民達「だ…大丈夫でしょうか?」


盗賊「あぁ心配すんな…お前等は暖かい所で食事でもしていて良いぞ」


少年「縦帆で風受けたぁ!!」


盗賊「よしよし…このまま斜め方向で良い…俺はデッキに出る!クソガキは後方のクロスボウ用意しとけ」ダダ


少年「分かった…」ドタドタ


盗賊「やっぱ小さいの追って来てる…この距離じゃクロスボウ当てるの無理だな」


少年「どうする?」


盗賊「上昇!!炉に石炭突っ込んでふいご踏め!!撃ち下ろしにする」


少年「…」ガッサ ガッサ



フワフワ フワフワ



盗賊「そのまま上昇続けろ…クソガキ!見てろよ?ドラゴンでもぶっ殺せる俺の武器だ」


少年「え…」


盗賊「行くぞ…」ガチャリ



バーン! ジャラジャラ



盗賊「ぬははは…こりゃ良い!ちっと銅貨が勿体無いがクロスボウ12発撃ったのと同等だ」カチャカチャ


少年「当たった?」


盗賊「分からん…だが何回でも撃てるぞ?」ガチャリ



バーン! ジャラジャラ



少年「当たってるかどうか分からない…」


盗賊「気球はな?何か撃って来られると離れるしか無い訳よ…球皮傷んだら無事じゃ済まないからな?」ガチャリ



バーン! ジャラジャラ



少年「本当だ…追って来なくなった」


盗賊「ようし!距離が開いたら狭間に入る…」


少年「すげぇ…たった3発撃って追っ手を退けた…」


盗賊「36発だ…クロスボウのボルトが36発降って来て近づこうなぞとは思わん…さて狭間に入る!ハイディング!」スゥ



---------------


---------------


---------------



『湖の上空』



フワフワ パタパタ



盗賊「やっぱ向こうの気球の方が帆がデカい分早いな…」


少年「ローグが手を振ってる」


盗賊「ロープで連結させて引っ張らせる…ローグ!!ロープ受け取れぇぇぇ!!」グルグル ビュン



ローグ「あららららら‥‥あっぶ!!」パス


盗賊「そっちの気球の方が早いから引っ張ってくれぇ」


ローグ「あいさー」グイグイ ギュゥゥ


盗賊「向こうの山間を尾根沿いに飛べ!!」


ローグ「へ~い!!」ダダ


盗賊「クソガキ!気球の操作は分かるな?高度だけ向こうの気球に合わせろ」


少年「あぁ…縦帆は?」


盗賊「工夫してヤレ…あんまり足引っ張んない様にな?」


少年「盗賊はどうする?」


盗賊「俺はロープ伝って向こうで酒飲んでくる…まぁこっちは任せた」


少年「えええええ!?マジか…」


盗賊「まぁすぐ戻って来るから心配すんな…上手くヤレ」ダダ




『貨物用気球_改』



フワフワ バサバサ



盗賊「…なるほどプロペラは使って無いか」


ローグ「低速の時だけっすね…姉さんの飛空艇より遅いっすが操舵が同じなんで慣れて居やす」


盗賊「俺もハテノ村付いたら改造するわ」


ローグ「風の具合によるんで確実に進むならプロペラも捨てたもんじゃ無いかと」


盗賊「欠点は帆の結び替えでいちいちデッキに出なきゃならん事か」


ローグ「そーっすね…死ぬほど寒いっす…もたもたしてると手が凍傷に掛かっちまいやす」


盗賊「俺は酒を飲みに来たんだがよ?」


ローグ「飲んで行って下せぇ…子供達が騒いでいやすが…」



カーン カーン キーン



盗賊「ごるぁぁ!!武器はおもちゃじゃ無ぇぞ!!当たったらお前等死ぬぞ」


子供達「ひぇぇぇぇ…」ドタドタ


盗賊「なんだこの食いカスは!!」


ローグ「あぁぁそれ魚が凍ってて焼けなかったんすよ…ちっと子供達に料理は無理でやんした」


盗賊「お前等見てろ!魚が凍ってたらマズぶった切れ!」スパスパ


子供達「…」ポカーン


盗賊「ほんでナイフにぶっ刺す!焼く!食う!」ジュゥゥゥ


子供達「…」ジュルリ


盗賊「酒だ酒!!酒持って来い」


子供達「…」ソローリ


盗賊「出来るじゃ無ぇか…」グビ プハァ


子供達「魚…欲しい」


盗賊「おぉ食え食え…俺ぁ魚がキライなんだ」


ローグ「済まんでやんす…食い物が魚しか無いもんすから」


子供達「うんま!!うんま!!」モグモグ


盗賊「もうちっと我慢しろ?ハテノ村に着いたら美味いもの沢山あるぞ?」


子供達「美味いものって何?それ食べられる?」モグモグ



---なるほど…ゴミしか食った事無い訳か---


---こりゃ鍛え甲斐がありそうだ---




----------------



フワフワ バサバサ



ローグ「太陽がずーっと低い位置にあるでやんす」


盗賊「そろそろ日没の筈なんだがな…やっぱ南極付近な訳か」


ローグ「月が全然違う所にあるのは奇妙っすね」


盗賊「何が起きてるのかさっぱりだな?まぁ…まだ生きてる訳だからどうにかなるかヌハハ」グビグビ


ローグ「後ろの気球は少年に任せておいて良いんすか?」


盗賊「あっちは大人が6人乗ってんだ…大丈夫だろ?」


ローグ「見た所2家族で合計11人…少年入れて12人…どんな移民なんすか?」


盗賊「片方は鉱夫でもう片方は元傭兵なんだとよ」


ローグ「商船が動かないもんだから傭兵が稼ぎ無くなった感じなんすね?」


盗賊「まぁそういうこった…そもそも傭兵だけじゃ家族は養えんけどな」


ローグ「なーんかそういう移民が増えそうっすね?」


盗賊「うむ…だがハテノ村も沢山家がある訳じゃ無いんだ…俺らはこの気球に寝泊まりする事になる」


ローグ「あっしはこの気球が気に入りやした…荷物を載せて人も12人乗れるんすからね」


盗賊「もうちっと温い所だとデッキで酒飲むのも良さそうだ…まぁちょっとした船みたいなもんだな」


ローグ「そういやあっしは船を一杯持ってるんすよね…奴隷船なんすが」


盗賊「そら羨ましい…何処に停船してんだ?」


ローグ「今頃フィン・イッシュに4隻…港町に4隻…あとは何処にいるか分からんす」


盗賊「奴隷商を雇ってんだな?」


ローグ「そーっすね…船を貸して奴隷を移送してるんすよ」


盗賊「また奴隷商売とはゲスい事やってる…」


ローグ「いやいやいや…地軸の移動を想定して強制退避させてるんすよ…慈善事業ですわ」


盗賊「ほーん…それで略奪品は豪族に回る訳か」


ローグ「そこはしょうがないっす…でも貧しい村よりも資源の豊富な街で暮らした方が生きるのがずっとラクな筈なんす」


盗賊「まぁ南極になっちまうなら仕方無ぇという見方もあるけどな」


ローグ「あっしも強制退去させるのはちっと心苦しい所もあるんすが心を鬼にして…」




『数日後』



フワフワ バサバサ



ローグ「ここらは低木ばかりで目印はなーんもありゃしやせんね」


盗賊「もうちょい行ったら尾根の谷間に沢山木が生えてる…そこがハテノ村よ」


ローグ「あ!!あそこの煙上がってる所っすね?」


盗賊「うむ…毎回来るたびに木が増えてるんだが今回は花も増えて居そうだ」


ローグ「ずっと雪ばっかりだったんで花なんか珍しいっすわ」


盗賊「しかし大分温くなった」


ローグ「高度下げたら丁度良い暖かさかも知れやせん」


盗賊「そろそろ炉を止めるか…俺は後ろの気球にもどるから上手い事誘導してくれ」


ローグ「へい!!」




『ハテノ村』



フワフワ ドッスン



盗賊「こりゃえらく歓迎じゃねぇか…子供達全員か?」


魔法使い「気球は遊び場だから…」


盗賊「おい!クソガキ!!例の玩具を配ってやれ」


少年「あぁ分かってる…みんなこっちだ」



ウキャァァァァ ドタドタ



影武者「物資の移送お疲れ様…売れ行きはどうだったかな?」


盗賊「…見ろ!調達が終わってもこんだけ余ってる」ドスン ジャラリ


影武者「相場が知りたいな」


盗賊「硫黄がクソ高く売れる…木材は高いっちゃ高いが運搬効率が悪いからヤメだ…石炭は安定で高値」


影武者「ハテノ酒は?」


盗賊「なんだそっちのが気になるんか?樽4つで金貨5枚…まぁまぁだろ?」


影武者「評判は?」


盗賊「速攻売り切れたらしい…でも硫黄に比べりゃ運搬効率は悪い」


影武者「まぁお酒だとそうだね…硫黄がいつまで高値が付くか分からないから安定収入を考えたいのさ」


盗賊「魔法使いが作ったポーションの方が稼げるぞ?金持ちが速攻買って行きやがった」


魔法使い「大量に作れないのよ」


盗賊「そうか…酒の方が簡単か…ほんで買取もバッチリ全部積んで来たぜ?」


影武者「確認する…あれ?武器と魚も?」ガチャ ガチャ


盗賊「ローグも同じ気球を買ったんだ…空で戻って来るのも勿体ないから適当に物資積んで来た」


影武者「気球がもう一台増えるのは大きいな…武器も丁度欲しかった」


魔法使い「2キロほど川を下った湖まで村を拡張しようとしているの…資材を運搬したかった所」


盗賊「ここじゃ家を建築するスペースが足りんか」


魔法使い「それもあるけど海賊王のお爺さんは船を使った物流をやりたいみたい」


盗賊「なるほど…村の発展には丁度良い訳か」


魔法使い「建屋が増えれば移民ももう少し受け入れられるし…」


盗賊「2家族連れて来たぜ?鉱夫と傭兵だ…住む場所へ案内してくれ」


魔法使い「分かったわ…皆さん荷物を持って付いて来て下さい…空き家の方へご案内します」



ゾロゾロ


うわぁぁなんか良さそうな村ね


思っていたよりちゃんとしてそうだ


見て!お店で食事してる


コラコラ指を指しちゃイカン




『酒場』



ワイワイ ガヤガヤ



盗賊「ここがハテノ村自慢の酒場だ…俺の家みたいなもんだ」


ローグ「ほえぇぇ?ちゃんと作ってありやすね…」


女将「いらっしゃいませでし!!いやいや…おかえりなさいでし!!」


盗賊「例の酒振舞ってやってくれぃ」


女将「はいなー」スタタ


盗賊「しかし随分雑貨が増えたな?」


影武者「剣士さんが作ってくれているんだ」


盗賊「なぬ!?剣士がこの村に戻ってんのか…俺ぁてっきり幽霊船探しに行ったと思ってたわ」


ローグ「じゃぁ商人さんも戻って来たんすね?」


影武者「商人さんは戻って居ないよ」


盗賊「剣士は何処よ?さっきは見かけなかったぞ?」


影武者「上の遺跡に籠りっ放しさ…なんでも星の観測をやっているそうだよ」


盗賊「航海術の基本だ…地軸の移動を計算してるんだな」


女将「ハテノ酒とつまみの虫焼きどうぞー!!」ドン


盗賊「なんだこりゃ…バッタを焼いてんのか?」


影武者「ハハ中々美味しいんだよ…醸造で余った酒粕にバッタを漬け込んで焼くんだ」


女将「食料の節約でし…そのバッタは作物食べるので逮捕したです」


ローグ「あ!!本当っすね香ばしくて美味いっすよコレ」バリバリ


盗賊「こりゃ食料に困る事は無さそうだ」グビ プハァ


影武者「どう?ハテノ酒美味しくなって居ないかい?」


盗賊「アルコールが増えていっぱしの酒になったじゃ無ぇか」グビ


影武者「少し寝かせてから醸造するんだよ…このお酒のお陰ですごく儲かってる」


盗賊「儲かる?」


影武者「ドワーフの鉱山労働者が毎日酒場に来る様になってね…お酒を出せばお金が入る…お金で硫黄を安く買う」


ローグ「これあっしらもお金払うでやんすか?」


女将「食い逃げは逮捕するでし!!」ビシ


影武者「ハハ今日は僕が払っておくよ」


盗賊「さすがだな…もう流通が成り立ってるんか」


影武者「儲かるし上手く行くし楽しくってさ…そうそう香辛料も充実したからもっと上手に虫料理が出来そうだ」


盗賊「虫ねぇ…」


女将「影武者さんは虫の食べ方を良く知ってるですよ…子供達も虫を嫌わないで食べてくれるでしゅ」


影武者「なるほどな…ゴミ食って生きてた奴らはこういう才能もある訳か…見習わねぇとな?」




『広場』



じゃぁお願いします…



盗賊「おぉ傭兵の夫婦そろって早速仕事か?」


魔法使い「村の警備をお願いしたの」


盗賊「んん?警備が必要な程危なくは無さそうだが?」


魔法使い「流民がポツポツ来る様になって一応の警戒よ」


盗賊「ほぅ?どっから来てんのよ?」


魔法使い「近隣にはまだ小さな村がいくつもあるのよ…食料難で流れて来てる」


盗賊「じゃぁ丁度武器を持って来て良かったな」


魔法使い「ハンターが言うには昔の兵隊駐屯跡地にも何か住み着いて居るって…」


盗賊「ほんじゃ物資調達にゃ丁度良いじゃ無ぇか…弾薬とか残ってるかも知れん…どこにあんのよ?」


魔法使い「川向うの丘を越えた先…オークとの激戦区だった筈」


盗賊「オークか…あんまり関わりたく無ぇな」


魔法使い「オークとは今の所良い付き合いだから刺激しない方が良いと思う」


盗賊「良い付き合いってどういう事だ?」


魔法使い「どんぐりとか毒キノコを村の外に出しておくと代わりに薬草を置いて行ってくれるのよ…最近では動物の毛皮とかも」


盗賊「なるほどその関係は続けた方が良さそうだ…ドワーフの気球がウロウロしてるこの村に攻め入る事は無いだろう」


魔法使い「そういう風に見えるんだ?」


盗賊「ここの立地だと気球から弓でも撃たれりゃそうそう侵略出来ん…ドワーフの気球は抑止力になってるな」



タッタッタ



影武者「盗賊!気球で物資の移送をお願いしたい」


盗賊「ぬぁ!?今帰って来たばかりで又キ・カイに行かせるつもりか?嫌なこった!ちっと休ませろ」


影武者「あぁ違う違う…上の遺跡から石の建材を運んで欲しいんだよ」


盗賊「石の建材?」


影武者「ヘラジカの引っ張る荷車じゃ往復で効率が悪いのさ…貨物用の気球なら一気に運べる」


盗賊「そうか…まぁ剣士にも会いたかった所だ」


影武者「2往復で全部移送できると思う…お願いするよ」


盗賊「荷の出し入れは人駆用意しとけ?俺ばっかりに重労働させんなよ?」


影武者「分かった分かった」


盗賊「てか石の建材なんかなんで遺跡にあるんだ?発掘してんのか?」


影武者「話して無かったね…上の鍛冶場から出る鉱石の屑から作ってるのさ…これから作る建屋は石の建材で組むんだよ」


盗賊「なるほどゴミの再利用って訳か…こんな田舎で石造りの建屋とはまた豪華だな」


影武者「炭坑が賑やかなうちは建材も沢山作れるからどんどん消費しないと…」


盗賊「ほんじやちっと遺跡まで行って来る…じゃぁな」




『古代遺跡外_鍛冶場』



シュゴーーーー モクモクモク



鉄のた~めなら~♪え~んやこ~ら♪


おいらはかっじや~♪おしゃれなか~じや~♪



盗賊「お~い!!石の建材運びに来たんだがよ…どれだ?」


ドワーフ「そこに積んである石は全部運んでかまわん~で~♪」


盗賊「どわ…これはでかい釜戸じゃ無ぇのか…こら2往復じゃ無理だな」


ドワーフ「置き場に困っておルンルン♪早く運ん~で♪くださ~いな~~♪」


盗賊「ローグ!これが全部そうだとよ…気球に積むぞ」ヨッコラ


ローグ「盗賊さん…この石意外と軽くないっすか?」ヨッコラ


ドワーフ「多孔石が混ざってルン♪軽くて丈夫な建材だよん」


盗賊「軽石ってやつが混ざってる訳な…まぁ良いとりあえず乗せれるだけ乗せてちゃっちゃと運ぶぞ」エッホ エッホ


ローグ「全部炭坑から出たゴミで作ってるんすね」ヨッコラ


盗賊「保温性も良さそうな建材だ…ザラザラだけ我慢すりゃ良い家になりそうだ」ヨッコラ


ローグ「この重さなら2往復でなんとか…」


盗賊「日が暮れちまう…急ぐぞ」エッホエッホ



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---------------


---------------




『古代遺跡内』



アブラカタブラ ドーニカオマモリクダサイ



盗賊「…遺跡に籠って何やってんだお前」


女オーク「…」


剣士「盗賊さんか…帰って来てたんだね?」


盗賊「おま…こりゃ何の儀式よ?女オークを奉ってんのか?」


剣士「魔方陣で厄災から守ってるんだ」


盗賊「何の厄災よ?外じゃ皆働いてんぞ?」


剣士「うるさいなぁ…厄災から女オークを守るのが僕の仕事さ」


盗賊「星の観測はどうなってんだ?直に日没なんだが…」


剣士「もうそんな時間か…行かなきゃ」


盗賊「えーとだな…俺ぁお前に会いに来たんだが…なんつーかお前はマイペース過ぎてだな」


剣士「あぁそうか!ゴメンよ何の用だった?」


盗賊「ぬははまぁ良い…ほんで星の観測で何か分かったか?」


剣士「地軸の移動速度が遅くなってるさ…やっぱり4000年前と同じ様に90°回転して止まりそうだよ」


盗賊「キ・カイが死ぬほど寒くなってんのよ」


剣士「もう南極点は通過した筈だからこれからもう少し暖かくなると思う」


盗賊「やっぱそんな事になってんだな…最終的な南極点はどこになりそうだ?」


剣士「海士島とセントラルの間だと思う…元々の地図の精度が良く分からないから大体その辺としか言えない」


盗賊「机に広げてあるのが新しい地図だな?」


剣士「うん…北の方角がズレてるから見る時に注意」


盗賊「こりゃもう一回書き直したほうが良いな」


剣士「ハテノ村は過ごしやすい緯度に位置するようになった…キ・カイは寒くて厳しいだろうね」


盗賊「あっちは地下があって奥が広いからなんとかなりそうだぜ?」


剣士「多少寒くても問題無いのか」


盗賊「キ・カイの軍船が内海を航海出来る様だから物流も止まるって事は無さそうだ」


剣士「じゃぁ深刻なのはセントラルぐらいか…」


盗賊「その件でお前に会いに来たんだ…ちっとセントラルに行きてぇのよ」


剣士「地軸が安定すれば行けない事も無い…偏西風に乗って外海を飛び越えればフィン・イッシュ…そこまで行けば簡単さ」


盗賊「地図でみるとやたら遠いな」


剣士「外海が大きすぎるよね…でもどうしてセントラルに?」


盗賊「話はちっと長いんだ…お前も星の観測があるんだろ?俺も温泉に入りてぇ…話は明日だな」


剣士「おけおけ…温泉に入るなら今の内に行かないと真っ黒になったドワーフ達が来ちゃうよ」


盗賊「そら急が無ぇとな…まぁ今晩は酒場でグダグダしてるからお前もたまには顔を出せ」


剣士「わかったよ」


盗賊「おっし!ローグ!温泉行くぞ!!」ダダ




『酒場』



ワイワイ ガヤガヤ



ローグ「いやぁぁぁ温泉に入って…ハテノ酒飲んで…虫の串焼き…最高っすね」グビ ムシャムシャ


女将「最近は毎日こんな感じなのです」


ローグ「酒場の外でもお祭り騒ぎなんすね?」


女将「ハンターさんが焚火で色々焼いてくれてましゅ」


盗賊「はぁぁぁ後は楽器だな…リュートでも聞きながらこうグダグダと飲みながら寝る訳よ」グビ


ローグ「良いっすね…体力全快しそうっす」グビ


盗賊「ドワーフの連中が鉱山から降りて来て酒は足りてるのか?」


女将「ギリギリでし」


盗賊「毎日作ってんなら小麦足りなくなら無ぇか?」


女将「芋が沢山余ってるので大丈夫です」


盗賊「ほーこの酒は芋も混ざってんのか…道理でアルコールがきつくなった訳だ」グビ


女将「醸造で残った酒粕も全部食用で使い切れるです」


ローグ「このチーズみたいな奴っすね?」


女将「それをパンに乗せて焼くのもおいしいです」


盗賊「俺ぁそのパン食いながらワインを飲みてぇ…パンとチーズとワイン」ジュルリ


ローグ「それにしてもなんちゅー平和な村なんすかねぇ…キ・カイとは大違いっすね」


盗賊「自給自足できるってのは良いもんだ」



スタスタ



女将「あ!!剣士さん…降りて来たんでしゅね」


剣士「空いてるかい?2人分」


女将「どうぞどうぞ座ってくださいまし…カウンター空いてるです」


剣士「例のお酒2杯頼むよ…」ジャラリ


女将「はいなー!!」


盗賊「星の観測はもう終わったのか?」


剣士「時間測ってるんだ…しばらく暇になる」


盗賊「しかしお前…只者じゃない雰囲気が出てんなヌハハ…女オークも風格出て近寄り難いぞ?」


剣士「まだ村に馴染めて居ないって事さ…女オーク座って?」


女オーク「…」ドッシリ


女将「どうぞー!!ハテノ酒2杯でし!!」ドン


ローグ「はぁぁなんか2人とも恰好良いっすねぇ…いかにも強そうな感じ出てるっすよ」


剣士「変な事言わないでよ」グビ


女将「剣士さん久しぶりなので皆呼んで来ましょうか?」


剣士「あー気を使わせたくない…今日はちょっと飲んだら戻るから」


盗賊「まぁくつろごうぜ?ほら虫の串焼きでも食え」


剣士「ハハ…バッタかぁ…作物荒らされてない?増えすぎる前に退治しないと種まで食べられちゃう」


ローグ「あっしらが食っちやいやしょう…あっしはこの串焼き好きでやんす」ムシャムシャ


剣士「肉の代わりに丁度良いね…ワームよりも調理しやすいし」


盗賊「どうやら虫のお陰で食料難は解決してそうだな?」


女将「そうですねぇ…小麦の消費は半分くらいになってるですよ」


剣士「それで盗賊さん…今なら話を聞けるけど?」


盗賊「んぁ?別に急ぎじゃ無いから明日でも良い」


ローグ「あっしが話やしょうか?アダムに関連するかもしれやせんので剣士君も興味あるかもしれやせん」


剣士「アダムに?話して…」


ローグ「ええとですね…話は20年さかのぼるんすがね?…」



カクカク シカジカ



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---------------


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剣士「冒険の書がもう一冊ある…そうか精霊と時の王がそれぞれ一冊持って居たのか」


ローグ「…それで20年前から起きている事件はみんな公爵が関連していると思うんすよ」


盗賊「まぁそういう訳で公爵が持って居るお宝を俺が全部盗む…それでセントラルに行きたい訳よ」


剣士「理由は分かった…只ね?冒険の書は未来を見るだけの物では無いんだよ?」


ローグ「ええ?どういう事っすか?」


剣士「魔女も冒険の書を読んでるんだけど…大昔の物語だったそうだよ」


ローグ「読む人によって変わるんすね?」


剣士「情報屋さんも読んでるのさ…未来じゃ無くて過去の物語…多分精霊の記憶の一部を覗けるアイテムなんだ」


ローグ「そうだったんすね…てっきり予言の書だと思っていやした」


剣士「でも過去の物語の中で未来の予言があったなら間接的に未来を知ってる可能性はある…それは公爵に聞いて確かめたいかな」


盗賊「ヌハハ直接聞くんか?」


剣士「僕は魔術師だよ…幻術が得意な魔術師ね」


盗賊「怖えぇ怖えぇ…嘘は付けないってこったな?」


剣士「僕もちょっと興味出て来た…アダムの秘密を知ってる可能性が有るみたいだからね」


盗賊「お前が一緒だと俺も安心だ…白狼の盗賊団…今なら復活しても良いぜ?」


剣士「僕と女オーク…盗賊さんにローグさんで丁度4人か」


ローグ「えええ?あっしも?」


剣士「だって目の前に要るじゃない」


盗賊「決まりだな?」


剣士「どっちにしても地軸の移動が落ち着くまではここに居た方が良いよ…飛空艇でも迷っちゃうから」


盗賊「違い無ぇ…しばらく休暇だ」


ローグ「安心しやした…もうちっと幸せを満喫したいでやんす」ムシャムシャ




『数日後』



チュンチュン ピヨ



盗賊「言われた通り俺の気球は下流の湖に置いて来た…あそこに拠点作るんだな?」


影武者「そうらしい…今ドワーフ達が道を整備しているよ」


盗賊「下流の2キロ圏内がハテノ村って感じか…」


影武者「うん…作物も川沿いで育てる」


盗賊「ポツポツ生えてる大木は目印だな?」


影武者「あれは魔法使いが植えてくれてるんだ…領地の目安だね」


盗賊「まぁドワーフ達は建築が早いわ…あっちゅー間にいろいろ建てやがる」


影武者「すごいよね…開拓に慣れているんだよ」


盗賊「ここは石炭も鉄も豊富だし開拓しやすいのかも知れんな」


影武者「魔術師が2人居るのが大きいよ…木材と食料の調達はあの2人が要さ」


盗賊「今ハテノ村の人口は50くらいか?」


影武者「子供達合わせて60かな…ドワーフも入れると100人くらいさ」


盗賊「下流まで開拓進みゃ200人ぐらいの規模か」


影武者「もっと住めると思う…あの石の建材で作る建屋は2階建てに出来るんだ」


盗賊「じゃぁ倍って事か」


影武者「そうだね…そこまで増えれば立派な街として機能する」


盗賊「ついこの間まで何も無ぇ村だったのにな?」


影武者「フフ楽しみだよね?」


盗賊「うむ…オークもこっちに住みゃ良いのにな?」


影武者「魔法使いはそれも考えて居る様だよ…そうそうハテノ酒…これを村の外に置いて居るんだ」


盗賊「なぬ?オークに献上か?」


影武者「原料が小麦と芋とキノコ…全部オークの好みの食材なのさ」


盗賊「なるほど…友好の酒か…何が返って来るか楽しみだなヌハハ」


影武者「オークが味方だと賊から襲われ難いよね?…それと何がトレード出来るのかも楽しみなんだ」


盗賊「オークといえば牙とか角の類だな…ケバケバの衣装もあるな」


影武者「ドワーフが言ってたんだけどオークが使う武器は特殊な細工がしてあるらしい」


盗賊「細工?あのクソでかい武器に細工?」


影武者「それが知りたいみたい」


盗賊「牙とか仕込んであるだけに見えるがそんな珍しい物か?」


影武者「さぁね?エンチャントでもしてあるのかもね」


盗賊「ほーん…ほんで?今日は俺の仕事は終わりか?」


影武者「子供達が武器の使い方を教えて欲しい様だよ?行って見たら?」




『教会の裏』



ヒュンヒュン バシーン



そうそう!次の石を準備する動作はもっと早く


姉御!盾持って動く的お願い


分かった…来い!!




盗賊「ほぉぉぉ?スリングの練習か」


少年「あ!盗賊!!」


盗賊「動く的は良いがちっと危ないんじゃ無ぇか?投石あたったら怪我すんぞ?」


少年「小さい子にはスリングが一番良いと思った…接近された場合どうすれば?」


盗賊「うむ…スリングの選択は正しい…まずはそれを極めろ」


少年「投石を外したらどうするんだよ」


盗賊「腰にナイフを持っとけ…見てろこんな感じだ」



右手でスリング使うだろ?


接近された場合は左手でナイフを逆手に抜くんだ


まぁ護身用だな


格闘戦はお前等じゃもうちっと大きくなるまで無理だ



少年「左手でナイフを逆手に…」スチャ


盗賊「おう!そんな感じよ…まぁ狩りでも良く使うからナイフだけは護身用で持って居て問題ない」


少年「分かった…」


盗賊「しかしスリングの練習たぁ関心する…2~3人で投石すりゃ並みの賊なら撃退出来る」


少年「これでクマは倒せないかな?」


盗賊「頭部に当てりゃイケる…要は命中率だな?」


少年「ようし!練習続けよう!!」


盗賊「待て待て…動く的は危ねぇ」


オークの子「これは実践練習なんだ…私の練習でもある」


盗賊「スリングなんか見て避けれる速さじゃ無いだろ」


オークの子「急所を外すだけで良い」


盗賊「それじゃ怪我すんだろ?」


オークの子「私が囮になる作戦なんだ黙って見てて!」


盗賊「あぁぁ…なるほどな?…一人囮になって全員で投石する作戦か…ほんで自分は急所だけ守る」


オークの子「…」


盗賊「分かった…お前にコレをやる」ポイ


オークの子「角?」


盗賊「その角にゃ回復魔法のエンチャントが掛かってんだ…怪我しても直ぐに良くなる」


オークの子「あ…ありがとう」


盗賊「まぁ俺は黙って見てるわ…続けてやってみろ」


少年「よっし!!じゃぁ配置について」


盗賊「…」



---オークの気高さか---


---自己犠牲で守る姿が眩しいじゃ無ぇか---


---こりゃガキ共の自警団も馬鹿に出来んわ---




----------------




オークの子「つつつ…」


盗賊「見せてみろ…なるほど全部急所は外してるが…痛いだろう?」


オークの子「これぐらい直ぐに治る…私は他の子と違って丈夫なんだ…傷の治りも早い」


盗賊「まぁその角を上手く使え」


オークの子「…」


盗賊「よし分かった…お前に剣と盾の使い方を教えてやる」


オークの子「え?」


盗賊「まぁ立て…俺の攻撃をまず防いでみろ」スチャ


オークの子「…」スック


盗賊「行くぜ?」ダダ



ビシ バシ バシ



盗賊「木の棒じゃなきゃ死んでるぞ?しっかり見て防げ」ダダ



カン カン コン



盗賊「ふむ…まぁ良い…続けて行くぜ?」


オークの子「…」タラリ



カン カン バシッ



オークの子「え!?どうして…」グラリ


盗賊「死角が疎かになってんだ…自分の死角がどこになるか意識しろ…そこを剣で防げ」



カン カン コン



盗賊「まぁちゃんと防御すりゃなかなか攻撃は当たらんのよ…まずはしっかり防ぐ練習からだ…行くぜ?」ダダ



--------------


--------------


--------------



姉御と盗賊が戦ってるよ


やられっぱなしだぁ


でもちゃんと防いでるっぽい


行けぇ姉御ぉぉ




盗賊「ふぅ…どうやらお前は体幹が柔らかい…もっと低く構えてみろ」


オークの子「こうか?」グググ


盗賊「もっと低く出来るだろう?四足獣になったつもりで構えろ」


オークの子「…」グググ


盗賊「そんだけ低いと俺の攻撃は上からしか来ない…防ぐのは簡単になる筈だ」


盗賊「ほんでな?その姿勢から俺に突進してみろ…来い!」


オークの子「…」ダダ ドシン


盗賊「こりゃまるでイノシシだな…今見えただろ?攻撃の糸口が」


オークの子「うん…」


盗賊「お前はな?その低い姿勢からの突進が決め手になる…兎に角低く守って相手の隙を見つけろ」


オークの子「分かった…」


盗賊「じゃぁもう一回行くぞ?」ダダ



カン カン コン ビシ バシ




『酒場』



ワイワイ ガヤガヤ



ローグ「あ!!盗賊さん何処に行ってたんすか」


盗賊「おぉ教会の裏でちっとガキ共と立ち回りをな?」


ローグ「ええ?子供相手にっすか?」


盗賊「いやいやあのガキ共なかなか団結しててな…こりゃ下手な賊が来ても追い払うぞ?」


ローグ「マジっすか…」


盗賊「20人くらいのガキがが一斉にスリング使ってるのを想像してみろ」


ローグ「うは…近寄れやせんね」


盗賊「だろ?ほんでハーフオークのガキが又強い訳よ…普段から炭坑手伝ってるのもあるんだろうな」


ローグ「スリングは上手く使えば弓より飛距離出せやすぜ?」


盗賊「だな?爆弾でも投げりゃ正規軍とだって良い勝負になる」


ローグ「子供に爆弾は危ないっすねぇ」


盗賊「ギャング上がりなもんで割と色々知ってんだよ…スリングをチョイスすんのもそういう経験なんだろう」


女将「剣士さんがもう煙玉の作り方教えてたです」


盗賊「…煙玉…なるほど目くらましした後にスリングで投石すんのか」


ローグ「数撃ちゃ当たりやすもんね」


盗賊「な~んか…この村はもうガキ共に任せても良い気がして来た」


女将「私がお母さんの代わりなのでしゅ…お任せくだしゃい」


盗賊「そうだな…酒くれ酒ぇ」


女将「はいなー!!」スタタ



アオーーーン アオーーーーン



盗賊「ん?ウルフの遠吠え…」ガタッ


ローグ「…これ敵が入って来た合図じゃないっすか?」


盗賊「様子見に行くぞ」ダダ




『広場』



ザワザワ


上だ!ガーゴイルが飛んでる!


女子供は教会に避難しろぉぉ!!


弓を使える人は弓を持て!!


教会の上にクロスボウが設置してある




盗賊「何匹居るんだ?」


魔法使い「5匹くらいよ」


盗賊「お前は魔法撃てるな?」


ローグ「なんでガーゴイルなんか居るんすかね?」


魔法使い「前からちょくちょく来てるの…今日は数が多い」


ローグ「ガーゴイルは黄泉の魔物っすよ?」


魔法使い「何処かの狭間から迷い込んでいるのよきっと…」


盗賊「暗くなってきて良く見えんな」



シュタタ シュタタ



盗賊「おう!剣士…来たか」


剣士「オークも襲われているらしい」


盗賊「さっきの遠吠えがそうか?」


剣士「うん…僕と女オークは応援に行く…こっちは任せるよ」


盗賊「任せるっておい…」


剣士「オークは飛んでる敵に何も出来ない…ハテノ村は弓もクロスボウもある」


盗賊「ぬぁぁまぁしょうが無ぇな…」


剣士「ちょっと待ってね…夜光虫!従え…飛んでいるガーゴイルに取り付け」ブーン


ローグ「おぉ地面から光が昇って行くでやんす」


盗賊「おぉ!!」


剣士「これで目標を見失わない…近寄って来たら弓で撃てば良い…ガーゴイルは倒したら燃やして?病気を持ってる」


魔法使い「わかったわ…」


剣士「女オーク!急ごうか…オークの集落まで走るよ」


女オーク「うん…」


剣士「じゃぁ行って来る…」シュタタ



--------------



タッタッタ



ローグ「弓と矢を持って来やした…使って下せぇ」ポイ


盗賊「おう!!なかなか降りて来無ぇ…イライラすんな」



ドーーン パーン



盗賊「うお!!花火かよ…ドワーフが遺跡から撃ってんのか」


ローグ「効果ありっすね…火花がガーゴイルに当たっていやす」


魔法使い「ガーゴイルが急降下してくるわ!!狙い撃って」


盗賊「分かってらぁ」ギリリ シュン


ローグ「あっしも…」ギリリ シュン


魔法使い「外れてるじゃない!…火炎魔法!」ゴゥ ボボボ


ガーゴイル「ギャァァァァ…」バッサ バッサ


盗賊「くっそ!こっちは無視か…」


魔法使い「教会の方ね…移動しましょう」



ヒュンヒュン ヒュンヒュン ドスドスドス



ローグ「おぉ!!スリングの投石っすよ…」


盗賊「やるなあいつ等…」



ヒュンヒュン ヒュンヒュン ドスドスドス



ガーゴイル「ギャァァァァ…」ドサーーーー


盗賊「落ちた!!ぶっ殺せ!!」ダダダ グサ


魔法使い「どいて!!燃やす…火炎魔法!」ゴウ ボボボボ


ローグ「こりゃ圧勝っすね…」ギリリ シュン グサ



ヒュンヒュン ヒュンヒュン ドスドスドス



盗賊「数撃ちゃ当たるってなこの事か…弓撃つより全然効果的だ」


ローグ「あっしらは落ちたガーゴイルの処理に専念しやしょう」


盗賊「だな?もう一匹落ちそうだ…行くぞ!」ダダ




『教会の前』



ギャァァ バッサ バッサ



オークの子「こっちだ!!私は美味しいぞ!!」バンバン!


ガーゴイル「ギュルルル!ギャッハァ…」バッサ バッサ



ヒュンヒュン ヒュンヒュン ドスドスドス



ガーゴイル「ウギャァァ…」ドサーーーー


オークの子「このぉ!!」ダダ ブスリ


子供達「やったぁ!!姉御が倒したぁぁ!!」


オークの子「次!!スリング準備!!」


魔法使い「電撃魔法!」ガガーン ビリビリ


オークの子「ハッ…」


魔法使い「後は任せて…みんなで手分けして火事の火を消して来て」


オークの子「あ…はい」


盗賊「よーし!!とどめだ!!燃やしてくれい!」ダダ ブスリ


魔法使い「火炎魔法!」ゴゥ ボボボボ


盗賊「お前等スゲーじゃ無ぇか!!スリング練習した甲斐があったな?」


子供達「うへへへへ…」


オークの子「みんな降りて来て!!火事を消しに行くよ」


子供達「おーーーー」ドタドタ


ローグ「いやぁぁ20人のスリング部隊…スゴイっすねぇ」


盗賊「ガーゴイルが教会に突っ込まなかったのが幸いか…」


ローグ「いやいやクロスボウも撃ってたんで近付け無かったんすよ」


盗賊「なるほど…ちょっとした要塞になってたか」


魔法使い「一先ずこれでガーゴイルは全部撃退…村の点検に回って来るわ」タッタ


盗賊「俺らあんまり活躍出来んかったな?」


ローグ「酒が覚めちまいやしたね?あっしの気球に芋酒あるんでどうっすか?」


盗賊「そだな?酒場行ける感じじゃ無ぇし…見物しながらもうちっと飲もう」




『貨物用気球_デッキ』



グビグビ ヒック



盗賊「火事っつても花火がちっとくすぶってるだけか」グビ


ローグ「もう大丈夫そうでやんす」


盗賊「上の遺跡から花火ぶっ放す準備してるとはさすがだ…やっぱ海賊王の爺は戦のプロだわ」


ローグ「対空もちゃんと考えて居たみたいっすね」


盗賊「立地的に侵略すんなら気球使って来るしか無いんだが…これじゃ攻め切れん」


ローグ「下流の湖の拠点も陸戦を想定してるんでしょうね?」


盗賊「だろうな?大砲の射程内だしな」


ローグ「あ…見て下せぇ向こうの丘がうっすら光っていやす」


盗賊「んん?オークの集落はあっちにあんのか…」


ローグ「剣士君が夜光虫使役する所見やしたよね?」


盗賊「おぉ俺は鳥肌が立ったぞ…光を操る姿は勇者そのものだ」


ローグ「あっしもそう思いやした…地面から昇って行く光に足が震えやしたぜ」



ピカー キラリン!



ローグ「光った…」


盗賊「終わったな…剣士が刀を抜いたんだろう」


ローグ「静かなもんすねぇ…」サラサラ


盗賊「あぁぁ良い風だ…なんつーか地面が落ち着いた風だ」サラサラ


ローグ「これ命の音かも知れやせん…虫の這う音…飛ぶ音…食べる音…」


盗賊「なんだお前いつからエルフみたいになったのよ…柄じゃ無ぇからヤメロ」



-------------


-------------


-------------




『翌日_飛空艇』



ヨイショ ヨイショ



剣士「よし…水と食料はこんなもんかな」ドサ


盗賊「よう!出発の準備か?」


剣士「まぁね?あと樽で1つ分荷物が詰めるけど何か乗せる?」


盗賊「ちっと見せてくれ…水はまぁ良い…なんで土なんか乗せてんだ?」


剣士「あーそれで植物成長させるんだ」


盗賊「なるほど食料の代わりか…干し肉はまぁソコソコか…酒が無ぇな」


剣士「お?ハテノ酒1樽貰って行こうか…折角だし楽しみながら行きたいよね」


盗賊「俺が話付けて来る…もう出発するつもりか?」


剣士「予定は決めて居ないよ…準備出来たらいつでも良いさ」


盗賊「ちっと飯食ってからにしよう…酒場に集合で良いな?」


剣士「分かった…先に行っておくね…女オーク!おいで」グイ




『酒場』



ワイワイ 



剣士「…オークの集落は10人くらいで洞窟に住んでるよ」


魔法使い「そう…もっと交流出来れば良いのに」


剣士「その場所を守ってるんだってさ…でもハテノ村と争う気は無いみたいだよ」


魔法使い「交流の話よ」


剣士「あー石炭が欲しいって言ってたんだよね?」


女オーク「そうよ?少しずつ食べるの」


魔法使い「本当?」


剣士「代わりに琥珀を貰えるかもしれない…その洞窟は琥珀が一杯あった」


影武者「えええ!?琥珀…」


女オーク「琥珀も食料なの…少しづつ食べるのよ」


影武者「すごいトレードじゃないか…石炭と琥珀が交換出来るなんて…」


女オーク「ハテノ酒をとても気に入って居たわ」


剣士「なんか上手くやっていけそうだね?」


魔法使い「他に欲しい物は聞いて居ない?」


剣士「う~ん…言って良いのかな」


魔法使い「何よ!言って…」


剣士「一番欲しいのは奴隷なんだ」


魔法使い「え…それは無理」


女オーク「オーク族は奴隷を大切にするのよ…あなた勘違いしてる」


剣士「説明が難しいなぁ…人間の奴隷とは少し違うんだ」


女オーク「剣士は私の奴隷…これで説明付かない?」


剣士「いやいや僕の奴隷が女オークだって…何回も言ってるじゃない」


魔法使い「あのね…奴隷は奴隷でしょう?」


女オーク「もう少し交流を続けないと理解出来ないかもしれない」


魔法使い「奴隷ねぇ…」チラリ


剣士「まぁ何でも言う事聞く人の事さ…オークは奴隷を大事にするのは間違い無いよ」


魔法使い「ふ~ん…」シラー



ガチャリ バタン



盗賊「よぉ!!準備出来たぜ?」


ローグ「あっしも荷物詰みやした」


魔法使い「急に4人居なくなると少し寂しいわね…」


盗賊「用が済んだら直ぐに戻って来るぜ?俺の気球置きっぱなしだからな」


ローグ「あっしもお気に入りの気球を無くすわけに行かんっす」


剣士「…という事だよ…まぁ仕事に行ったと思って」


女将「うぇぇぇん…ひっく」


盗賊「おいおい湿っぽいのは勘弁してくれぇ…もう行くぞ!!」スタ


剣士「じゃぁ…また…」ノシ



---新しい旅が始まった---



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----------------



 果ての開拓編


   完




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