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『闘争の支配者』

前回に続きエピソード2です


「「 転送魔法 」」


詠唱をしなければ転送できないちょっと使い勝手の悪い魔法……フレーリアにとってはその認識なのだが、他の者からすればとてつもなく高度な魔法だ。


今回はスヴィナも詠唱し、一緒に転送して来たのだが……やはり慣れないことはすべきでは無い。


「あのーフレーリア様……ここって……」

「ああ、山、だな……」

「山……ですよね」


見渡す限りの森林と断崖絶壁の崖から見える素晴らしい風景。

うーん、空気が美味しい!!


「スヴィナ……君、座標間違えたでしょ」

「すっすみません……!!」


……そんな呑気なことを言ってる場合ではないくらいには重大なことだった。

あの星では地球など魔境にも等しい恐ろしい場所、そんなイメージが強く根付いている。


それは自然災害を食い止める役割を持つ家系ではさほど珍しいことでもない。


今までも沢山の人が自然災害を止めようと必死に足掻き、死んできたのだから当然だ。

我々一人や二人の手に負えないまでの巨大な自然災害の場合、それは大人数で少しずつ力を分散させてなるべく被害を最小限にすることが求められる。

なのに人とは傲慢なもので、成功報酬をなるべく他の人に渡したく無いという理由で無茶をした結果そのまま死ぬ……この業界ではよくある話だ。


それでも人が死んだことに変わりはない。

死者を労るという意味でも「地球は魔境」という話が至る所に出回っているのだ。


そしてそれを真に受ける、所謂「バカ」という者もこれまた一定数存在する……。


「こんな魔境で座標ミスなど……一歩間違えれば死んでいたぞ」

「はい……」


聞けばここは魔境「地球」。

一歩進めば正に断崖絶壁。

こんなわかりにくいブラックジョークがあって良いものなのだろうか。


「まあ良い。私と違って不慣れなことをしたんだ、失敗もするさ」

「寛大な御心、感謝致します……」


まだ地球に到着したばかりだというのにスヴィナは既に涙目だった……。




なんやかんやありながらも街まで下ってきた二人。

「やっと着きましたね……」

「ああ、誰のせいだか」

「ううっ……」


フレーリアはご機嫌斜めだ。

それは何故か。

なんとあの後スヴィナが山で躓いてしまい、勢い余って持ってきていた昼食が全て潰れてしまったのだ。


「まあ良い。そんなことよりスヴィナ。これよりお前は『椎名 瑠奈』と名乗れ。」

「? っは、はい」

「そして私は『觸井園 美亜』と名乗る。」

「ふれいぞの……みあですか。その、それは勿論素晴らしいお名前に違いないのですが……その……なぜ、偽名を?」


「指令により私達は明日より、私立深月学園に入学することが決まった」

「……え。」

スヴィナが口をポカンと開けたまま硬直する。


「み…みみみ、み。み、みづ……深月、が、がががく園ですか」


「ああ、そうだ。私だけでは心細いのでお前にも来てもらう」

スヴィナが顔面蒼白で泡を吹いているが果たしてフレーリアは気づいているのだろうか……。

これはご愁傷様。


「スヴィ……瑠奈。今から入学手続きだ、気を抜くなよ」

「はっはい!」





そして数時間後。

やっとのことで二人分の入学手続きが終わり、疲労困憊のスヴィナ達……いや、疲れているのはスヴィナだけだが……今日のところは宿に着いた。


「づ、疲れまじだ……ゔっ……」

「ほんと、昔からスヴィナは体力がないなぁ」

「……。貴方がおかしいだけです」


よく言った、スヴィナ。

きっとこの場に他の者もいれば共感の嵐だっただろう。


「私、これでも体力には自信があるのですが……フレーリア様を前にそれは意味を成しませんね」

「???」

まぁなんとタチの悪いことに本人にまっっったく自覚がないのである。

この体力&魔力お化けめ、と恨みの念がどこからともなく聞こえてきそうだ。


「ああそう、瑠奈……いや、スヴィナ」

偽名で呼びかけたところでもう一度呼び直す。

先程までのおちゃらけた雰囲気とは打って変わって今度は神妙な顔つきでスヴィナを見つめる。


「何でしょうか」


「……学園にはゲルダイド家のやつがいる」


「……!! それは、!」


ゲルダイド家。

十代ほど前からの家系で、未だ確立した地位が得られず、権力に強い執着のあることで知られた家だ。

だが権力を求めるあまり他の家の領土で好き勝手に暴れ回っているせいでほとんどの家がゲルダイド家を敵視している。

それは勿論、ミルアネド家も同じ事。

最初の数代は他の家の軍門に下り、メイドや執事として地位を少しずつ上げていた。

しかしここ数代、今のゲルダイド家は他の家を潰すことでその地位や財産諸々全てを奪おうと虎視眈々と機会を伺っている。


つまりだ。

そのゲルダイド家の者がいるということはフレーリア達もまた、狙われかねないのだ。


なにしろここは地球。

魔境と名高いここで死んだところで誰も気に留めない。

ミルアネド家の長女、フレーリアだが、実はミルアネド家の一人娘なのだ。

ミルアネド家の後継を断つ、またとない絶好のチャンスとなるだろう。


「私もメイドとして、護衛として精一杯努めますがフレーリア様、どうかお気をつけください」

「ふふっ……」

スヴィナが堪らず心配の声をかけると当の本人はふっと笑って見せた。

「えっと、フレーリア様?」

「そう案ずるな。私がゲルダイド如きに負けると思うか?」

「それは……思いませんが……」

「だろう?」

そう言ってにっと笑う。

これは心配をかけない為の見栄でも虚勢でも何でもない。

本当の意味で「敵なし」なのだ。


「……スヴィナ、こんな言葉を聞いたことがないか?」



「『戦場の墓場』、『戦果の刃』。」



「ー戦場で「それ」に目を着けられればその一瞬にしてそこが最後の景色となり、墓場となる。」


「少し小耳に挟んだことはありますが……この二つの言葉の関連性とは一体……」



「敵からは『戦場の墓場』と、味方からは『戦果の刃』と言われた。そして……、」


「最終的に付いた異名は『闘争の支配者』。酷い名だろう?」



「ええ……まあ。あまり心地の良い二つ名とは言えませんね。」



「だろう?そしてその『闘争の支配者』こそ、フレーリア・ミルアネド。」

「つまり私だ」


「……っ!? 初耳でした」

(私は……とんでもないお方の専属メイドとなってしまったのかもしれませんね。)


「だからそう心配してくれるな。きっと、アイツらもまとめてこの地球を救ってみせるさ」


「フレー、リア…様……!!」



(いえ、訂正しましょう。私は……とんでもなく慈悲深く、優しく、強いお方の直属のメイドになれたのです。)


「ゲルダイド家は自らが名主となることを望み、今も権力に目を光らせていますが……。メイドも捨てたものじゃないですね!」


ボソッと誰にも聞こえないほどの声で呟く。


「そうだろう? ま、私のメイドなら当然だな」

「え!? き、聞こえていらしたのですか!?」

「いいや、何も」

「しらばっくれないないでくださいよ!!」



この光景を見れば誰の目にも親友や仲のいい姉妹のように映るだろう。

今だけは。

まだ幸せを噛み締めて、少しでも長い平和を願おう。

いかがでしょうか!

次回からは偽名での登場が増えますので是非、名前を覚えて帰ってください!


……前回も言いましたがやはりこれ、ローファンタジーですよね?

ということでタグの差し替えをしますm(_ _)m

このポンコツ作者の良都に作品完結までしばしお付き合い願います٩( ᐛ )و

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