表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/8

☆第四夜「化学博士のうたた寝」

 おっと、こりゃいかん。実験の最中に寝てしもうた。

 徹夜続きで寝不足気味じゃった。

 そろそろ薬ができているころじゃな。

 ……ん、ここはどこじゃ? 目の前に道が続いておる。

 

 そうじゃ、これは、研究所を出て街へ向かう道じゃ。

 ん? 今まで気がつかんかったが、三つの矢印がついた道しるべが立っておる。

なになに?

「ベニクラゲはあっち」

「シチメンチョウはこっち」

「タツノオトシゴはこっち」


 こ、これは、いずれもわしが開発した薬ではないか。

 どの薬を世に出していいものか、悩んでおったところじゃ。

 わしは、それぞれの動物の不思議な力を研究して薬にしてしもうた。


 ベニクラゲは、危険な目にあって死にそうなると、また生まれ変われる薬に。

 シチメンチョウは、男が関わらんでも、女性だけで子どもを授かれる薬に。

 タツノオトシゴは、女性に代わって、男が妊娠・出産してくれる薬に。


 はてさて、どれを世に出していいものやら……


 おや? いつの間にやら、子豚がおって、道しるべを眺めておるぞ。


「そこの子豚どの。これはいったいどういうことじゃ?」


「今晩は。ここは博士の夢の中です。ぼくは、えらぶー。迷っている人とお話するのが、ぼくの役目です」


「ほう。……おお、そうじゃった、わしは三つの薬のどれを世に出そうかと迷っておるのだが、君が決めてくれるんかの?」


「いいえ、ぼくは決めません」

「そうじゃろうな……でも、わし一人では、とても決められはせん」

「そうでしょうか? 」

「そりゃそうじゃろ。どれも今までの常識を変えてしまいそうじゃし、何か不都合がないとも限らん」 

「そうですか。じゃあ、目をつぶってみてください」

「えーと、こうじゃな?」

「そうです。で、頭の中に何か浮かびましたか?」


 わしが思い浮かべたのは、白衣姿の娘じゃ。

あの子は、わしと同じ研究の道を進み、寝る間も惜しんで仕事に明け暮れておる。


「じゃあ、決まりましたね」

「おいおい、いったいどういうことじゃ?」

「じゃあ、おやすみなさい」

「おいおい、待たんか」


 おや、ここは?

 いかんいかん、本当に実験の最中に寝てしまっておった。

 子豚どのは……そうじゃ、あれは夢じゃったな。

 うーむ……なんだかまた眠くなってきたぞ……


 ここは、また夢の中か?

 おや、そこで実験しておるのは娘ではないか。子どもを授かったと聞いておったが、無理はしておらんかの?

 ドアが開いて、若い男が入って来おった。おお、あれは婿どのではないか。

 なになに? 昼の弁当を届けに来たと。できた婿じゃ。

 おや、娘は弁当を受け取って、婿殿の膨らんだお腹をさすっておるぞ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ