☆第三夜「午睡(おひるね)」
おふとんに入ってねていたはずなのに、
ぼくはパジャマのまま、
いつものさんぽ道にたっている。
まわりは、夕がたみたいにくらくて、すこしこわい。おうちにかえりたい。
ぼくの目のまえには、矢じるしのついた道しるべが立っていて、こう書いてある。
「パパはこっち」
「ママはあっち」
パパとママがが、ずっとけんかしている。
もう、いっしょにいられないんだって。
あんなになかよしだったのに。
あゆむ、いっしょにいようね、とママがいう。
あゆむ、いっしょにうこうね、とパパがいう。
あれ? いつのまにか、道しるべのよこに、ぶたさんがいる。
ぶたさんにきいた。
「ねえ、ここはどこ? きみはだれ?」
「こんばんは。ここはあゆむ君の夢の中だよ。ぼくは、えらぶー。迷っている子とお話するのが、ぼくの役目」
「そうなんだ。じゃあ、ぼくがまよっていること、えらぶーが決めてくれるの?」
「ううん、決めないよ」
「ええ! ぼくひとりじゃ、きめられないよ」
「そうかな? あゆむ君はどっちがいい?」
「どっちも、やだ」
「そう。じゃあ、目をつぶってごらん」
「んーと、こうかな?」
「そうそう。で、頭の中に何かうかんだ?」
あかちゃんのころをおもいだした。
えーんえーんとなくと、パパもママも、しんぱいそうに、でもうれしそうに、ぼくのかおをのぞきこんではなしかけてくれたんだ。どうしたの? おなかがすいたの? って。
「じゃあ、決まったね」
えらぶーがぼくのあたまをトントンしながら言った。
「え、どういうこと?」
「もっとワガママでもいいんだよ。おやすみ」
「まって! こんなところじゃ、ねむれないよ」
きがついたら、おふとんのなかにいる。
あれ、ぼくねてたの? いまのはゆめ?
えらぶーは、どこにもいない。
しかたがないから、おふとんにはいって、めをつぶった。
ゆめのなかで、
パパがいう。
「パパといっしょに行こう」
ママがいう。
「いっしょにここにいようね」
ぼくは、ないた。
「やだやだやだ。ぼくはパパといっしょ。ママともいっしょ」
えーん、えーん、えーん、えーん、えーん、えーん、
「ぜったいに、はなれない。ママとパパ、はなさない!」
えーん、えーん、えーん、えーん、えーん、えーん、えーん、
いっしょうけんめい、がんばって、ないた。
パパとママは、しんぱいそうに、でもすこし、わらいながら、ぼくのかおをのぞきこんで、なにかはなしかけてくれた。




