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その3 意地悪が過ぎる師匠

 今回も舞台は異世界です。

 弟子の性別は特に決めてませんので、お好きな方で捉えてください。年齢はまだ7歳以下かなって思ってます。


 前半に、ざっくりとしたキャラ設定や、このシーンに辿り着くまでのストーリーが書いてあります。気が向いたら読んでくださると、より理解が深まって楽しめると思います。

弟子:両親が師匠の親友で、暴走しがちな師匠のストッパーをしていた。

 4歳で両親を亡くして(戦争系のどうしようもないやつ。師匠は別行動で助けられなかった)師匠に引き取られた。

 名前で呼ばれるのが好きだから、師匠が「私の弟子はお前一人なんだから、『弟子』で十分だろう」と言って呼んでくれないのが不満。

 両親が亡くなった瞬間がトラウマで、懐に入れた人が(物理的にも精神的にも)離れることが怖くなってしまっている。



師匠:「探究心に従ってこその『魔法』使いだ!」とか言って親しい(と一方的に思っている)人にめちゃくちゃイタズラする。一日だけ性別や外見を変えるような比較的可愛いものから、自然界の蠱毒のど真ん中にぶち込む(長年の友人で、人類最強と名高い剣豪が対象)ような過激なものまで、バリエーションが豊富。

 得意なのは転移とかの空間系。あと、魔法薬作るのも大好き(得意とは言ってない)。探究心が全てを台無しにする。

 自らを『魔法馬鹿』、剣豪を『剣術馬鹿』、幼なじみでもある親友を『親切馬鹿』と呼び、周囲から親しみを込めて『三馬鹿』と呼ばれた。

 親友が亡くなってからは『馬鹿ツインズ』で、剣豪だけはその呼称に否定的。「あの非常識とセットにするな」との事。




シチュエーション

 長編なら中盤で立ちはだかる系の強さを持った敵へ、全力で自己犠牲を匂わせるフラグ発言をして師匠が特攻した。

 何も出来ずに見ているだけの自分を歯痒く思った弟子がこれから急成長することを予想させるような展開と戦闘を経て、流れ弾から庇われるシーンも通って、師匠が辛勝した直後のやり取り。






ーーーーー






「しっ、ししょ、ぅぅう゛う゛!!」


「お、っと!おいおい弟子、重いよ。ちょっと離れてくれないか。私が肉体派の対局に位置することくらい知っているだろう?」


 突進してきた弟子をふらつく体で受け止め、砂埃にまみれてしまったローブに擦り付けられる頭を撫でる。

 今の私は砂埃まみれだぞ、と言っても首を横に振るばかりで言うことを聞こうとしない。引き剥がそうとすると泣き声が大きくなって、余計に強くしがみつかれてしまった。しかし、抱き上げるから手を離してくれ、と言うと、先程までの抵抗が嘘のようにあっさりと身を任せてくる。


「まったく、困った子だ」


 自分でも驚くくらいに呆れを感じさせない声色でそう言って、戦闘の余波を被った弟子ごと清浄化の魔法をかける。


「……っと、さすがの私でも、そろそろ限界だな」


 途端、久々の倦怠感と頭痛、吐き気が一気に襲ってきてたたらを踏んでしまった。腕の中にいる弟子が、今にも涙がこぼれそうな瞳で心配そうにこちらを見ている。


「ただの魔力切れだよ。残量からして死ぬことはまず無いし、後2時間もすれば転移で帰れるから安心するといい」


「死な、なくてっ、も、辛い?」


 泣きすぎてしゃっくりが止まらないらしい弟子が、途切れ途切れに聞いてくる。やっぱりこの子は、あの二人の子供なんだな。


「いーや、大丈夫だよ。私はそもそもの魔力量も、魔力の総量に比例するように回復量も多い。だからこそ、あまり魔力切れに慣れていないだけだ。心配かけたな」


 目線と同じ高さまで抱き上げた弟子の頭を、もう一度撫でる。毎日私が手入れしているだけあって、弟子の髪は撫で心地が良い。


「ししょ……」


 心地良さげに目を細める弟子は眠そうで、そういえば昼寝をさせていなかったな、と思い至る。


「私の魔力が回復するまで、一緒に昼寝でもするか?」


「んぅ」


 首が、かっくんと縦に振られた。

 そしてそのまま、安心しきった弟子の寝息が聞こえ始める。


 『一緒に』と言ったが、ここは弱かろうと魔物の出る森の入口だ。私まで寝てしまって忘れ形見の弟子に何かあってはいけないから、あくまでできるのは寝たフリまで。


 魔力が足りなくて何も出来ないが、こうやって信頼の全幅を置くように腕の中で昼寝なんてされると、……悪戯心がうずうずする、と言うか………。

 ………よし、やろう。我慢なんて柄に合わんからな。



 まず、弟子を私の着ていたローブで包んで、起こさないように地面に下ろす。後はただ、弟子から見えないような場所に身を潜めるだけだな。魔法職だが、戦闘経験も多いし逃げ足くらいなら鍛えているから、木に登る程度なら楽勝なのだよ。

 魔法の痕跡も無く私が消えたとなったら、どれだけ弟子が慌てふためくのか見ものだな。良い親離れの練習になることだろうよ。





ーーーーー






「ぅ……むぅ、ししょ………。っ、師匠!?」


 ローブの中で寝ぼけながらも手を動かしたらしい弟子は、動かした手が空振ったので私の不在に気付いたらしい。笑えるくらいの典型的な焦り方で、忙しなく辺りを見回している。


「師匠、ししょぉ……」


 ふむ、こうも儚げな声で呼ばれると嗜虐心が刺激されるな。

 「私が居なくなった時はなるべくその場から動くな」という言いつけを破った瞬間に叱ってやろう。後は、泣き始めても降りてやるか。

 「あまり泣かせてやるな」と、預かる時に言われてしまったからな。1日に2回は泣かせすぎだろう。

 それに、泣き声に誘われて魔物が出ても面倒だ。せっかくそろそろ2人で転移できる分の魔力が溜まりそうだというのに、魔物を追い払うとなると更に四半時は待たないといけなくなる。そんな暇があるならせめて薬草でも擦っていたい。しかし、家に帰らねば器具が揃っていない。ああ、ジレンマよ。


「師匠、師匠…酷いです、ひどすぎます師匠……」


 早くも目に涙が溜まっているな。泣くのも時間の問題か。……まあ、これだけ見られれば満足と言えよう。そろそろ降りて……


「師匠、捨てないで……」


 うん?


「置いてかないで、ししょお……っひとりやだぁ………。もうわがままいわないからっ、なまえよんでっていわないからぁ……!」


 これは………うぅむ。


「ししょう、ししょっ、…おと、さっ………!!」



「おい弟子、お前の父親は1人だけだと言っているだろう。私をお父さんと呼ぶんじゃない」


 咄嗟に声をかけて、木の上から降りる。


「……置いて行きやしないさ。お前の両親から頼まれて面倒を見てるんだから。なんて言ったって、最上位の誓約魔法さえ交わされたんだ。破ったら私もただでは済まんよ」


 腕を組み、弟子と視線を合わせるようにしゃがんでそう言ってやる。


「ほら、転移できるだけの魔力も溜まったから、そろそろ帰ろう。な?」


 片手を握らせるために差し出すが、涙を拭うのに必死な弟子は一向にこちらを見ようともしない。


「っぐぅ、ぇっぐ、ふっ……ぅぅ゛……」


 肩を震わせてしゃくり上げる弟子を見ていると……訳も分からず胸がざわついた。


「……ごめんな、やりすぎた私が悪かったよ。もう1人にはしてやらないから、だからもう泣き止め」


 剣術馬鹿やっていたのを真似て、弟子を縦抱きにする。ひしとしがみつかれるのが妙にこそばゆくて普段抱き上げようとは思わないが、今回だけは何故かそうしたくなった。


「ししょっ…………ぉ、とさっん!」


「だから私は父親じゃない……ああもう、今日だけだぞ、エイダン」


 今日だけ、今だけは、親友の代わりに父と呼ばれることを許容してやろう。

 背中をトントンと叩いてやりながら、諦めも含んだ笑みで腕の中のエイダンを見る。


「……くっ、はははっ!なんだその間抜け面。そんなに名前呼ばれたのが衝撃だったのか?」


 涙で潤んだ瞳を零れ落ちんばかりに見開いて、涎の垂れた口をパカッと開けている様は『間抜け面』以上の何ものでもなく、思わず純粋に笑ってしまった。


「いま、いまっ……!」


「お、おい?また泣くのか?笑ったのが悪かったのか?ちょっ、えっ、……一回帰るぞ!?」


 さすがに1日3回は泣かせすぎだ。これだとあの世で親友に怒られる……ってか、周到な事に「あまり泣かせてやるな」も誓約魔法に含んであるから、何らかの罰則が発生してしまう。前に3回泣かせた時は本当に酷い目に遭った。死にはしないだろうが、何が起こるか分からない以上はこの魔物の出る森の入口でずっと騒いでいるわけにもいかなかった。




 以下、個人的に出したくて仕方なかった剣術馬鹿と師匠の絡みです。

 単品に時系列も何も無いですが、一応本文より前の、弟子を引き取ってから半年以内に交わされた会話を想定してます。この時弟子は別室でお昼寝中です。

 幼児の猫耳尻尾と猫言葉とか絶対可愛いだろって思いで魔法薬作ってた師匠と、休日に鍛錬以外やることが無くて師匠の部屋に入り浸る剣術馬鹿(強面)をどうぞご堪能ください。



剣術馬鹿(以下剣)「……やはり納得いかん」

師匠(以下魔)「なにがー?」(薬の鍋混ぜながら)

剣「エイダンが貴様のような人間に預けられた事だ。絶対に私の方がエイダンの教育に良いだろうに」

魔「失礼だなー」(薬瓶に完成した薬を入れる)

剣「貴様に常識と良識が欠けているのは事実だろう」

魔「お前だって喧嘩っ早いし脳筋だし、私のがまだ平和そうだからじゃねーの?」(薬瓶に蓋をする)

剣「なっ!?貴様の魔法薬実験や悪戯癖の方がよっぽど危険だろう!!この前だって私に語尾が『でちゅ』になる魔法薬とかいうふざけた物を盛った癖に!!」

魔「いやあ、あれは見ものだったよなぁ!厳つい面に似合わないのなんのって!」

剣「っ殺す!!」(片手剣を抜刀する)

魔「うおっ?!そっそういう所だぞ剣術馬鹿が!!」(完成した薬瓶片手に避ける)

剣「貴様が煽ったのが悪い!!!」(空振った片手剣が魔の持っていた薬瓶にぶつかって、中の薬品が剣にかかる)

魔「あっ!!弟子に使ってやろうと思ってたのに……っやばい!」

剣「こっ今度はにゃんにゃっ(なんだっ)!?」

魔「しーらねっ!!!」(転移発動)

剣「い、嫌にゃ予感がする……」(備え付けの鏡を覗く)

剣「フギャーーーッ!!!」(猫耳&尻尾の生えた自分を見て発狂)



 ありがとうございました。

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