出逢いは億千万の胸騒ぎ7
ぎすぎすしたおブ子様と生徒会長の応酬という、一般人がついてけない劇場の幕が上がったようなので、自分の任務は終わりかなと気楽な見学をさせてもらっていたら、なんでか紫劉がこちらに矛先を向けてきた。
「ところで、天堂 勇麒君。僕には関係ありません、みたいな顔してるけと、このままだと世界は崩壊するからね」
「は?」
何言ってんだろ。
この人、この見た目でハイスペックな高校生やってるのに中二病とか、痛々しすぎる。
「こらこら、言いたいことはわかるけど、その目はやめなさい。まあ、詳しいことは省くとして、君みたいのでも、りんごちゃんに手を貸す人間ができるのは、僕として困るわけ」
爽やかすぎて胡散臭い愛想を振りまく紫劉は、ここで中々の提案をしてきた。
「というわけで、勇麒君。君、生徒会に入らない?」
「なぜに??」
「生徒会に入ったら、内申に有利だよ」
「うわ、びっくり。めっちゃ、普通の誘い文句」
「仕事もそんなにないし、自信がないなら、名前だけでもいいよ」
「あのー、会長さん。さすがに、そんな怪しすぎる勧誘に引っかかるほどポンコツなつもりはないんですけど」
「あ、そう? じゃあ、手を変えてみよう」
パチンと格好をつけて指を鳴らしたと思ったら、ハーレムシスターズの面々が苦情を訴えだした。
「私は嫌よ。風紀を乱すような真似は」
「あらあら、困りましたわね……」
「キャラに反する業務はしない」
ツンツン麗美に聖母桜子とロリっ子るるタンが続く中、セクシー胡桃だけはパンパンと手を叩いて打ち切った。
「契約は絶対です。犯罪に引っかからない程度のグレーゾーンには従ってください。それとも、自信がないから言い訳しているだけかしら」
「そんなわけないじゃない。私が本気出したら、あんたなんか、お呼びじゃないんだから」
そんな流れで、何が始まるのかなーって見学してたら、先頭で寄ってきた麗美さんが肩にいるりんごさんを近くの棚に移動させた。
と思ったら、空いた肩に右手、左手と乗せてきた。
え、近っ!
しかも、反対側の肩にはセクシー胡桃が同じように迫ってきて、びびって動揺する真正面には優しく頭をなでてくる聖母な微笑みの桜子がいた。
あわあわと、プチっとどころじゃないパニックの最中に制服の裾を引っ張られた気がして後ろを向いたら、ロリっ子るるタンが上目遣いで甘えてきていた。
「ええ??」
わかんない、意味わかんないから。
大混乱の間にも胡桃が頬とか耳とかを弄んでくれて、麗美が負けじと対抗して仕掛けてくる。
目の前には慈愛溢れる桜子に、背後にはつんつんと制服を引っ張ってくるるるタンが揃い踏み。
なんだこれ、ナンダコレ。
「ねえ、勇麒君。君が生徒会に入ってくれたら、俺達とこんなに楽しい活動が待っているんだよ」
「○X☆▽!?」
そんなの、お年玉とお盆玉とクリスマスプレゼントにそっと誕生日プレゼントを添えてもらえるみたいなミラクルじゃないか。
「嬉しそうだねー。じゃあ、もう一推し。君が望むのなら、もう少しタイプの違う可愛い役員を増やしてあげてみてもいいよ」
「♯♭♪∮!!」
「うんうん。効果が絶大すぎて会話にならないみたいだけど、引き抜きは成功したって思ってもよさそうだね」
「んなわけないでしょ。言葉になってないんだから、意思なんて確認しようがないじゃない!」
「ええー。確かに、りんごちゃんの意見は一理あるけど、あの顔を見ても同じことが言える?」
「くっ、人類の限界を越えて、にやけきってるんじゃないわよ。ちょっと、ワンコロ、天堂 勇麒! 可愛い彼女がほしかったんじゃなかったの! しっかりしないよ!!」
「ははは、何を言っても無駄だよ。いつか現れるかもしれない未だ見ぬメロンより、今、目の前にはある桃に食いつかない男はいないよ。第一、ハーレムには世界最強で最高の男の幸せが詰まっているんだから」
「いや、そいつは違うな生徒会長」
「何?」
突然、言語を思い出した俺に驚いているようだけれど、こればっかりは仕方ない。
ゴートゥーへぶんから目を覚ますほど認められない発言を聞いてしまったのだから。