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空から落ちてきたら、それは運命だ!  作者: 逢坂よしてる
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出逢いは億千万の胸騒ぎ6


はあー、なんだろう。

いろんなタイプのおねいさん達が俺に笑いかけてくれるとか、幸せドーパミンがどばどば出血大サービスすぎて、今にも天に召されてしまいそう……はっ、そうか。

ここはとっくに天国なのか。


「いや、違うね。普通に生徒会室だから。しかも、君、心の声がもれなく漏れてるよ」


いつの間にやら立派な生徒会長席に着席している生徒会長が、俺の天国を全否定してくださった。


「むむ、ちょこざいな。これが噂に聞く精神攻撃とやらか!」


「どこの噂か知らないけど、仕掛けてない、仕掛けてない。あえて言うなら、その辺に転がり落ちているロープとじゃれあって、勝手に絡まりまくったせいで身動き取れなくなってるだけだね」


「ぐ、くうぅ……」


絶妙にドンピシャなたとえ話をするのは、やめていただきたい。

これだから、頭がよさそうな野郎は嫌いなんだ。


「それで、わざわざ校内放送まで使って、ここまで俺を呼び出した用件はなんなんですか」


話題を変えたくて、ぶすっと言ってやったら、なんでか、生徒会長はためらいを見せながら口を開いた。


「それがね、昼休み以降に複数の生徒、特に一年の女子から、ピンクのぬいぐるみを持ち歩いているキモい男子がいるから、一刻も早くなんとかしてほしいって苦情が俺の連絡網に殺到しちゃってね。さすがに、生徒会長としては放っておくわけにもいかなくて、ひとまず、話を聞いてみようかと呼び出させてもらったんだ」


「ひょ?」


思ってもみなかった理由に変な声が出た。

まさか、まさかの、りんごさんの事情に関連してなかった挙げ句に、キモい男子という自覚はあっても他人様に言葉にされると威力抜群なパワーワードにクラクラしてくる。

だからって、よせばいいのに、俺ってば何を血迷ったのか、ハーレムシスターズの一角に視線を泳がせちゃったもんだから、そりゃもう、瞬間湯沸し器も真っ青のスピードで全身真っ赤になっちゃうよね。

麗しのおねいさん達の絶大なる憐れみと可哀想な子感が漂う視線を一心に集めちゃった日には、同情するなら愛をくれって叫びたくもなるってものだ。

うぅ、どうしよう、涙が出ちゃう。

だって、男の子だもん。

ぐすん。


なんて脳内でセルフちゃかしをしてみたって、オイラの柔々な男心は傷口ぱっくりいっちゃってるし、ここは超絶アウェイで夢も希望もありゃしない。

もうね、できることといったら、顔を隠して生まれたての小鹿みたいにプルプル震えていることくらいですよ。


「?」


そんな俺に、ポンと労るような優しさを腕に感じて顔を上げたら、小脇に抱えて運んできたりんごさんが天使のスマイルで「大丈夫よ」と頼もしげに励ましてくれた。

え、嘘。

こんなんされたら、惚れてまうじゃないですか!


すっかり乙女チックモードで救世主にときめいていたら、勇敢なるりんごさんは俺の肩に移動するなり、勇者の如く威風堂々立ち上がった。


「ふっ、ここで会ったが百年目。地獄のバイトリーダー、色欲の紫劉。私から奪ったものを返してもらうわ!」


……うわお、ツッコミどころが満載だ。

おかけで、勇麒君は若干の冷静さを取り戻しましたよ。


「なんだい、藪から棒に。ああ、もしかしてだけど、これのことだったりする?」


ここで生徒会長がブレザーの内ポケットから取り出したのは、ツルッとしたぺらいカード


「クオカード?」


思わずつぶやいたら、紫劉は目敏く拾って訂正を入れてきた。


「いいや、これはテレカだ」


テレカ。

確か、略さないとテレホンカード。

聞いたことはある。


「俺、初めて生で見たかも」


冴えない取り柄ない目立たないの三ない学生だけども、スマホくらいは持たせてもらってるから、絶滅危惧種は珍しくて仕方ない。

よく見たら、ぽちっと小さく穴が開いているので、一回は使ってるっぽい。

そういや、公衆電話も使ったことないかもな。


「それは私のよ! 私が、とっておきの時に使おうと、大事に大事にとっておいたのに無理やり奪っただけでなく、身勝手に穴まで開けちゃうなんて、絶対の絶対に許さないんだから!!」


びしっと短い腕を突きつけて怒れるりんごさんの言い分に、そういうことかと納得しながらも、響きだけ聞くと、むしろ誤解は正しかったんじゃなかろうかという気がしないでもない。


「仕方ないだろう。せっかく、地獄のバイトリーダーになったんだし、神様に宣戦布告くらいは、しときたいじゃないか」


「そんなもの、わざわざ宣言されなくったって、とっくの昔に天界の敵認定されてるわよ」


「やだなぁ。俺が参戦するってことを宣告しておきたかったんだよ。ちゃんと、覚悟しときなねって」


「ふん。リーダーっつっても、あくまでバイトでしょ。あんたに何が出来るって言うのよ」


「未知数だって言いきっておきたいところだけれど、とりあえず、貴重なテレカを横取りするくらいのことはできるみたいだよ」


「くっ。あんた、顔に似合わず性格悪いわね」


「ありがとう。自分でもいい性格だと気に入ってるんだ」

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