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空から落ちてきたら、それは運命だ!  作者: 逢坂よしてる
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出逢いは億千万の胸騒ぎ4


「ふいー、ごちそうさまでした」


すっかり空っぽになったお弁当箱をハンカチに包んで、ラブリーエンジェルりんごさんに「じゃ、また後で」と挨拶したら怒られた。

なんでやねん。


「ちょっと、どういうつもりよ、ワンコロ」


「どうするも、こうするも、授業を受けるだけですが」


「じゃなくて、私を置いていってどうするのって言ってんの」


「ん? 放課後まで、どこかに隠れてるとか、異次元空間に身を潜ませとく、みたいな感じじゃないの」


「んなことできるなら、もっとマシな協力者を厳選してるわよ」


「しどい、りんごさん、容赦なし! 俺、泣くよ!!」


「逆に聞くけど、ワンコロが私の立場だったら、好き好んで自分を選ぶわけ?」


「……はい、ごめんなさい。選ばないですね」


「わかったのなら、放課後まで私を匿いなさい」


ああ、世の中は無情すぎる。


そういう流れで、おブ子様を保護することになったのはいいけど、ピンクのダイナマイトボディーは悪目立ちしすぎる上にがさばるサイズだった。


「この辺の、見つからなさそうな隙間で待機してもらったら駄目なわけ?」


「いやよ。変な男にナンパされたらどうしてくれんの」


「……」


うん。

さすがに学習しましたよ、うっかり勇麒君でも。

今は、お口にチャックする場面だと。

しっかし、どうしたもんかなーと空々の脳みそを捻っていたら、業を煮やしたりんごさんがよじよじと頭に上って落ち着いた。


「これでよし」


「いや、どこが!? どこがよしなの??」


思いっきりつっこんだら、ちょっぴり不機嫌オーラを醸し出しながらも肩まで下りてきた。


「今度こそ、よし。ハイドー、ワンコロ」


「いやいやいや、よしでもハイドーでもないからね。ワールドワイドに大人気な電気ねずみさんじゃないんだから、君に決めたとか言わないからね」


「何よ。とんだ、わがまま坊やね」


再び、よじよじと移動を始めたと思ったら、お次はブレザーの懐に入り込まれた。


「ちょっとぉ!? そこが一番ないからね! ぴちぴちレザーで決め込んだお姉様ライダーでもないのにインされたって、誰の特にもならないからね」


慌てて両手で掴んで引き抜いた。


「何よ。あれも駄目、これも駄目って、一体、どこなら許すのよ」


確かに、なんでも反対は芸がないですよ。

代案もないのにワーワー文句をつけるのは野党さんの特権ですけど。

っていうか、動くぬいぐるみには嗅覚が装備されてないんでしょうか。

お年頃の男の子としては自分臭が気になって仕方ないこの頃なんで、これ以上、体のどっかを移動されるのは堪ったものじゃないんですけど。

なので、このまま、恭しく寸胴を持ち上げた姿勢で教室まで移動することにした。


「ちょっと、あれ見て」


「趣味なんじゃね。これみよがしに持ってるし」


「見ちゃ駄目だって。あれは絶対、関わったらヤバイから」


くうっ。

これしか道がなかったとはいえ、地道に積み重ねてきた、地味だけど案外いい人ポジションが小気味よく崩れていく音が悲惨すぎる。

なんで、ドピンクでブタさんなんだよ、こんちくしょーが。

なのに、肝心のエンジェル様が「そうでしょ、そうでしょ、私は可愛いのよ」と言わんばかりに無用の注目をドヤっているのが伝わってくるのが憎たらしいやら、苛つくやら。

このまま、キュキュっと絞めたろか! と殺意が湧くのは仕方のないことだ。

ま、色々と怖いので、やらないけども。


さて。

満心創痍でも教室に着いたのはよかったんだけど、ここに来ても存在感問題は変わらず継続なのは当然のこと。

ここまで散々な視線に晒されたわけだから、何を置いても隠す方向に動く心理も当然のことだ。

でもって、机の左右に引っかけてあるカバンが有力な候補先なわけだけど、左にあるジャージ用のナップザックが形的に適当かなとは思うのだけど、本日は着用済みなので却下した。

となると、自動的に右側の学生カバンに決定なので、空のお弁当と一緒に仕舞われてもらおう。


一度、机の上に置いて、お弁当袋に続いてピンクのボディーに手をかけて、おやっと思った。

なんだか抵抗力が働いてるような……と感じたら、おブ子様がめっちゃ踏ん張ってた。

それはもう、全身のピンクが濃くなるんじゃないかと心配になるくらい、必死に駄々を捏ねていた。


こうなったら、俺にできることなんてないですよね、と早々に諦めて、せめてもの対抗策で机の端っこに寄せて黒板側に向けて座らせておくだけだ。

それから、何事もなかったかのように授業の用意をする。

こう見えても、長いものには巻かれ慣れているのだ。

え、そうとしか見えない?

おかしいな。

ともかく、俺は、隣の席の女子を始めとした「何コイツ、やばー」と言わんばかりの冷ややかで排他的視線を独り占めにしてやったぜ。

おまけに、午後一授業で、歯に衣着せぬストレートな物言いで評判の英語教師から、物言いたげな視線を釘付けにした挙げ句に目を逸らされるという大した偉業も達成してやったんだぜ。

ワイルドだろう?

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