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レストレーション  作者: nim
一章  差し込む光
1/9

プロローグ 第一話 いつもの日常

短編小説、夏の日の思い出の続編


「今日はこのくらいかなー」


それにしても今年は暑い


例年よりも、雨もほとんど降らず

道端の草木も雨が待ち遠しいように見える


6月だと言うのに、青々と緑色が茂った山の上には、夏の気配の雲たちが朝日に照らされて輝いて見えた



早起きは三文の徳と言うけど、朝から暑さで、つなぎの中は汗だく

後ろで結った髪も首筋に張り付いて気持ち悪い


徳ではなく、このままじゃ毒だ・・


「暑い・・ もうだめ・・ はぁ・・

これだけやって(うち)戻るかな・・

学校の時間もあるし・・」


まぁ、これだけと言っても朝やるには中々の労働をしている


それは、車を(いじ)る事

お父さんとお兄ちゃんの影響で、幼い時から自然に車が好きになった私

まぁ、労働と言うよりは趣味なのだが

それでもまだ慣れない私には、車弄りは大変な労働だ



中学1年生の時、お父さんの会社にずっと置いてあった不動車(壊れて動かない車)

【ラパン】をお父さんとお兄ちゃんに教えてもらいながら弄っている


弄ると言っても、電球やホルダーを付けるような簡単な弄り方じゃない

いわゆる【レストア】と言う本格的なものだ


外せる部品は全て外す

ドア、ボンネット、エンジンにトランスミッション、内装、もちろん足廻りも全部だ

それらを修理して組み立てる


良さそうな部品は使う予定だから、コツコツと外していった外装パーツも、もちろん直して使う予定


今日早起きした分で、ようやく全部の使える外装にパテ盛りを終えようとしているわけだが、本職からみたらまだまだひよっこ

なにせ私は、巷で言う所のJKなのだ

教わっていると言っても腕前は現場の人達には到底敵わない


「パテ盛り完了!はぁ 疲れたぁ

体力も付いてきたんだけどなあ〜・・ 

女子には結構しんどい・・」


ふぅ と疲れを吐き出し、外したボンネットに掛けておいたタオルで汗で濡れた顔を拭う


慣れた手付きで使った道具を簡単に片付け、私は髪を拭きながら、裏手にある自宅に向かった






浴室で汗を流し終え、洗面所で体を拭くと、お気に入りの下着を身に着け

いつもの高校の制服に着替え始める

ブラウスのボタンを留めようと手に掛けたところで、鏡に映った吊り目がちで、大きな目をした自分と目が合った


肩まで掛かる髪の下

消して大きいとは言えない胸の間に一筋の傷痕・・・


私の【トラウマ(心の傷)】・・・



ぼんやりと傷を見つめる自分の目線を感じ、ふと我に返る


いつもは気にならないんだけどなぁ

駄目な私が出ちゃうからやめやめ!


私は素早く着替えを済ませ、髪を整えると、もう一度鏡の前でニコッと笑顔をする


「今日も笑顔!忘れずに、忘れずに!」


なかなか一人じゃこんな事しないだろ・・ と自分でも思うけど、これをすると1日元気な私になれる気がするのだ!


いつものルーティンを済ませて、制服のネクタイを少し緩めると、私はクルッと鏡に背を向けリビングに移動した


廊下に出ると、朝ごはんのいい匂いが鼻をかすめる

そそる食欲を抑えつつ、リビングのドアを開けた


「おはよー渚 今日も日課は終わったのかな?」


朝食を作っているお母さんがいつもの言葉で私に聞く、私もいつもの調子でで言葉を返す


「おはよ!自分で決めた事だからね!大変だけど続けるよ!」


そう言って私はダイニングテーブルをそのまま通り過ぎ、キッチンに移動して朝食の準備を手伝う


慣れた手付きで二人分の朝食をお母さんの横でお皿に盛り付け始めた


継続は力なりってね


ご飯、お味噌汁、目玉焼き、ウインナー、定番のメニューの盛り付けを終えて、カウンターに手際よく並べていく

最後に牛乳をカップに注いだタイミングで、お母さんがテーブルに朝食を運び出し始めた

私は牛乳を片手に、残りの朝食をテーブルに運び、お母さんと隣合わせで席についた


これが朝日家のいつもの日常


いつも男達は仕事で居ないのだ

と言っても裏の工場にいるのだが、小さい会社ながらも経営者は朝から忙しいらしい


(うち)自動車修理工場(アサヒモータース)を営んでいて

少ないながら従業員も働いてもらっていて工場をもり立ててもらっている


とは言っても、雑務の書類の整理や代車の確認、お客さんの車の修理の見積もり、従業員に気持ちよく働いてもらう為に工場の稼働の準備・・・

と、お父さんが前に話してた

他にも沢山やる事があるらしい

早く出ていくのも納得である


まぁ、お兄ちゃんは半ば強引に連れてかれてるんだけどね

跡継ぎは大変だ


お母さんも会社の事務で手伝いをしているけど、手伝いに出るのはお母さんが家事を片付けてからだ


「いただきま〜す」


私がウインナーに手を伸ばしご飯を一口食べたところで、お母さんが口を開く


「日課もいいけど無理はしないでね 身体丈夫になったのはいいけど、何事もほどほどだよ?」


そう言ってお母さんはお味噌汁をすすってひと息つくと、私の顔を覗き込む


「大丈夫!無理はしてないよ、病気はもう懲り懲りだし、車弄るのも体力づくりの一環だから!」


そう言って私はウインナーとご飯、目玉焼きの至福のトライアングルを堪能する


暫く食べていると、ふと胸の傷痕がついたあの日を思い出した


今日は傷繋がりでよく思い出す日だなぁ


お母さんは私の微妙な表情の変化に気付いたのか、私の頭を撫ではじめた


「あの時は、こんなに渚が元気になるなんてさ・・お母さんも思えなかったよ・・あの時はさすがの私も覚悟したもん」




そう、あの日

小学校1年生になって初めての夏


私は一度死にかけたんだ


原因は生まれ持った心臓の病気

あの頃は直ぐに息が切れて苦しくなって走るのさえままならなかった


友達も出来た事はあったけど、普通に遊べない事が判ると、みんな離れていった


だけど一人だけよく家に遊びに来る男の子がいたっけ?

次はどこに連れてってくれるのか、毎日ドキドキして待ってたのを覚えている


でも、突然別れが来たんだよね・・・

私と男の子で遊びに行った神社で倒れてそれっきり・・

確かその後、直ぐに長野に引っ越したんだっけ、さよならも言わずに・・・


それからは大変だったなぁ


大きな手術もしたし、知らない場所に慣れない人、孤独感も凄かった・・・

体力がなくてリハビリは地獄だったな


でも少しづつ元気になって、小学3年生に上がる頃には普通に学校も行けるようになった

けど、いじめられたんだよね、辛かったな

でも大事な友達も出来たし、前向きになれたのもあの頃だ


その時からかな?もっと体力を付けて色んな事を楽しんで元気に過ごそうって思い始めたのは


周りと同じ様に生活出来るようになったけど、やっぱり劣等感みたいのがあって・・

好きな事に打ち込むことで今日まで元気にやってきたんだ



「凄いね、渚は」


ニコッと微笑みながら頭をずっと撫でてるお母さん

こんな事、いつも言わないのに・・

今日はやっぱり何かありそう

それと、こんな事改めて言われるとちこそばっこいや・・


「普通に過ごせるって幸せだなって 人より早く気付いただけだよ

でも・・ありがとね」


私は、こそばっこいのを隠すように、残った朝食を一気に掻き込んで、牛乳を飲み干した


「ごちそうさま!さてと、片付け片付けっと」


そそくさと食器をキッチンに運び、洗い終えると、お母さんが中身を詰めてくれたお弁当をカバンに入れる


「じゃね、行ってくるよ お母さんも仕事頑張ってね」


いつもは言わない労いの言葉をお母さんに言うと、少し驚いた顔をされた


私が玄関に向かう所でお母さんは箸を止めて、見送りに来る


「行ってらっしゃい、気をつけてね」


とお母さんは笑顔で手を振る

いつもの光景・・安心する・・


普通の日常を過ごせる事に感謝しつつ、私は家を出て学校へ向かった

拙い文章を最後まで読んで頂きありがとう御座いました


初の長編小説で緊張と後悔??の今日このごろです

皆様の応援が励みになります!

応援よろしくお願いいたします

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