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二ページ目:小説を書くことを決意した日

 突然の話だが、アイデンティティーとは何か?

 それは己が己であることを証明する何か。言い方を変えると自身の持ち味だと思っている。

 では、俺のアイデンティティーは何なのか。VTuberになるにあたってふと頭に浮かんだ。

 かれこれ9年以上創作活動を続けている身だが、その中でも色々な活動を行ってきた。

 9年にも及ぶニコニコ生放送。

 地声ゲーム実況や文章を読ませるソフトを利用した朗読動画、TRPGリプレイ動画などの動画制作。

 一時期だが、数人の人が集まって声劇をしたこともあった。

 でも、やはり、俺が最も長く、活動を続けてきたのは小説だ。

 特に東方project二次創作の『東方楽曲伝』はニコニコ生放送と同様に9年間、投稿し続け、今もなお続いている。

 いや、本当に終わらないのです。終わろう、終わらせよう、終わってくれよとは思っているのですが、何故か終わらなくて困っています。多分、2021年には完結すると思うけど。



 閑話休題。



 では、VTuberになるにあたって俺が俺であることを証明できる何か。そして、俺の持ち味である――小説をどうにか活かせないか、と考えた。なお、これはVTuberになろうと決意した翌日のできごとである。

 だが、はっきり言って小説はライブ配信には全くと言っていいほど向いていないのだ。ニコ生をしながら小説を書くという生放送をしているが、碌に書けたものではない。ソースは何年も小説枠を取り続け、未だに数百文字しか書けない俺。もちろん、無言になればいくらでも書けるがそれはライブ配信と言っていいのだろうか? いや、違うだろう。

 なら、何か台本を書いて朗読する? うん、それはただの朗読会だ。小説を主にしているとは言えない。

 そもそもライブ配信は基本的に雑談やゲームなど、何かをしながらでもコメントに反応できるような内容が主流。

 それに対し、小説は構成、情景、言葉選び、前後の文章のバランスなど頭で考えることが多く、とてもではないが、雑談やコメントに反応しながら書くのは俺には無理だ。

 執筆系VTuberになるのは無謀だったか。いや、それでもどうにか小説を活かしたい。

「あ……」

 そして、思いついた。あまりにも唐突すぎて、自分でも拍子抜けしてしまうほどあっさりと。思いついたタイミングも『自分の車を駐車場に停めている最中』という他のことを考える暇がないような状態だった。

「そうだ、VTuber活動を小説に書こう」

 車から降りながら思いついたアイディアを口にする。

 VTuberになろうと思った日からVTuberデビューする日までの準備期間。更にデビューしてからの経験を全て記録に残す。それがVTuber活動で小説を活かす唯一の方法だと思った。

 もちろん、小説を活かすだけではない。ただでさえ、人を集めにくい個人勢なのだ。Twitterやライブ配信で宣伝してもチャンネル登録数は伸びないだろう。

 だが、VTuber活動を記した小説を自分が利用している小説投稿サイトに投稿すれば宣伝にもなる。打算的な考えだが、そうでもしなければ成り上がれない世界。まさに一石二鳥な考え。

 しかし、VTuber活動を小説化するには問題が一つ。

 それは許可(・・)である。

 VTuber活動を小説化するにあたって避けられないのはニコ生での描写だ。立ち絵を頼んだ友人もニコ生のリスナーさんだし、相方になるかもしれない最古参常連さんももちろん、リスナー。他にもVTuber活動に関して準備する様子もニコ生をしながらやるつもりだ。ならば、小説化すると必ずニコ生の描写を書くことになる。つまり、常連さんたちに小説にコメントを書いてもいいか許可を取る必要があるのだ。

(でも、常連と言っても来ない時もあるからなぁ)

 晩御飯を食べながらスマホをポチポチと弄り、SNSで常連さんたちのグループへメッセージを送る。




 ――突然ですが今日の生放送で大切な話があるから可能ならきてほしいです




 それから生放送を始めて常連さんが来るのを待っている間、雑談をしながらVTuberに関して調べる。そして、数分ぐらいで常連さんたちが集まり始めた。




 ――引退ですか?

 ――引退するの?




「いや、VTuberになるのになんで引退するのさ」

 ジャブの如く放り込まれるコメントを軽くあしらいながらVTuber活動を小説化することを説明する。

「生放送して話したこととか、自分の心情とか。ほぼノンフィクションの実体験を小説としていくつかの小説投稿サイトに投稿して、この小説の主人公である俺が読者さんたちに支えられながらどんな物語を紡ぐか見守るって企画――つまり、すでにあなたたちは小説の登場人物です! わかりますか? 実はもうあなたたちは小説に登場してます!」




 ――なるほどー

 ――主要人物になれる!




「そう、君たちは初期勢です! 俺のことをニコ生時代から知ってる人たちですね。それで、小説に書いてもいいか、聞きたかったんですよ」




 ――問題ないべ

 ――友の同人誌のネタにされる予定だからへーきへーき




「お、ありがとー。他の人もいい?」




 ――今まで完全に止まってて聞こえてなかった




「え、マジ? なら、もう一回説明するけど――」

 どうやら、この日、ニコ生の調子が悪く、数人ほど放送が見られなくなっていたらしく、改めてVTuber活動の小説化を説明する。

「――で、書いてもいい?」




 ――殆ど聞こえてないけど、Vの活動するにあたって今までのものをうんたらかんたらとは聞こえた




「それ、聞こえてないやつですね。なら、もう一回説明するよ?」

 ニコ生、本当に調子悪いなと思いながら3度目の説明をする。もうこの時点で何度も説明しているからか、説明もかなりおざなりになっていた。

「それで許可が欲しかったんだけど――」




 ――やっと戻ってこれた




「もおおおおおおおお!」

 この後、4度目の説明をして何とか許可を貰った。

 これが『俺のVTuber活動日誌』を書くことになったきっかけ。

 そして、VTuber活動二日目の出来事。

 しかし、実は二日目の出来事はまだ終わらない。

 では、どんな出来事があったのか、それは次回のお話で。



 それでは、皆様、また、次のお話でお会いしましょう。

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