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サイバーパンク・デモクラシー  作者: 六年生/六体 幽邃
3部 環境汚染「強欲」
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6章 脳


 6章 脳


 霊障は何故か元官庁街や古い場所、稀に個人の強烈な意志に反応して現れる。

 そして古ければ古い程、力を増す。


 個人の強烈な意思に反応して現れる霊障。

 これらは脳とコンピュータとの類似性が原因と言われている。


 ●


 旧官庁街程では無いが繁華街も霊障出現多発地域だ。

 人が多く、共通の思考に至りやすい事が原因だろうと言われている。

 

「脳とコンピューターが似ているという話を聞いた事は?」

「いや……」

 

 シーカーが男に話しかける。

 男は暴力団の組長だ。

 

 繁華街の暴力団事務所。

 霊障被害の報を聞きつけ、3人は現場にやってきた。

 

 既に被害者は4人。

 真っ先に対処しなければならない。


 事務所を覗き込むと標的が居る。

 何の変哲も無い中年男性のように見えるそれは間違いなく霊障だ。


「創造と計算。方向性は違うが、情報処理と脳内の回路が似ているという話でな」

「はぁ」


 組長が気の無い返事をする。

 

 シーカーがタブレットを操作しながら説明を続ける。

 するすると動く映像は脳とコンピューターの類似性と相違を説明する。

 

「ネットが重いとかあるだろ。大きなファイルは読み込みに時間がかかって、小さなファイルはすぐ見れる。

それと同じで年代が古い霊障は世界に現れるのが難しい。電子、回線、媒体が揃わないと現れない訳だ」

 

 で、とシーカーがタブレットの画面を皆に見せる。

 今回対処する霊障に関するデータだ。

 

 霊障対処課が今までに相対した霊障の特徴はデータ化され、課に纏められている。

 未確認、新発見でなければすぐに調べられる。

 

「この霊障、モブおじさんが何で現れたかって」

「ヒデェ名前だ」

「メス堕ちしたいとかさせたいとか踏みたいとか踏まれたいとか色んな願望が集まって霊障になり、

特に関係無いヤクザの事務所に現れた」

「迷惑な」

「そりゃ望んだ人間の所にちゃんと現れるなら俺らいらんだろ」

「おい、おい!」 

 

 3人の打ち合わせに組長が割り込んできた。

  

「それで、アレに対処できるのか!?」


 組長の取り乱し様にシーカーが呆れた顔をする。


「こういう広報や説明も大事なんだって。本人の願いが現れたとかいう風評被害がな」

「後で幾らでも聞くよ! 目先のケツの危機と4人のメス堕ちに何とも思わねぇのかお前ら!」 

「判った判った、ハンターよろしく」

「へぇい」


 シーカーの言葉にハンターが直刀を握る。

 事務所に突撃し刀を振るうと、目の前の霊障はあっさり消えた。


 ●


「ハンター、客だ。……もげろ」

「は?」


 事務所に戻り、来客が居ると案内された部屋に美女が居た。

 色香を振りまく女がフォックスと名乗る。


「人造霊障の資料持ってきたから教えて欲しい事があるんですけどぉ」

「何という目に見えたハニトラ」

「悔しい、判る事なら何でも話しちゃう」

「お前ら」 

 

 ブッチャーは2人を制してフォックスと向き合う。 

 警戒心を隠さず、質問をぶつける。

 

「電脳ドラッグや麻薬バーの組織の関係者ねぇ……。そんな奴が何でまた」

「あら、改心したとは思ってくれなくて?」

「全く」 

 

 アンタみたいなのは最大限警戒するようにしてる、とブッチャーの言葉に女は涼しい顔をしている。

 資料に一通り目を通したシーカーが顔を上げた。


「それで聞きたい事って?」

「霊障対処課って公務員なんでしょお? 何処の省庁の職員なのかしら」 

『……』

 

 フォックスの言葉に3人が何とも言えない顔を見合わせる。

 ハンターが首を傾げた。

 

「さぁ……?」

「さぁ!? アナタ方ちゃんとお給料は貰えてまして!?」

「財務省から……、委託業者経由で……」

「でも別に財務省職員じゃねぇぞ俺ら」

「それはわかりますけど」 


 逮捕権が無い警察というと皇宮警察があるが、彼らは警視庁の扱いだ。

 霊障対処課は名前の通り警察の関係部署では無い。

  

 誰なら知っているか、という質問にも3人は答えられない。

 課長ならもしかすると、とは思うが確実な事は言えないと返すと、信じられないようなものを見る目で見られた。

 

「何故そんな事に?」

「設立当初にモメたんだよ。自分とこの書類探索を他所にやって欲しくないって」

「あぁ……お役所……」

 

 その後、霊障が現れるようになり所属不明の専門部署の必要性が増した為、今のような形になった。

 特段、それで不便を感じた事は無いし、霊障の出現する場所の多様さを考えるとこちらの方が都合が良い。


「それでどうする? これ見なかった事にしてもいいけど」

「そうねぇ」


 シーカーの言葉にフォックスが顎に手を当てて考え込む。

 甘い対応にブッチャーはひっそりと溜息を吐く。


 こういう対応をする時は新たな発見が無かった時だ。

 暴食との遭遇を解析した結果と大差無く、資料におかしな所が無かったのだろう。

 

「代わりに仕事の依頼……と言っていいのかしら。霊障の話を回しますわ」

「罠じゃねぇだろうな」

「否定はしないわぁ、ウチが関わってる案件ですもの」

「否定してくれよ……」


 成程、そちらが本題か。


 フォックスが笑いブッチャーは頭を抱える。

 妙に歯切れが悪い言葉にハンターが内容を聞く。 

 

 廃神社に現れた霊障の観察あるいは対処。 


「観察?」

「その辺りも道すがら話しますわ」


 フォックスはそう言って地図を取り出した。

 場所はかなり山奥のようだ。

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