表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/16

5章 錆落とし


 5章 錆落とし


 霊障対処課。

 警察、自衛隊とは別系統の、戦闘を許可された部署。

 

 設立にあたって想定された敵は年代推定不能の霊障。

 建国より古き、未だ現れぬ災害。


 ●

 

 部屋は金属とコンクリートで作られている。

 何本もガラスの筒が配置されている。

 

 むき出しの配管と配線。

 使用用途不明の機械。


 床に戦闘の邪魔になるような障害物は無い。

 目に見える物はこの程度だ。


 まずは敵の注意をハンターに引きつける。

 向かってくる亡者を斬り捨てた。


 敵意を感知した亡者達が迫ってくる。

 ガラスの筒が砕け散る。

 

 ハンターは降り注ぐ破片に構わず走る。

 足を止めるのは自殺行為だ。

 

 物陰の間を縫いながらハンターは観察に徹する。


 何人かの亡者が掴みかかってくる。

 亡者の口が齧りついて来る。

 叫びによる威嚇。


 主だった行動は以上だ。


 視界は柱を構成する亡者間で共有されているのだろう。

 見える範囲でハンターの居場所を正確に狙ってくる。

  

 ハンターは切っ先で壁を傷付けながら走る。

 甲高い耳障りな音に合わせて亡者が壁にぶち当たってきた。

 

 聴覚も有効。

 

 襲ってきた亡者を斬りつける。

 掴みかかってくる際に視線がこちらに集中するのに気付く。

 

 捕獲の際、獲物に全感覚が集中するようだ。


 ハンターは男のスマホを探す。

 見上げると柱の頂点に居る亡者がスマホを持っていた。

 

 光る画面から次々と亡者が現れ、柱が高くなる。 

 あれが要だ。


 電池切れを待ってもいいが負傷した男が保たないだろう。


「シーカー!」

「ああ」


 シーカーがタブレットを操作する。

 ブッチャーがマスクの片目を手で塞ぎ、突然の暗闇に備えた。

 

 シールドが暗所モードに切り替わり、部屋の電源が落ちる。

 暗闇で柱の動きが一瞬、止まる。

 

 直刀を1本投げ、金属の壁に突き刺す。

 金属同士がぶつかり、大きな音が立つ。

 

 亡者達は音のした方向へ突撃する。 

 ハンターのいる場所とは反対側へぶち当たる。


 柱の亡者を踏みつけ、飛び上がり、柱の頂点へ向かう。

 踏みつけられた事を感知したのか亡者が戻ってくる。

 

 背後を気にせずハンターは柱を登る。

 亡者の視線がハンターや天井に向かった頃、シールドが通常モードに切り替わり、再度点灯。 

 

 突然の光に亡者が目を覆い、直刀がスマホを貫いた。

 

 直刀を振り、スマホを振り払う。 

 着地と同時にサラサラと柱が砂となり崩れていく。

 

 ハンターと亡者は何も言わない。

 目を逸らさず、ただお互いに見合うだけだ。

 

 柱の完全崩壊を確認し、ハンターは壁に刺さった直刀を抜き、鞘に仕舞った。

  

 シーカーが報告をしている声が聞こえる。

 ブッチャーが別室から男の手下達を引き摺り出している。 


「ハンター戦闘終了。負傷者1名、身元不明者10名発見。搬送手配済み。関係各所へ引き継ぎを済ませ戻る」


 ●

 

 男の治療が終わり、逮捕のニュースが流れてきた。

 動機や背後関係はこれから判明するだろう。

 

 男は元々、貧乏な出であったらしい。

 ニュースが男の出自を無遠慮に流す。

 

 ハンターはテレビの電源を落とす。

 

「全く、もっと良いニュースはねぇのかね」

「誰かが本棚のエロ本にゲイ物入れてたぞ」 

「そうじゃない! 同じケツなら女の子を寄越せ!」

 

 シーカーとハンターの言葉に恐らく犯人であろう職員が目を逸らした。

 全く、と鼻息荒くハンターは栄養バーに齧り付いた。

  

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ