終章 サイバーパンク・デモクラシー
終章 サイバーパンク・デモクラシー
年代推定不能霊障の処理を終わらせてから数日後。
何の変哲も無い日々が続いている。
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霊障被害救済法案可決。
ニュースはひっきりなしに壱之口の顔を写している。
隣に立つ帯刀が複雑な、しかし、つかえが取れたような顔をしている。
衆院から参院へ、そして法案は施行されるだろう。
コンダクターはテレビを消し、縁側へと目を向ける。
足をブラブラさせ、暇そうにしているカッターの隣に座る。
「……」
少しだけ止まった足が再び揺れだす。
鳥の声が聞こえてきた。
事件が終わり、コンダクターの神社は彼らの受け入れ先となった。
カッターともう1人、名前を知らない男。
男はまだ目覚めていない。
霊障による極度な体力の消耗の所為だ。
眠れば治るだろう、との診断だ。
コンダクターは手持ち無沙汰なカッターの顔を見る。
閣下のクローン。
だが今となっては彼らを神と奉じる気も無い。
あの後、警察の手が入り組織も壊滅した。
ある種、無責任に彼らは人間として放り出されたのだ。
カタリ、と物音がする。
もう1人が起きたのだろう。
カッターが勢いよく立ち上がり、男の所へ向かう。
コンダクターもその後ろを歩く。
そう言えば名前を聞かないとな。
鳥の羽音が空に上る。
コンダクターは晴れた空を見上げた。
●
「今、時代は!」
「尻!」
霊障対処課は相変わらずである。
ブッチャーはタバコに火を着けて、荒々しく煙を吐き出した。
「AVは男が腰を振る。ゲイビも男が腰を振る。そこに違いなんか無いと思いませんか」
「全然違うわ!」
シーカーの発言にブッチャーは突っ込む。
いえーい、とハイタッチをする2人を見て、痛む頭を抑えた。
入電、そして画面に現場が映し出される。
恐らく都内の、病院のような場所だ。
何十年も放置されていたのかボロボロの廃墟になっている。
大量の蛇が集まった大蛇を模した霊障が建物を陣取っている。
現時点で要は不明。
見た所、数百年物だろう。
何故、あんな場所に、と思った所でハンターが声を上げた。
「あれフォックスじゃね?」
「はぁ?」
ハンターの言葉に画面を凝視する。
事件の後、とんと見かけなくなった女の出現に緊張が走る。
建物の外にフォックスが立っている。
無事ではあるようだ。
一方的な通信である筈の画面越しにフォックスと目が合う。
口パクで、艶かしく言葉を吐く。
『お元気?』
こちらに来い、という事だろう。
相変わらずの性根の様だ。
組織は壊滅しても残党は居る。
残党を処理しても新たな霊障が発生する。
「ハンター、仕事だ」
「へぇい」
呼びかけに応え、ハンター達は出動する。
●
25XX年。
電子、電脳化が進んだ日本。
空に街が浮き、上下左右に電磁が飛び交う。
その影響かそうでないのか。
街に様々な怪異が現れるようになった。
人々はそれを霊障と呼び、いつの間にかそれに対処する人間達が集まった。
人呼んで霊障対処課。
霞が関、元官庁街を主に行動している。
完。




