第92話 ギルド同盟 - みんなをLv.9999に -
これからギルド狩りへと思いきや、誰かに呼び止められた。
いったい……?
振り向くとそこには、
「我らは『Fireworks』というギルドよ。リーダーである、あたしの名は『ルミナス』。よろしく!」
これまた見覚えのあるような、ないような女性がいた。
いや、あの女性も確実に『聖者祭』にいたな……!
あんな超目立つ七色くるくるパーマヘアなヤツ、一度見たら忘れない。あの時の俺は、世紀末集団ことチョースケたちの相手で、他のヤツと話している余裕はなかったのだ。
「あー…なんだ、もしかして……」
「そうだ。あたしらも王様から『討伐クエスト』の依頼を受けた。だからギルド『サンフラワー』のあとをつけていた。そこで、あんた達と『同盟』を組みたいんだけど……どうだろう」
ルミナスは、ぽむぽむにそう提案した。
「つけられてたのかよ、ぽむぽむ」
「し、知らなかった……! だが、彼女とは知らない仲でもないし、人数は多い方がいい。いいだろ、サトル」
「……まあ、あの『ブラッドベア』は凶悪だからな、人数は多い越したことはない」
「おおう、決定だな! これで戦力倍増! じゃ、同盟を組むぞ!」
ぽむぽむは、ギルド『Fireworks』と同盟を組んだ。
それにしても『Fireworks』か――つまり『花火』ってことか。今後はそう呼ぼうかな。
ちなみに、向こうの戦力は5名。
ドイツもコイツもカラフル頭だが、レベル、ジョブバランスは申し分ない。
これで合計人数は17名となった。
「よし、これだけいりゃ余裕だろ! みんな、行くぞ~!!
俺の掛け声と共に、狩りへ――と、思ったその時。
『ちょぉ~~~~~と! まったあ~~~~~~~~~!!』
また呼び止められた。
……またか。
「おいおい、今度は誰だ!?」
「ワシ等も仲間に入れてもらうぜ!!」
ズカズカとやってきたのは、騎士の姿をした男たち3名だった。
「お前たちは……?」
「おう、よくぞ聞いてくれた! ワシは『ああああ騎士団』ギルドのリーダーやっとる――名を『ああああ』だ! 同盟よろしく!」
えっと……
「……なんだって?」
「なんだ、聞こえんかったか。もう一度言うが、ワシは『ああああ騎士団』の~」
「それは分かったが、あんたの名前……」
「ああ、それか。親しみを込めて『ああああ』と呼んでくれ」
「『ええええ』だって!?」
「ちがーう!! 『ああああ』だ!」
「どっちでもええわ!! なんで、そんな適当な名前なんだよ、あんた!」
「生まれた時からこの名前じゃ! 文句あんのか!?
一応、紹介しておくが、こっちの細っちょの騎士は『いいいい』で、こっちの太っちょの騎士は『うううう』だ。いいな!」
「そうか」
頭が痛い。
もうさっさと『同盟』を組んで狩りへ出よう……。
ということで、今度こそ『サンフラワー』、『Fireworks』、『ああああ騎士団』と組み――総勢20名での大規模ギルド狩りになりそうなところだったが。
『ちぃおおおおおっとまったああああああああああああああ!!!!!』
――またっすか。
まだ出てくるのかよ!!
「今度は誰だよ……って、お前たち!!」
あの顔は知っている。
そうだ、『聖者祭』の時には、5つのギルドが城の前にいたのだ。そのうちの3ギルドが今ここにいて、残り2つ。
あいつらもいたんだ
「久しぶりだな……旦那!!」
「パースケとグースケ! お前ら、こんなところまで何しに……!」
「もちろん『討伐クエスト』を受けたんですよ! オレらもチョースケの兄貴のように旦那の役に立ちたくて! だから、二人で話し合って来たんですよ! オレらは、旦那のためなら命も惜しくない……! チョースケの兄貴のようにカッコよく散っていきたいんです!」
――と、パースケは言い切った。
「……ダメだ。命を粗末に扱うようなヤツとは組めない」
「そ、そんな……! でも!」
「いいか、パースケ。確かに、お前たちの兄貴は体を張って、俺の女神――メサイアを助けてくれた。けどな、俺はお前たちにまで死んで欲しくない」
「旦那……」
「いいか、みんな! ギルドの全員よく聞いてくれ! 俺と同盟を組む以上は、絶対に死ぬな!! 俺たちは、世界を混沌に陥れている『アルラトゥ』を倒すんだ! その為にも誰一人欠けてもダメだ! いいな!」
『……………』
少し沈黙が訪れ――そして、
「「「「「「「おおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」」」」」」」
大歓声が上がった。
それから、
「その通りだ!」「世界に平和を!!」「みんなの力を合わせる時だ!」「全員を最強にしてレイドボスを撃破だ!」「俺はこの戦いに勝利したら……結婚するんだ!!」「この世界に永久不変の祝福を!」
各々の反応が見られた。
みんな士気が最高潮に達したらしい。良い傾向だ。
「……パースケ、グースケ。でも、お前たちの兄貴には感謝している。それと同時に……すまなかった」
「オレたちは……旦那に一生ついていきます!」
◆
この人数、戦力ならさすがに余裕がありすぎた。
あの『ブラッドベア』――Lv.9000だけあり、経験値の塊。
一体倒す毎に、仲間たちのレベルがどんどん上がっていく光景は気分爽快すぎた。気持ちい~! これほど気持ちの良いレベリングは初めてだ。
これが『ギルド狩り』ってヤツか。楽しいものだな。
しかも、ほとんどの出番が俺なせいか、女の子達から黄色い歓声が上がりまくっていた。
「きゃ~! サトル様かっこいいー♡」
「やっぱり、聖者様ってお強いのね~。デートしてくれないかなぁ~♡」
「一度でいいからペアを組んでみたいわぁ♡」
などなど、そんな嬉しすぎる声多数。
「結婚したい……♡」
なんて声も。
おぉ、あんな黒髪ロングヘアの激カワ娘なら大歓迎だ!
よし、結婚しよう。
――が、そんな歓声の度に、メサイアたちから殺意の波動がミシミシと伝わってきていた。……まずい、悪寒が……。なんだこの、背後から心臓を鷲掴みされているような感覚は……!
「……サトルさん」
「な、なんだ、リース」
「浮気したらどうなるか分かってますよね?」
「お……おう。百も承知だ! するわけないだろう! たぶん!」
「兄様……」
「うを!? おい、フォル! 包丁をこっちに向けるな!! あぶねーだろうが!!」
「もし、他の女の子に手を出したら、兄様のお尻にぶっ刺しますよ」
「こえーよ!! 分かった分かった!」
「理くん。今度、理くんの部屋で楽しい事してあげるから、外野の雑音は聞こえない……分かったね?」
まじ!!
「ベル、俺は何も聞こえなかったよ」
「うんうん。それでいい。じゃ、今度約束ね」
そうベルは俺の耳元で囁いた。
……俺は思わずガッツポーズした。
で……あとは、メサイアだが。
呼びかけたところで――
ドゴォォォォォォォォォォ~~~~~~~~!!!!!
なんて、鈍い音がすると、あの『ブラッドベア』が宙に舞い、物凄い勢いでグルグル回転していた。そして、樹々に激突――おびただしい血をぶちまけ、サラサラ~と塵となって消えた。
「サトル、あのズタズタだったクマの様になりたくなければ……余計な声に耳を傾けないこと。いいわね?」
「……ハイ」
ははー…。
メサイアのヤツ、レベルが上がって相当強くなったな~…。
さ、さて……もうカンストは近い!
俺含めて『Lv.9999』まであと僅かだ!!
ラストスパートだ!
あのブラッドベアを倒しまくっていくぞ……!
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