第91話 悪夢の森 - ギルド狩りで一気に最強へ -
闇に染まった森の中を進んで行くと、血塗れのクマのぬいぐるみ――『ブラッドベア』が跋扈していた。そのレベル『9000』……!
「あの鋭すぎる歯で噛まれたら、ひとたまりもないだろうなぁ」
「わぁ、かわいいクマさんですー!」
リースが顔を輝かせている。
確かに可愛いツラはしているが、全身血塗れだし……すげぇ狂暴そうなんですけど。しかも、あのぬいぐるみ達、互いに『ヒール』や『スピードアップ』を掛け合いまくっていて、その回復量は『9999』だ。凄まじい回復量と移動速度を誇っていた。
「ベル、あのクマたちの壁を出来そうか?」
「たぶん、10体までなら余裕だねぇ。試しに1体だけ引っ張ってみるよ」
「頼む」
まあ、ベルの最強の防御力なら平気だろう。
「そういえば兄様」
「なんだフォル」
「レベルをカンストさせて、その後はアルラトゥとかいうレイドボスを倒しに行くんですよね」
「そういう事だな。そうすりゃ~厄介な『死の呪い』も解消されて、きっと世界には女神が復活し、平和になるのさ」
「分かりました。その為にも、わたくしも力添えを――って、兄様、アレ」
フォルはどこか指さす。
それを追っていくと――
「あん?」
ベルがどこかの冒険者たちを助けていた。
彼らは、あの凶悪なクマ複数体から猛攻を受け、一方的にやられてしまっている。
「おいおい、なんだあのパーティ……あれじゃ、全滅するぞ! しゃーない、助けに行くか。リース、フォルは俺の後ろについてくるんだ、いいな」
尚、メサイアは俺が背負っている状態だ。
随分と大人しいな、ひょっとして寝てる?
◆
「ふ、ふぅ……」
壊滅しかけていたパーティを助けた。
クマは確かに強かったが、戦ってみれば俺の敵ではなかった。しかし、何十体もウヨウヨしているから、油断していると十体以上のクマに襲われ、呆気なく死ぬだろうな。
「あんた、すごいな……。あのクマを一撃で倒すとは……。俺たちは死にかけたのに」
そう苦虫を噛む男は、あの花の都・フリージアの『聖者祭』の時にいたギルドのリーダーだった。
ていうか……『ダークスライム』の時にいた面々じゃなかろうか。あの職業プリーストっぽい女の子は見覚えがあるし。
そうだ、ダークスライムの攻撃で裸にされていた女の子だ。
俺が助けたっけな。
「なんだ、久しぶりだな」
「あ……あなたは……! 裸だった私を助けてくれた……あの時は助けて戴き、本当にありがとうございました」
女の子はぺこぺこと頭を下げながら、お礼を言った。
「当然のことをしたまでだ。それで、リーダーのあんた」
「紹介が遅れたな、俺はギルド『サンフラワー』のリーダーで『ぽむぽむ』だ! よろしくな!」
「……は? ぽむぽむ?」
「あ……あの、本当にリーダーの名前なんです……」
と、女の子は、嫌な汗を流しながら付け加えてくれるが――。
ぽ……ぽむぽむ……。
なんでそんなヘッポコな名前なんだよ……!?
「自慢じゃないが、これは、御年103歳になった爺さんに付けてもらった!」
「知るかよ……!? で、あとそこのプリーストっぽいキミの名前は?」
「私は『エイル』です。あと、あちらのケガの手当を受けている男の子は、リーダーの弟で『村雨』です」
「なんで弟の方は無駄にカッコいい名前なんだよ!?」
差がありすぎるだろ!
どうしてそうなった!
他のメンバーも紹介してもらい、ギルドは総勢七名いることが判明した。
「なるほどね。……で、ベル。その村雨の容態は?」
「特殊な異常状態の『呪いの裂傷』だったから、フォルちゃんに頼んで治癒してもらったよ」
「そうか、なら良かった。で、リーダーの……ぽ……ぽむぽむさん。こんな森の奥でレベリングしていたのか。あんた達のレベルじゃきつそうだが」
「ああ、実は、花の都の王であるミクトラン様から『討伐クエスト』を受けてほしいとお願いされたので、断るワケにもいかなくてな……。
サトル、あんたの事も聞いている。残るレイドボスがあと『アルラトゥ』だけらしいな。俺たちはその討伐を手伝えと命を受けた。だから、他のギルドも同様に動いているはずだ」
なるほど、それでこんな森で無茶してレベリングを。
因みに、ミクトランとは――神王・アルクトゥルスの事である。まさか、他のギルドにも要請していたとはな。
一体、なにを企んでやがる?
「情報助かった。ともかく、レベリングで人数は多い越したことはない。一緒に組むか? こっちは女神が調子悪くて困ってたんだ」
メサイアは相変わらず俺の背中でダラリとしている。
……ちょっと心配だ。
「メサイア、大丈夫か?」
「……うん。サトルの背中、暖かいし。寝心地良すぎて……」
「なんだ、寝てたのか」
「ごめんね、サトル。私、役に立てなくて」
「いや、お前は十分役に立ってるよ。いい感触してるし」
「……もう、えっちなんだから。でも今は怒る気力もないから許してあげる」
「おう。ゆっくり寝てろ」
メサイアと話し終えると、フォルがちょっぴり不安そうな面持ちでやってきた。
「兄様、よければ、わたくしが姉様の面倒を見ましょうか?」
「いいのか?」
「お任せください。ですので、兄様は狩りに集中して戴ければと」
少々悩ましいが――
経験値の配分は公平になっているから、誰かが狩りすればレベリング可能。であれば――お! そうだ、いいこと考えた。
「それで、ぽむぽむ」
……この呼び方、慣れないなぁ。
「もちろん組む。サトル、あんたは『聖者』なんだろう。そんな最強の男からの誘いを断るわけがないよ。よろしく」
俺は、ぽむぽむと握手を交わした。
「それじゃ『同盟』要請を送るが――って、そっか、サトルのところはギルドではないのか」
「ん――ああ、そうだな。じゃ、一時的に全員そっちのギルドに入れてもらおうかな」
「了解した。では、そちらのパーティ全員に要請を送るぞ」
ぽむぽむから『ギルド加入要請』が飛んでくる。
俺たちはそれに応え――ギルド『サンフラワー』へ加入した。
「よし、これで総勢12名。これだけ戦力がいればカンストも早そうだ! ていうか、俺のギルドに聖者もいるとか最強すぎね!? わははははは!」
高笑いするぽむぽむ。
いや、俺たち一時的なんだけどなぁ……。
しかし、この人数でしかも『ギルド狩り』というのは初めてだ。
こりゃ少しは楽しくなりそうだな――とか思ってれば。
「ちょっとまったー!!!!」
そこで、ちょっとまったが入った。
……この声はまさか!
いつも応援ありがとうございます。
もしも面白い・続きが読みたいと感じましたら、ぜひブックマーク・評価をお願いします。感想もお気軽に書いて戴けると嬉しいです。




