第80話 死神スキル - オーバードライブ -
都の至るところに石像があった。
人形の石があちらこちら、至るところに点在している。
これはもしや……
あの看守【メデューサ】の仕業なのか?
「どうなってやがる……空もなんか異界のように薄気味悪いし、いや……それ以前にヒトの気配がまるでない。違う世界にいるみたいだ」
「そうだ。この都はフリージアではない」
「オルクス……知ってるのか?」
「憶測だ」
「憶測で物を言うなよ!?」
「まあまあ、サトルくん。オルクスってこう真面目に見えても、中身はヘッポコだから☆」
「なっ……プルート。お前も大概だろう! 料理は下手だし、夜ひとりでトイレにいけないし、ひとりで寝られない……おまけに……」
「あぁぁぁぁ!!! やめて! オルクス! それ以上はヤメテ!! サトルくんの前でそれ以上言わないで~~~!!!」
顔を真っ赤にするプルート。
なるほど、彼女もヘッポコ……と。でも、可愛いからアリ!
「二人とも騒々しい。サトル、ここは『アンチクトン』と呼ばれる反世界フィールドのようですよ」
「アンチクトン……聞いたことがないな」
「ま~つまり……」
「つまり……?」
「よく分かりません」
「分からんのかよ!?」
ひょっとして、モル子もヘッポコなのか!? そうなのか!?
ホント、この三人……だめだめだ。
これからどうしたもんかと思案していると――
『ほう、まさか脱獄していたとはな……。あのバカ【メデューサ】め……役に立たん。まあいい、ちょうど出向こうと思っていたが、いいところに鉢合わせたようだ!』
「む? 建物の向こうから人の気配……あ! あんたカジノのオーナー!」
あの目立つ赤スーツのマッチョ男は間違いない。確か『エグゾセ』とかいう。そいつは、十人の黒服を従えてこちらへやってきた。
「私の金を返してもらおうか……『100億プル』だ! どこへやった!? お前の家や周りを探しても見つからなかったのだ」
「バーカ。教えるかよ。つーか、あの勝負は俺たちの勝ちだっただろう。当然の権利だ」
「き、貴様……! ……まあいい、ではお前の仲間がどうなってもいいというのだな? オイ、アレを持ってこい」
「なに!?」
黒服たちが何か重そうなモノを引っ張ってきていた……。
それをよく見ると…………
『メサイア』『リース』『フォル』……『ベル』も!?
彼女らが『石化』していた。
「…………ど、どういうことだ!?」
「あの晩、お前から金を取り戻すため……伝説の怪物【メデューサ】を投入した。アレは『冥界の死女神・アルラトゥ』のペットらしいがね。私は、闇ルートを通じて、借金をしてでも高額の料金を支払い、レンタルしたのだよ……この『大監獄』も……【メデューサ】もな!! それもこれも、貴様を捕らえるためだ!」
「なん……だと……!」
「眠らせるのは容易かった……。幸い、私には神器【ジュピター】があったのだからな。これは全てのステータスを倍増させるほか……『獄爆睡』の状態異常を与える強力な神器なのだよ。昔、大枚を叩いて買っておいてよかった」
――と、ヤツは、ニヤリと悪魔の様に口を歪め、右手の中指に嵌めている指輪【ジュピター】を見せつけてきた。
あ……あれが神器【ジュピター】だって!?
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アクセサリー:【ジュピター】 DEF:500
効果:全てのステータス3倍。LUK&Cri + 15
[グロリアスブレッシング Lv.5]使用可能。
移動速度増加。
このアイテムは絶対に壊れない。
あらゆる対象に『獄爆睡』を超広範囲に散布。
この効果はINTの影響を受ける。
精錬値が30以上の時、DEF+5000。
装備者が[エルフ]の種族である場合、
スキル[アルマゲドン]を使用できる。
発動時、10秒間[完全無敵]状態になる。
装備者が[聖職者]の場合、
スキル[ドゥーム]を使用できる。
発動時、10秒間[完全無敵]状態になる。
装備者が【Lv.9999】の場合、
【ユピテル覚醒】解放。
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なんちゅー効果だ!!
だが、装備者があんな赤スーツマッチョだから、それほど脅威ではない。ないのだが……嫌な予感がする。
「さあ、金の在り処を吐け……! 素直に言えば、彼女らを元に戻してやろう……だが、逆らえば…………こうだッ!!!」
――と、エグゾセは、適当に立っていた石化人間を裏拳で破壊した。
ガラガラと崩れ落ちるヒトだったもの……。
あれは……、死んだって事だよな……?
あれがもし仮に、メサイアやリースだったとしたら……。
……巫山戯るなァ!!
想像しただけで……凄まじい怒りが込み上げてきた!
「て、てめぇ……俺の仲間を人質にしたってことか!!」
「当然であろう。100億もの大金を取り戻すためだ……手段は厭わないということだ! さあ、さっさと言え! でなければ……あの誰かも分からぬ囚人のように、女たちがバラバラになっていくぞ……ククク、ハッハハハハハハハハ!!!」
……コ、コイツ!
なんて卑怯な……!!
クソッ!
どうする……? どうすりゃいい……?
焦っていると、
「メサイア様が……! なんてことだ、サトル! どうにかできんのか!」
「焦ったら負けよ、オルクス。それに、サトルくん」
プルート……こんな状況だってのに冷静だな。
だが、少し冷静になれた。ありがたい。
「でも、どうすればいいんだろう……」
やっぱり、ヘッポコだった。
だああああ、ダメだァ!! この死神役に立たねえ!!
などと頭を抱えていると、そこでモル子が耳打ちしてくる。
「サトル。石化した皆はボクたちに任せて。みんな忘れているけど、ボクらには【オーバードライブ】という強力なスキルがあるんだ。移動速度もかなり上がるから、みんな奪取可能なはず」
「……まじか!」
そいや、魔王に操られていたときに、そんなスキルが発動していたな。オルクスのスピードは尋常ではなかったのを記憶している。
あの移動速度なら……!
「よし、そっちは頼む。俺は、オーナーのマッチョを百発ぶん殴る」
【トランセンデンス】――!!
更に――『イミテーション』で死神たちの【オーバードライブ】を勝手に、無断にコピー!! 許せ!
「っらあああああああああああああああああぁぁぁあああッ!!!!!!!」
俺は、人生最大の怒りを……闘志を燃やし、全力全開で、マッチョに突撃した……!!
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