第79話 大監獄 - へっぽこ死神三人衆と再会した話 -
『大監獄』に投獄されてしまった俺。
……どこやねん。
「うーん……おかしいな、俺の記憶が確かなら、フォルと一緒に月見酒を……」
あれは夢だった?
そんなワケはない。それを証拠に、俺は二日酔いだ。
「頭が痛い、気持ち悪い……おえ」
頭を痛めていると、隣の牢から語気の強い声が。
「おい、あんた。そこのあんただよ」
「あん? 俺? てか、この声どこかで……」
「そうだ、あんただ。女神・メサイア様と行動を共にしていただろう」
「おう、そりゃ俺だが。声だけだが、あんた知り合いだっけ」
「そうだ。最後に会ったのは……魔王・ゾルタクスゼイアンの時のはず。ほら、ヤツに操られていた死神だ。俺は『オルクス』だ」
「はぁ~い☆ わたしは『プルート』よ~。おひさ~」
「やあ、ボクは『モルス』だよ~」
ああ、なんだ死神三人衆か――。
「――って、なんでこんな『大監獄』に死神がー!?」
「うん、理由を話すと長いんだけどね。……まあ、道に迷ってしまったというか、気づけばこんなところに住んでいたというか」
「住んでいるのか!? つーかまて、あんたら確か【聖地・カフェイン】の『ジオセントリズム』へ先行していたはずだよな!?」
そういや、一切見かけなかったが、何していたんだヤツ等。
「それを言うなら【聖地・ガウェイン】でしょー」
と、モルスからやる気のないツッコミを頂いた。
ああ、そうだ【聖地・ガウェイン】ね。
てか、よく思い出せば、あの遺跡にいた『ライズ』も死神だったな。あの死神少女から、死神三人衆は先に向かったと聞かされていたが――。
どうしてこうなった?
「そんで、どーしてお前たちはこんなところで油売ってるんだ」
「聞いて驚け……! 我々は……極度の方向音痴なのだ!」
…………。
そう……(哀)
俺は、横になった。
「だぁぁぁああ! まて寝るな! 寝てくれるな! 我々の話を聞いてくれ! いや、聞いてください!」
「死神が方向音痴だって? それで、遺跡にはよく来れたものだな……」
「そ……それは」
「うん、そこは神王様に『テレポート』してもらったし~♪」
オルクスが口籠もるが、プルートが真相をバラしてくれた。
「そうか(悲) そりゃ不憫だな……(クソデカ溜息)」
「お、おい、その溜息やめろ!! あぁもう、確か……サトルだったな、あんた」
「そうだが」
「いいか、我々は神王様の元に戻らなければならない。だから、手伝え」
「はぁ~~~~~~~~~~」
「手伝ってください……」
「分かった分かった。俺もメサイアたちのところへ戻りたいし、協力するよ。――じゃ、牢をぶっ壊すか。みんな、離れてろ」
では、まず【ダークニトロ】を右手に付与してっと……
「っらぁぁぁあああああああああ!!」
俺は、鉄格子をフルパワーでぶん殴った。
すると、
ドーーーーーーーーーーーーーーン!!
バキィ~~と鉄格子が変形粉砕し、吹っ飛んだ。
「驚いた。す、すごいな……」
「サトルくん、かっこいい~☆」
「……へえ」
死神たちが驚いていた。
「いや、あんたらもスキル使えば脱獄できるでしょう!?」
「え……無理だったんだけど、ねえ、オルクス」
だが、オルクスはポカンと口を開けて、茫然としていた。
「なんだ、スキルが効かなかったのか?」
「この『大監獄』は、もともとは女神や死神専用だから。だから、ボクらのスキルじゃ突破できなかった……んです」
眠そうに説明するモルス。半分寝てる?
その時、奥から人の気配が――!
「まずい、サトル! 看守だ、すぐに牢に戻れ!」
「なにィ!? 看守だぁ?」
「ああ、さっきの音を聞いて駆けつけてきたのだろう。さあ、早く!」
「さあ、早くつったって牢がぶっ壊れてるんだが!?」
「いいから早く!」
鉄格子が壊れたままだが……いいのか?
ええい、そのままいるか。
俺は、壊れたままの牢のど真ん中に座り、胡坐をかく。渋々留まることにした。
『貴様らァ!! なにをしている!?』
ドタドタと看守がやってきた。
『千里眼』によれば【メデューサ】らしい。
え……【メデューサ】?
「おい、囚人! 今、物凄い爆音が聞こえたが、なんだ!?」
「新人の屁です」と、オルクス。
「そうか! ならよろしい!!」
「ってうおおおおおおおおおおおおおおおおおおい!!!!!」
勝手に俺の屁にするな!!!!!!!
てか、看守も納得すなーーーーー!!!!!
「以降は慎むように。いいな、新人!!」
看守は、呆気なく立ち去った。
…………。
「…………オ、オルクスおまええええ!?」
「悪気は1%だけあった。だが、良かったな。助かったぞ」
「なにが良かっただ! あんな看守くらい楽勝に倒せるだろ」
「馬鹿いえ。あれは怪物【メデューサ】だぞ。魔眼から放たれる怪光線で、脱獄囚を一瞬で『獄石化』にしてしまう恐ろしいヤツなんだぞ」
「俺には効かんけどな」
「嘘をつくな、この屁こき魔」
「誰が屁こき魔じゃ!!」
くぅ……オルクスが女じゃなかったら、一発ぶん殴っているところなんだが……。あんな優男に見えて、実のところ女だからなあ。始末に負えない。
そう、死神は……元は『女神』なのだ。
だから、全員必然的に♀となる――らしい。中には男の娘もいるかもな?
「メデューサだか知らんが、俺は帰るぞ」
「まて、こっちを開けろ!!」
ガチャガシャと鉄格子を必死に揺らすオルクス。
「開けろォ~?」
「開けてください……」
「オルクス、あんた案外素直だよな」
「う、うるさい! いいから早くしろ!!」
「早くしろォ~?」
「早くしてくださると助かります……」
なかなか面白いヤツだ。
よし、助けてやるか。
「分かった。【ダークニトロ】はまだ付与されたままだから、このまま行こう。鉄格子を引きはがすから離れてろ」
俺は、隣の牢に向かった。
「引きはがすの~!? サトルくん、すっごーい! かっこい~☆」
きゃっきゃとはしゃぐプルート。
おお、少し前に会った程度だけど、プルートはキャピキャピしてるなあ。清楚系ギャルってところかね。
よし! ご期待に応えるしかないよな!(やる気アップ)
「それじゃ、っらあああああああああああああああ!!!」
メキメキ、ゴキッ、バキッ、ボゴンッ!!
ってな感じで、鉄格子を引きはがし、丸めて――その辺に捨てた。
「よ、死神三人衆」
「「「………………」」」
三人ともポカ~~~ンとしていた。なんでだよ。
「おい、まさかウソだと思ったか? さっさと出るぞ、こんなところ」
「い、いやぁ、あまりに豪快だったからな……だが、助かったぞサトル」
「わたし、オルクスからサトルくんに乗り換えようかな♪」
「ボク……強い人がタイプなんです。是非とも『モル子』って呼んでください」
「感想は後でいくらでも聞いてやる! 行くぞ~!」
◆
『大監獄』から脱獄すると――
なんと、地上へ出た。
「ち、地上だって……!?」
俺たちは何処にいたんだ……って!?
ウソだろ……?
ここは…………【花の都・フリージア】…………だった。
都の地下に……なぜ『大監獄』が!?
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