第76話 ギャンブラー聖女 - 未来はボクらの手の中 -
聖女の幸運は……凄まじかった。
あれから、フォルの力を頼りにスロット、ポーカー、ルーレットなどなどあらゆるギャブルに手を染めた。
その結果……!
【 所持金:300,000,000プル 】
3億プルになっちまった。
……大金持ちになっちまった。あっさりと。
「すごいぞ、フォル!」
「そ、そうですかね……。なんだか照れます」
ずっと当たりっぱなしだったお陰で、さすがに周りから大注目だった。大いに目立ち、気づけば見物客だらけに。
「おいおい、あの嬢ちゃんスゲェ~な」「ありゃ、聖女様じゃねぇべか」「もう三億プルも稼いだのか……恵んでほしい」「聖女様の力は本物だァ!」「奇跡じゃ……今、ワシらは奇跡を目の当たりにしているのじゃ……!」
ワーワーと、すごい熱気だ。
「よし、これだけ稼げれば当面の資金は困らんぞ。家も余裕で維持できる」
「はい、分かりました! そろそろ帰りましょ――」
ここで辞めておこうと思った、その時だった。
「そこの運のイイ聖女さん」
誰かに呼び止められた。
って、この凛とした落ち着いた声。
「おい、ベル。なにやってんだ……谷間に大量のチップを抱えながら」
「やあ、理くんにフォルちゃん。それとシアにリースも」
「あ、ベルさん。わたくしたちは、そろそろ帰ろうかと」
「そうなんだ。あ、でも、もし運に自信が有るなら、当店の裏カジノをプレイしてみない? レートはこの場所よりも遥かに高く、勝てれば、一生遊んで暮らせる額を手にできるよ。まあ、負ければ……地下での強制労働になるとか何とからしいけど」
そう、いつものテンションで淡々と説明するベル。
「地下で強制労働って……そりゃ、一生、地上に出られないヤツだろ。やめとけ、フォル。いくらお前の運が最強だって言ったって……」
「やります!!」
「よし、素直でよろしい……って、やんのかよ!?」
「イイ返事だね。そんな素直なフォルちゃんには、こちらへご案内するよ~。ついておいで~」
背を向けて、どこかへ歩き出すバニーガール。
一体どこへ向かうやら。
「いいのか? 負けたらヤバそーだぞ」
「大丈夫です! わたくしの運なら勝てます!!」
「そうよ、サトル。フォルの『フォーチュン』があれば勝てるわよ」
メサイアの言う通りだが……。
「みんな落ち着け! もう3億も稼いだのだから十分すぎるぞ。一生は無理にしても、しばらくは――」
「ごちゃごちゃ言っていないで行くわよ、サトル。優柔不断なのは、あんたの悪い癖よ」
おい。
……その軽率な行動が、さっきの破滅を齎したんだぞ、メサイアよ。
「あ、あたしが言える立場じゃないですけど……。サトルさん、フォルちゃんなら、きっとやれます! もっとお金を稼いで……10億プルもする神器【ジュピター】が欲しいんです」
リースも案外、ギャンブラーだなぁ。
――っておい。最後、ぼそっとさりげなく呟いているが、神器が欲しいってか!? てか、10億とか無理だろそれ!?
◆
カジノの地下には、マジで『裏カジノ』が存在した。
「うそだろ……」
表のカジノとは明らかに空気も客層も違う。
レートは驚きの10倍。
というか、コレ、違法カジノでは……?
「おいおい……闇が深すぎるだろココ。絶対ヤバイやつだろ。下手すりゃ、おまわりさんの世話になっちゃうヤツだろ。いや、こっちの場合は憲兵か?」
「サトル。あんた、さっきから何をゴチャゴチャ言っているの。いいから、お金」
「体売りかけたのに偉そうだな、おい」
メサイアめ、今度お仕置きだな。
女神のがめつさに頭を痛めていると、ベルの説明が始まった。
「この地下にあるルーレット【スワンプ】は、赤か黒しか選べない特殊ルール。で、しかも、10回連続で勝たなければ、配当を受け取れないんだ。だから、一度でも負ければ終わり。その場合は、一生、地下で強制労働をしてもらうよ」
「なるほど、楽勝ですね!」
「まて!! 早まるな、フォル。……10回連続だって!? なんてこった、10回なんて難しすぎるだろ……」
「兄様、わたくしを信じてください。たかが10回です!」
「そりゃそうかもしれんが……むむぅ」
フォルのスーパーラッキー『フォーチュン』さえあれば、勝率はかなり高いと言える。だが、言ってしまえば、所詮は運。
どこかで躓くだなんて事も……
いや、弱気になるな俺。
今まで散々奇跡を目の当たりにしてきたじゃないか!
勝てる……! この勝負は勝てる……!
勝利の女神は俺たちに微笑んでいる……!
「さあ、運命の時だよ。いくらベットする? どちらの色にする? フォルちゃん」
「…………」
さすがのフォルにも緊張が走る。
負ければ、一生、強制労働だしな。
「…………では、全財産の3億を賭けます! 色は、情熱の赤で」
く……全額か。まあそうなるよな。
でも、10倍になれば、30億プル。驚愕の大金だ。一生遊んで暮らせる額だ! やるしかないだろ!!
てか、情熱の意味が分からんが……だがしかし、ルーレットは開始された。
……回るルーレット、弾かれる球。
…………ごくり。
果たして…………
こい、きやがれ!!
球がコロコロと転がって――
【赤】
「……入ったぞ!!」
「や、やりました兄様!!」
っしゃぁぁぁああ!
まず1回目……勝ち!!
「じゃ、あと9回頑張ってね~」
長い戦いになりそうだな……!
◆
完全に運任せ、運否天賦の勝負は白熱していた。
只今、第10戦目……ラスト。
ここまで何事もなく勝利を得た。
さすがフォルの『フォーチュン』……驚異的な運でここまで突き進んだ。――俺は、彼女の運を完全に舐めていた。やっぱり、すげぇや……!!
「もう、ラストの第10戦目。凄いね、フォルちゃん。……さあ、最後だよ、どうするかな?」
「……それでは」
ここにきて長考のフォル。
どうした……?
ちょっと顔が疲れているようにも見えるが……まさか、運の波が!?
「おい、フォル。少し休むか? 休むのは有りだろ、ベル」
「うん。いいよ。それくらいなら」
「……いえ、ここは勝負です。運の波に乗っている以上、中断はよくない方向へ流れてしまう恐れもありますから」
なるほど、言い得て妙だ。
俺も昔やっていたギャンブルでは、そうだったな。
よし。
「がんばれ、フォル」
「はい……! では、選択します……『黒』で!」
「続行だね。じゃ、ルーレット開始するよ~」
ガラッと投げ出される球。
ルーレットの中をグルグルと勢いよく周り――
やがて……
まずい……!
あの軌道は『赤』だ……!
まさか、ここに来て運が……!
カラン……と、確かに『赤』に入った――
……させるかよおおおおおおお!!!
俺は、スキル『ダークニトロ』で超微力の風を起こし、球の軌道を変えた。すると、球はフワっと動き、辛うじて『黒』のポケットへインした。
「っしゃぁぁぁあぁぁあぁああああああああああああ!!」
「び、びっくりしました……! すごい奇跡です!」
「やった! やったわね、フォル!」
「さすがフォルちゃん! 凄いです!」
みんなワ~~~っと喜んだ。
ふぅ~…。
危うく、一生、地下で強制労働だったぜ……。
「見事、10連勝だね。おめでとう。それじゃあ3億プルの10倍だから――『30億プル』だね。今すぐ用意するから、待っていてね」
「まじか……!」
本当に、30億プルだなんて大金が手に入るのか!!
……まるで実感が沸かないが……勝ちは勝ち。
大金持ちだ!!
こりゃ……『家』を『城』に改築しようかな?
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