第72話 激昂の女神 - この世全ての憤怒を拳に -
もう【聖地・アーサー】は目前。
遠くからでも街並みを伺えるが、迂闊に踏み入れば死が待っているなんてことも、無いこともない。
ここまで、ベルの案内あって無事に来れたが……この先は、未知数。なにが起きてもおかしくないのだ。
「――ということで、みんな聞いてくれ! 先ほど『抜け道』を把握しておいた。そこを使えば、聖地・アーサーへ容易く入れるだろう」
「本当!? すごいわね、サトル。いつの間にそんな隠密行動を……? 聖地の前は強力なモンスターだらけで、とてもじゃないけど近づけなかったのに」
メサイアの言う通り、聖地の少し前には、ありえんほどの数の強力なモンスターが蔓延っていた。あれで、レイドボスではないというから、驚きだ。
おそらく、アルラトゥが簡単に聖地へ近づけないよう配置しているのだろうな。なんてヤツだ。
そんな危険な場所を、無理矢理に突破するプランもないことはない……。だが、真正面から堂々突き進み、大量のモンスターに群がれたら、その時点でパーティは全滅だ。
そこで俺は、まずは情報収集に当たった。
みんなにハッキリとは言えないが透明人間になれる『ファントム』があるのだ。それは今、右腕につけているバンドなのだが……役に立つ日が来ようとはな!
「サトルさん。その抜け道とは?」
リースが質問を。
それはもちろん。
……………
……………
「うははははははっははははは!」
「いやあああああああああああ!!!!!」
「どーして、こんなことにーーーーーーーーー!!!」
「高い、高すぎです~~~!!!」
「眺めが良いねぇ~」
ただいま――『上空3000メートル』。
つまり、その方法とは『空』からの侵入だった。
俺は、何度か空に上がっていたから慣れているが……不慣れなメサイア、リース、フォルは絶叫しまくっていた。まあ、確かにジェットコースターの如くスピードで落下しているからな。怖いのだろうな。しかし、ベルはいつものように落ち着いている。ひょっとして、ベルも上空へはよく行くのだろうか。
そんなワケで……聖地全体を囲うようにモンスターだらけだったから、これしか方法が浮かばなかった!
みんなの手を取り、上空へは【ダークニトロ】を利用して上がったが、あと問題は『着地』だけ。この人数で空へ上がるのは初めてだから、ちょっぴり不安がある。あるが、大丈夫さ。今の俺の力なら!
「みんな、俺を信じてくれい!!」
「頼むわよ、サトル! もしこのまま地面と激突したら、あんたを一生恨むからねッ!!」
「そうならないよう努力するさ。――おし、高度がもうない。爆風を逆噴射して、落下速度を落とす。みんな、俺にしっかりガッチリ掴まっているんだぞ!!」
俺の背中にリース。フォルを背負ったベルが右腕、左腕にメサイアという不格好な雑技団スタイルだが、これで何とかなっている。
よし、着地へ――!!
◆
着地成功――!!
【 聖地・アーサー 】
どこかの城の屋上に落ちた。
「みんな、無事か?」
「「「………………」」」
ベル以外、顔が引きつっていた。
ありゃー…よっぽど怖かったのだろうなぁ。つーか、みんな俺にくっついたまま。……ふむ、どれ。
「ひゃぃっ!? あ……兄様、どうして、わたくしの頬を突くんですかー!?」
「いつものお返しだ」
「もー! どうせなら、胸にして下さい! 胸に!!」
フォルがそんな大声で叫ぶと同時に――
城が一気に崩れ始めた!!
「ちょ、おい! フォル!」
「え、わたくしのせい!?」
つーか、まずい!!
このままみんな、巻き込まれてしまう。
「理くん。ここは、わたしに任せて! エレメントシールド!!」
ベルの『盾』から七色のレーザーが拡散すると、崩壊中の城を更に粉々に吹き飛ばし、塵になった。なっちまった。
「おいおい、むちゃくちゃだな、ベル」
「いやぁ、それほどでも。おっとと……東の方角からモンスター多数! たぶん、100体ほど! ついでに殲滅しておくよ~」
「まじか」
盾の向きを変えると、こっちへ進軍してきていたモンスターたちを吹き飛ばしていた。なんて豪快に吹っ飛ばすんだ……レーザー兵器かよ!?
「サトル! こっちにもモンスターが!」
「なぬ! うわっ、なんだあの骨だけの騎士!」
城が崩壊すると、そこには『スケルトンナイト Lv.5500』の軍勢が。そうか、さっきのベルが吹き飛ばしたモンスターも同じだろう。
「多いな……。よし、リースの大魔法で頼む」
「はい、任されました! 愛の『ホーリーグレイル』!!」
天空から雷霆の嵐が落ちてくると――『スケルトンナイト』を飲み込み、一掃した。
よしよし、これで落ち着いたかな、と思っていれば。
『……やってくれるな、反逆者共!』
どこからか声がするや、三日月状の黒い何かが飛んできた。
「ぶねっ!?」
それをヒョイっと緊急回避。
危うく腕をもってかれるところだったぜ……。
「誰だ……!!」
「私は、アルラトゥ様より生み出されたネクロマンサーの『ネルガル
』……この聖地・アーサーを守護するもの」
「そうか。自己紹介ありがとよぉぉぉ!!」
俺は、容赦なく『聖槍・アンティオキア』をぶん投げた。
「そんな槍如き……! 我がダークスキル『プレイグ』で――がはあああああああ!?」
敵に悟られないよう、同時に放った『パニッシャートライデント』がヤツの背後から刺さった。
「なにも槍は一本じゃない。俺は二槍使いだからな」
「く……卑怯な! だが、私は【不死属性】を持つ。この程度の傷はすぐに再生する。……ほらな!」
「なんだと……【不死属性】持ちのレイドボス!?」
驚いていると、横からメサイアが猛スピードで走り抜けてきた。
「そんな長くて、まどろっこしい説明はどーでもいいわ!! あんたには、これをお見舞いしてやるわ!! 私の、世界の怒りを、受け止めろォ……!!」
メサイアは、ダンッ!
――と空高く跳び上がると、
『零式・シャイニング・ブレイズ・ゴッドフィンガァァァァァァァァアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!!!!!』
……え?
おま……!!!
「どぶぎゃあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!」
メサイアの必殺技が、ヤツの頭部目掛けて飛び――
ネルガルをがっちり掴んで離さない。
「あがあああああばばばばば、ぎゃぎゃぎゃあああああああああああぁぁぁぁあああ!!! はなはなはな……離してくれえええッ!! んうぶあああああああああッ!!」
敵は『不死』だから死ねない。
永遠に繰り返される必殺技。
おいおい……メサイアのヤツ、容赦ないな!
恐ろしいことに、この光景は一時間以上は続いた……。
いったい、どうなるんだ!?
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