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第6話 歩く小屋 - それはオッサン -

 草原フィールドで【オートスキル】狩りしても旨味(うまみ)がなくなった。マズイ。くっそマズイ。レベルもあんまり上がらなくなった。



 現在……【Lv.51】 → 【Lv.66】



 どうやら、ここで頭打ちらしい。

 移動しようにもダルイしな~。小屋(マイホーム)も放置できんし、困った。



「メサイア、この小屋なんだが移動(・・)とかできないのか?」



「そんなの改造すれば出来るわよー。改造する? 確か、この前急激に湧いた『スクリームウッド』とかいう木のオバケを倒しまくった時に材料を沢山確保できたから、今ならある程度は改造もとい【改築(かいちく)】できるわね」



 なるほどね。



 確かに三日前の霧の濃い朝の日に、そんな木のオバケがわんさか現れたっけな。もちろん、俺の【オートスキル】の火属性魔法『煉獄(れんごく)』が火を()いたんだけどな。地属性モンスター相手だったので、効果はバツグン! 一瞬の出来事であったな。



「それで、改築すると移動できるワケか」


「そ。今の状態だと、ただの小屋(・・・・・)だから耐久力がないから。基礎(きそ)盤石(ばんじゃく)にしておかないと、あっさり崩壊(ほうかい)しちゃうのよ」



 それは非常に困る。

 だったら――【改築】するべきだな。



「じゃ、頼むよ。その間、俺は寝てるから」


「寝かせませんよ、サトルさん! お掃除しましょ!」

「いえいえ、わたくしのお料理を手伝ってくださいまし~」



 リーフとフォルがグイグイ体を寄せて来た。

 ふたりとも華奢(きゃしゃ)で小さくて、良いニオイするし、あーもうそんな近寄るなッ。



「……メ、メサイア。助けてくれよ~って……」



 メサイアはベッドの上で目を閉じていた。



 滝に打たれる修行僧(しゅぎょうそう)のような、そんな姿勢だ。全身にピンクのオーラが出ては消えていた。その繰り返し。


 これは【改築中】ってことでよさそうだ。

 随分と精神集中(コンセントレーション)しているみたいだし……邪魔しちゃ悪いな。



「まあいい。ところで、ふたりとも。俺は、まだふたりの事をよく知らないんだけど、リースは確か、エルフで魔法使いなんだっけ」


「そうなんです。この耳を見て貰えれば一目瞭然(いちもくりょうぜん)、これでも由緒正(ゆいしょただ)しいエルフなんですよぉ~。でも、戦うのはあまり好きじゃないのです。出来れば、家で寝ていたいですぅ~…」



 既に、倦怠(けんたい)感丸出しのリース。

 まるでヤル気のない猫だな。そこが可愛いといえば、可愛いのだが。


 まあでも、その意見には深く賛同(さんどう)させて戴く! リースとは気が合いそうだ。



「フォル、キミは……確か聖女なんだっけ」

「なんですか、その疑いの眼差し! 正真正銘(しょうしんしょうめい)、聖女ですよ! 聖職者(プリースト)ですよ! この銀髪に、この美しい青と桃の瞳で分かるでしょう!?」


「いや、それはさすがに分からんって。あと自分で美しいって……」


「で、では……この胸のところにある『聖痕(せいこん)』を見てください。これが証拠ですから!」



 フォルは、ガバッと修道(シスター)服の胸元を開けた。



「うわっ、バカッ!」



 思ったよりも大盛(ビッグサイズ)ッ……!

 いや、確かに服の上からでも結構あると思っていたけど……いかん! 余計な事は考えるな俺。(まど)わされるな俺。エロは脳を(ニブ)らせる。



 危険な思考を振り払い、正常な状態での観察に(つと)める。ふむふむ……ああ、確かに胸には『聖痕(せいこん)』らしき赤い十字(クロス)(あと)があった。それが、聖女の証なのか?



 よく分からん。けれど、あの銀髪は綺麗だ。肌も色白、ツヤツヤでプニプニしていて、触り心地が良さそうだ。そこを観察すれば、常人ではないと何となくは分かった。……つもりだ。



「というか、わたくしの方こそ質問がありますですよ」

「なんだ? フォル」


「あのメサイアさんは何者なんですか? 明らかに普通の人間じゃないですよね。オーラが違い過ぎますよ。あと、リースさん。あなたも何か隠していますね?」



 ドキッ……!! 

 ――っと、リースの心音が聞こえた気がする。



「……にゃ、にゃんの事ですかぁ」



 イヤ~な汗を()らしながら、リースは距離を取っていた。たんっと走り出して、トイレにひきこもった。


 ……ひきこもるな。



「出来たわ!!」



 メサイアが飛び()ねた。元気だなコイツ。


「出来たって、改築出来たのか、メサイア」

「そ。改築完了よ。この小屋、もう移動可能よ。ただし、サトルの【オートスキル】限定に紐付(ひもづ)けしてあるから、あんたが行きたい方向へ指示するのよ」

「おお、そうか。それで、やり方は?」

「まず……【移動スキル】を取得してちょーだい。ほら、ココの」



 ココ? ああ、あったわ。



 【建築物限定・自動移動】



 これか。

 これを取れば、小屋だろうが建築物を移動できるようだ。



「取った。じゃ、さっそく使ってみるか。ほいっと」



 スキルを発動すると――

 ズシズシっと(にぶ)い音がして――



 小屋が浮き上がった。



「おお? この移動って、まさか宙を浮いて移動するのか?」

「違うわよ。外をよく見てみなさい」



 外をよく――、ね?



「って、うあぁあぁあ!?」



 小屋の底に、筋肉ムキムキのオッサンが四人いた。そいつらは小屋を御神輿(おみこし)のように(かつ)いでいて、確かに移動していたのだ。



「……なんだそりゃァ!」

「サトル、あんたのスキルレベルが低いからよ。もっと上げれば、こんなトロくてキモイ移動じゃなくて、もっと優雅で速い移動も出来るから」



 トロくてキモイとか言うな!!(泣)

 確かにキモイけど。



 かくして、小屋は移動を始めた……。



 マジか!!

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