第541話 オートスキルでフィールドを安全に移動!
無事にダンジョン進入の申請を終えた。
入場料として50,000セルも徴収されたが――これはエレイン湖の保護の為に役立てられるらしい。それならいいけどね。
許可を得た俺は、世界ギルドを後にした。
メサイアたちの姿はまったくなく、俺は探すことに。……さすがに一時間以上も掛かったからな。みんな待ちくたびれてカフェかどこかにいるのだろう。
適当に歩いていると、何組かのパーティが湖へ向かっている様子が伺えた。結構、ダンジョン攻略組がいるんだな。
レアアイテムが眠っているとミクトランも言っていたし、みんな狙っているのか。
参ったな。こう人が多いと面倒だぞ。
急がないと。そんな気持ちが先行しながらも、俺はメサイアたちを探す。いったい、どこで寛いでいるんだかな。
歩き回っていると、カフェでメサイア達の姿を発見。まさかのカフェテラスで優雅にティータイムとはな……!
「あ、サトル。終わったんだ」
「まあな。だるかったが、無事に申請は終わった」
メサイアは良い香りのするコーヒーを楽しんでいた。その傍らではリースも。そして、フォルは――いなかった。二人だけか。
「フォルちゃんは、教会へ祈りを捧げに行きました」
と、リースが察して教えてくれた。祈りってマジだったのかよ。少しでも疑った俺自身を殴りたいね。
空いている席へ座り、俺もコーヒーを頼む。今は疲れを吹き飛ばす方が先決だ。糖分だ。糖分が必要だ。
パンケーキも注文して、俺は一度おやつを食べることに。
◆
休憩も終わり、そのタイミングでフォルも戻ってきた。これで全員集合ってわけだ。
「お待たせしました、兄様」
「疑って悪かったな」
「え……ああっ! 祈りですよね」
ん、妙にソワソワしていないか?
もしかして、祈りはウソで別のことをしていたとか……いやいや、聖女がウソをつくとか、あってはならんだろう。
「まさかお前……」
「い、祈りは本当です! 本当ですってば!」
う~む、ちょっと怪しいが……そうだな。信じてやるか。聖女の祈りは人々の希望であり、フォーチュンの導き。世界の運命みたいなものだからな。信者の力が衰えるといろいろヤバいらしいし。
それこそ、今は魔人事件で厄介なことになっているんだ。ここは慎重にならねばな。
「わかったよ。それより、出発だ」
みんなと共に、聖地ガラハッドを出立。ようやく『エレイン湖』へ向かうことに。
再び南口から出て、ギルドの受付嬢から貰ったマップを元に進んでいく。
「サトル、ここから湖は遠いの?」
「良い質問だな、メサイア。んー、マップによると徒歩でニ十分ってところだな」
「ふぅん。なかなか距離があるのね」
メサイアはなにか考えているようだ。
結構歩くから大変といえば大変だな。しかも、風も気温も高め。熱風が頬を撫でていた。……おかしいな、季節は夏ではないはずだけど。
「…………うぅ、暑いです」
「大丈夫か、リース」
「転移ゲートで到着した時は感じなかったのですが、熱気が凄いですね」
まるで砂漠地帯みたいな高温だ。ガラハッドの街では快適だったが、外のフィールドへ出るとこうも違うとは。
そんな中で、フォルはメサイアに声を掛けていた。
「あの、姉様」
「ん? どうしたの、フォル」
「家で移動はいかがでしょうか?」
「ああ、それいいわね!」
フォルの提案により、メサイアはスキル『ホワイト』の中から家を取り出す。ズドンと現れる一軒家。まさか、目の前に家を召喚するとは。
って、まさか、おっさんズに運ばせる気か……!
「おい、メサイア……」
「家に乗っていく方が楽でしょ」
「そ、そりゃそうだが……目立つぞ」
「今更なによ。細かいこと気にしないの」
細かいことって……この家の規模になると、おっさんも六人――いや、十人は必要だし、異様な光景に映ること100%だ。
だがしかし、歩きっぱなしもキツい。それも事実。仕方ない。
俺たちは家の中へ。
すると、すぐに家は浮上。どうやら、家の底からおっさんが生えたらしい。メサイアによれば、今回は十人の力で運んでくれるようだ。
ズン、ズンと激しい音が鳴り始め――家の移動が開始された。……とんでもねぇな。
「おぉ~、動き始めましたね」
リースは久しぶりの家移動に感動を憶えているようだ。確かに、この移動方法はいつ振りだっけな。
「では、わたくししばらくお風呂へ」
「ん? フォル、この時間帯に風呂か?」
「い……いいではりませんか」
「別に禁止はしないけどさ」
こう暑いと汗も掻くし、仕方ないか。しかし、メサイアもリースも不思議がっていた。
「フォルちゃん、なんでお風呂に……」
「リースも行って来るか?」
「いえ、あたしは別に。でも、なんだか気になります」
ふぅむ。フォルのヤツ、ちょっと様子がおかしい気がするな。
風呂を覗くわけにもいかないしなぁ。
などと考えていると、メサイアが外を見下ろしていた。
「はじまったわね」
「なにが?」
「サトルのオートスキルよ」
視線を外へ向けると、フィールドにいるモンスターが狩られていた。そういえば、移動中は勝手に発動するんだった。これなら襲われる心配もないし、楽々到着だな。
家を襲ってくるモンスターは、覚醒煉獄が焼き尽くす。
よーし、寝て待つか!