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第538話 ヤンデレ女神と半人半獣

 敵の謎レーザーを避けつつ、俺は『覚醒煉獄』を自動発動。巨大な爆炎が敵の魔法攻撃らしきものを(さえぎ)る。どうやら、防御可能らしい。


 そして、現れた人影が女であることに気づく。……え、女性?



「ちょ、ちょっと……サトル。あの人……!」

「ん、どうしたメサイア!」

「よく見てちょうだい」


 メサイアの言われたとおりに、俺は目を凝らした。すると、その女性の下半身が馬のような体だった。


 半人半獣の……ケ、ケンタウロスか!


 初めて見たぞ!

 ――いや、でも確か、サクリファイスオンラインの最新アップデートでギリギリ実装されていたような気がする。そうか、その名残か。

 この世界ではじめてケンタウロスに遭遇したな。しかも聖地で。


 それにしても、上半身はとんでもなく美人だな。まるでエルフ族のような美貌だ。それこそ、リースに匹敵するといっても過言ではない。でも、リースの方が可愛くて美人だけどっ!


「……え、サトルさん。あたしの顔になにかついてます?」

「い、いや……! リースは可愛いなって」

「えぇ! う、嬉しいですっ」


 いかん。無意識に見つめてしまい、つい口走ってしまった。

 そのせいか、メサイアとフォルの視線が痛い。トゲトゲしている。なぜ、自分たちも言ってくれないのかと殺意の波動がヤベェ。一週間飯抜きにされてもおかしくないだろう。

 だが、今はそれよりも――。



「お前たちのような無法者を聖地ガラハッドへ入れるわけにはいかない」


 敵対心むき出しの女性ケンタウロスは、ルビーのような赤い目を光らせる。魔力を感じる……。そうか、さっきのレーザー魔法は、あの目から出していたのか。



「兄様っ!」

「……ん、どうした、フォル」


「わ、わたくしだって可愛いですよね!?」

「え」

「リースばかり褒めてズルいです! わたくしだって褒められたいっ」

「今はそんな場合ではないだろう。あとだ。あと!」

「嫌です! 後でなんて気持ちが冷めてしまっていますから、それはもう嘘偽りの言葉。真実(まこと)の愛ではありません」


 ぐいっと顔を近づいてくるフォルの目は真剣そのもの。た、確かに一理あるというか、妙に正しいので反論できない俺がいた。

 それに、仲間の士気が下がっていては一大事。ならば。



「フォルも可愛いぞ」

「か、かわいい~~~~っ!?!?!?」



 叫びすぎだろう! 喜びすぎだろう! あと両目をハートにしてどうしたっ! しかも直立不動でぶっ倒れたし!


「あぁ、フォルちゃん!」


 リースに任せよう。

 あとはメサイアだが――ん?」



「…………」



 なんかムスッとしてないか!?



「メ、メサイア……その」

「……す」


「す?」


「ころ……」



 ころ、す?

 ころす……ころす、殺す、殺すぅ!?


 やべえ、メサイアのヤツ……超不機嫌じゃないか。最後にしてしまったのを根に持ってしまったか。そんなつもりはなかった。

 それに、俺はみんなを優劣だとか順番だとかつけるつもりはない。ただ、自然とそうなっただけ。そう、これは自然の摂理。ただ、運命がそうさせたというか。フォーチュンの導きというか!



「落ち着け、メサイア! お前の腰回りはエロいぜ!」

「……ぶっ殺す!!」


「ええッ!?」


 褒めたのになんでブチギレ!

 おかしいな……褒めたつもりだったのに、なんでだよ。しかも、包丁持って追いかけてくるし! ヤンデレかよっ! いや、まだデレてもないけど。



「おい、やめろ! メサイア! 俺を殺す気か!」

「あんたを殺して、私も死ぬ!!」


「んな無茶苦茶な!」



 などとやっとると、今度は女性ケンタウロスがブチギレた。



「私を無視してなにをやっとるか!!」


 ビュンッと魔法レーザーが飛んでくるが、俺は覚醒煉獄で自動防御。メサイアを自然の流れで抱え――守った。おっと、危なかったな。

 ケンタウロスから距離を取り、俺は身構えた。


「……サトル」

「ギリギリセーフだったな」

「うわぁぁん、怖かったよぅ……」



 えっ、えぇっ!?

 もうデレてるじゃねぇかっ。チョロすぎだろう、この女神っ! だけど、やっぱりというか、なんというか……可愛いんだよな。


 言葉なんて必要ない。

 俺にとっては、メサイアがそこにいてくれれば……それだけでいいのだから。


 だからッ。



「メサイア、補助してくれ!」

「うんっ。――オルクス!」



 これで攻撃スキルの火力は三倍だぜ!

 今度は任意でスキルを発動し、ケンタウロスを蹴散らしてやろうと思ったが――敵の動きが急にピタリと止まった。


 それどころか、ワナワナと震えていた。な、なんだ? 闘気が失せてやがる。メサイアを見て戦意喪失。どうした?



「…………こ、これはご無礼を」


「はい?」

「まさか女神族の方とは思わなかったので……」

「そ、そうだけど、私のこと知ってるの?」


 と、メサイアはケンタウロスに訊ねた。


「ええ。今の『オルクス』の名は、女神オルクス様のことでしょう」

「そ、そうだけど」

「やはり。今、世界は魔人の脅威に晒されております。そんな時に、オルクス様たちが聖地を守ってくださったんです」



 な、なんだって……!

 意外なことに、オルクスたちの活躍がこの聖地ガラハッドであったのか。へえ、意外と世界に貢献しているんだな。

 おかげで俺たちは聖地追放にはならず、招待されることに。

 どのみち、エレイン湖へ入るには『通行許可』が必要らしい。なら、仕方ないな。

【お知らせ】

comicグラスト107号(10月24日)からコミカライズ連載開始!!

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