第537話 聖水の謎!? 聖地ガラハッドへ
次の日の朝。
俺はまず、オルクスたちに事情を話した。女神三人は、朝から庭で優雅にティータイム。太陽の光を浴びると女神パワーが回復するとかなんとか。
「よっ、オルクス」
「おはよう、サトル。……どうかしたのかい?」
「俺たちは今日、ダンジョンへ向かう。魔人対策のアイテムを取りに行く」
「ほう、そんな神器のようなアイテムがあったとはね」
興味深そうに視線を向けるオルクス。一緒に同行したそうな感じだ。
「悪いが、オルクスたちは留守番だ。この島を守る番人が必要だ」
「え~! わたしたちも行きたいなぁ!」
と、プルートが俺の腕に縋りつく。そんな子供みたいにせがまれても困るのだが――いやしかし、こう求められると弱い。
でもダメだ!
守りが弱くなれば、魔人に狙われる可能性だってある。誰かが守らねばならない。
「ベルも付属しておくから、頼むよ」
「うーん、少しアリかな」
少しアリなのかよ。どういう基準なんだか。そや、この女神たちとベルは行動を共にしたことがあると言っていたし、仲が悪いわけでもないのか。
よく分からないが、モルスは特に抗議の意志を見せなかったし――女神たちは置いていくことにした。
◆
島内にある転移ゲートへ向かう。どうやら、俺たちが目指す『エレイン湖』の近くへ行ける転移があるようだ。
しかも、久しぶりの聖地である。その名も『聖地ガラハッド』という。
スターゲイザー事件で一度、各聖地は全滅して別の名になってしまったが――聖地はまたその名を取り戻した。俺はとしては、メサイアたちと聖地巡礼の思い出があるから聖地がある方が嬉しい。
「じゃ、わたしはオルクスたちと留守番してるよ」
「おう、ベル。悪いが頼むわ」
「うん、任せて。あれから、ステ振りしてかなりよくなったから、魔人も対処できると思う」
「心強いな」
握手を交わし、ベルと別れた。久しぶりのパーティ離脱で少し寂しいが、状況が状況なので仕方ない。
――そんなわけで、俺とメサイア、リースにフォルという四人パーティでダンジョン攻略を進めることに。
「まさかエレイン湖へ行かれるとは」
「ん、フォル。もしかして行ったことあるのか?」
「ええ。だって、エレイン湖の水は“聖水”とも呼ばれていますからね」
どうやら、儀式とか祈りで使う水はエレイン湖のものを使うらしい。それほど神聖な場所ってことなのか。
「あっ、それ聞いたことがあります!」
「おや、リースもアヴァロンで聖水を使うのですか?」
「ううん、里ではないんだけど……エレイン湖の聖水を飲むと、水上を歩けるようになったりするって話を聞いたことがあるんです!」
へえ、水の上をねえ。そりゃ便利な話だな。
そんなことができれば船いらず。溺れる心配もないし、俺としては欲しいスキルだ。
「…………」
「ん、メサイア。どうした?」
「なんでもないっ」
……? なんだ、メサイアのヤツ。妙に不満そうというか、顔が赤いというか。
転移ゲートに到着。カジノの隣に設置してあるとはな。
これを潜ればあっという間に聖地へたどり着ける。
……よし、行ってみるか!
さっそく俺は先陣を切る。
・
・
・
【聖地ガラハッド】
ゲートを抜けると、大きすぎるクレーターがあった。まるで昔、ジャイアントインパクトでもあったような、そんな大穴。
「わぁ! 大きな穴の中に街が……」
感嘆の声を漏らすリース。
続いてフォルも――
「こ、これが聖地ガラハッドですか!」
驚きのあまり、裏返っていた。そんなにビックリする――よな。俺も驚いた。こんなクレーターの街は初めて見たよ。
サクリファイスオンラインでも、こんな街並みはなかったはず。つまり、これはオリジナルの街であり、聖地だ。
圧巻な光景に少し震えていると、メサイアが突然俺を押し倒した。
「サトル!」
「うわッ! なんだよ、メサイア!」
転倒する俺は、なんとか体勢を立て直した。すると、刹那でレーザービームのような光線が通り過ぎっていった。光は地面に激突するも、特に爆発することもなく変わりはなかった。……な、なんの光なんだ、アレは。
よく見ると、少し離れた場所に人影があった。
え、誰だ……。
「……よそ者がっ。我が聖地ガラハッドへ足をつけようなど言語道断」
「……え」
「追放だ」
「!?」
「貴様たちのような部外者は追放するッ!!」
「はあっ!?」
謎の人影は空高くジャンプするなり、またもレーザーを放ってきた。……いや、これは魔法スキルか。
ならば、こちらは【オートスキル】で迎撃する――!




