第534話 オートダークスペル
空に浮く謎の影。あれは……!
なぜ、あの男がこの島に侵入できているんだ……?
魔人ガスマン!
つーか、やっぱり生きてやがったか。
死神スキルのオーバードライブで増大させた最強クラスのエンデュランスを食らっても生存しているとは、さすが魔人か。
たぶん、再生能力が並外れているってところだろうか。完全に滅ぼさないと消滅しないのだろうか。
「ガスマン……」
「久しぶりだな、サトル。この前はよくもやってくれたな」
「お前、どうしてここに。かなりのダメージを追ったはずだし、それにこの島への侵入は不可能なはず……!」
すると、ガスマンはゆっくりと降りてきた。って、おい! メサイア達が裸なんだぞ。見に来るんじゃねえ、ヘンタイが!
慌てていると、ベルが裁縫スキルで即席の水着を生成。みんなに着せていた。……ナイス!
「ほう、あれが魔人か。はじめてみた」
と、オルクスが興味を示す。そうか、初接敵だったか。
「へ~、なかなかのイケオジじゃなーい」
プルートは面白おかしそうにガスマンを見つめていた。……もしかして、一目惚れ? まさか、爺趣味!? ……そんなわけないか。
モルスは「……」と興味なさそうで、温泉を楽しんでいた。ですよね。
――って、そうか。前とはまるで状況が違う。今こちらには女神が四人もいるんだ。勝ち目はかなりあるぞ。
しかし、それよりも先に。
「おい、ガスマン。どうやって侵入した!」
「簡単なことさ。ゲートを潜ってきた、それだけのこと」
しまった!!
特殊転移用ゲート『レンブラント』の設置をメサイアに頼んで、大量に設置してもらったんだ。今や各聖地に配置完了したようだし、この島と繋がっている。おかげで観光客は倍増しており、以前とは比べ物にならない活気となっていた。
それだけ転移ゲートを設置すりゃ、魔人も利用するわな。
「な、なんと……堂々と入ってきたのですね!」
拳を構えるフォル。
そや、今日のフォルは珍しくスク水だった。しかも旧スク水! なんで……!? いや、今はどうでもいいな。
「フォルちゃん!」
「リースは、わたくしの後ろに」
「う、うんっ」
ちなみに、ベルはモルスと同様に興味がないのか完全にくつろいでいた。おい、やる気出せよなぁ……!
「ごめん、理くん。裁縫スキルで魔力使い切っちゃった」
「はあ!? 魔力消費量そんなに多いのか!?」
「そんなとこ」
なんて燃費の悪さだよ。まあいい。
「メサイア! こうなったら、今度こそガスマンを倒すぞ!」
「そうね。向こうからわざわざ来てくれたのだから、おもてなししてあげないとね」
ニヤリと笑うメサイアは、火力アップの【オルクス】を俺にかけてくる。って、やっぱり戦うのは俺か。
……仕方ないな。
少々面倒だが、あのガスマンをぶっ倒す。
今のショタモードでどれくらいやれるか分からんが、なんとかなるさ!
「なにをゴチャゴチャ話している! 食らうがいい……オートダークスペル!」
黒いオーラに包まれるガスマンは、そんなスキルを発動していた。
――なッ! 【オートダークスペル】!? まるで俺の【オートスキル】に酷似している。ま、まさか……上位互換スキルか?
【オートダークスペル】
【効果】
闇属性魔法スキルの一部を自動で発動する。
発動率は20%であり、魔力も消費。
「メサイア、あのオートダークスペルって……!」
「さあ、知らないわ。聞いたことない!」
マジか。
身構えていると、ガスマンはピタリと止まったままだった。
え?
「どうした?」
「……き、貴様から攻撃してこい!!」
「は? って、まさか。攻撃されないと発動できないのか」
「…………ぐっ!」
図星であるとガスマンの表情に出ていた。分かりやす!
なんだ、俺の【オートスキル】の下位互換じゃないか。
どうやら【オートダークスペル】は任意発動はできないようだな。なら、こちらから攻撃しなきゃ安全ってわけだな。
しかし、まさか魔人が俺と同じオート系のスキルを使うとはな。
「じゃ、温泉でも楽しむか」
俺は背を向けたのだが、ガスマンがブチギレた。
「ふざけるなああああああ! ならば、また噛んでやる!」
ああ、そうか! ガスマンのまともな物理攻撃は“噛む”しかないんだ。丁度いい、このショタモードを解除してもらおうかな。……いや、まて。
ヤツは以前に『逆行』と言っていた。
つまり、これ以上は赤ん坊になり、消滅する恐れさえあるわけだ。ダメじゃん!
「サトル、ヤツを倒せばきっと元の姿へ戻れるわ」
「そうだな、メサイア。それに、ガスマンは“殺意”を俺に向けた。つまり――」
超覚醒オートスキル【オーディール】が発動。メサイアのオルクスの補助によって、火力は三倍。
まばゆい十字の閃光が数百となり、ガスマンに激突。
「ぐおおおおおおおおおおおお…………ッ!」
ずどぉぉぉんと轟音が響くや、花火のような光景が連発する。たまや~…じゃないな。
「サトル、多分トドメには女神の力が必要だ」
「オルクス!」
「我々に任せてくれ」
いつの間にか戦闘態勢のオルクスとプルート。そして、モルスも立ち上がっていた。天使の翼を広げるや、空へ急上昇。って、そんな白い翼があったのかよ! 本当に女神だった!
メサイアもアレできるのか……?
そんなことを思っていると、三人はガスマンを取り囲み……女神スキルを発動していた。……おぉ、これは! この神秘的な光はいったい!




