第525話 ミッション:女神を三人集めろ!
「このままでは聖地は滅ぼされ、世界は滅亡するかと……」
フォーチュンは諦めたかのように語尾を弱めた。……おいおい、絶望するには早すぎるって。
「ちょっと、フォーチュン! あんた、原神のクセに無責任すぎでしょ!」
ぷんぷん怒りながら抗議するメサイアは、フォルの――いや、今はフォーチュンの両肩を掴んで揺らす。そして、言葉を続けた。
「魔人を倒す方法を教えなさい! あと、フォルの母親を元に戻す方法もね」
俺が聞く前に全部聞いてくれるとは、ありがたい。リースもベルもその方法とやらが一番気になっているようでフォーチュンに視線を送っていた。
神様だろ、なんとかしてくれよな。
「そ、それは……女神の力でしたら可能かと。でも、この世界にもう女神は……」
「いるわよ」
「え」
「私が女神よ! こ・の・わ・た・し・が」
大切なことなので二回言うメサイア。天上天下唯我独尊まったくもってその通りである。……いや、実際は生き残りの女神が少人数だがいるらしいけどな。
「なるほど。ならば、勝算はあるかもしれません」とフォーチュンが答えると、リースが「本当ですか!? フォルちゃんのお母さまを元に戻せるんですね」と少し涙目で安心していた。
だが、ベルは神妙な顔つきだった。元からだけど。
「リース、残念だけど……シア一人の力では厳しいかも」
「え、ベルさん。それって……どういう意味ですか?」
「確かに、シアは特別な女神だ。けれど、相手は聖女アイファ。数々の奇跡をわたしは耳にしている。それこそ都を創造しちゃうような……ね」
そや、花の都ネオフリージアってアイファの力だってどこかで聞いたような。どこだっけ……忘れた。
「なあ、フォーチュン。メサイアだけの力では無理なのか?」
「……はい。できれば、あと三人の女神が必要です」
あと三人も必要なのか。
このバカみたいに広い世界で女神を三人も探すだなんて、とてもじゃないが何年掛かるやら。
不可能に近い。
そもそも、俺はメサイア意外の女神なんて知らんぞ。
「なによ、簡単じゃない」
ぼそっとつぶやくメサイアはの瞳に諦めの文字はなかった。むしろ、メラメラ燃えていた。元から赤い瞳だが、ごうごうと煮えたぎるようだった。いつもに増して目力があるなぁ。
俺に似ていつも面倒くさがるクセに、今日は一味も二味も違うじゃないか。
「そのやる気、どこから湧いて出ているんだ? 教えてくれよ」
「あのね、サトル。大切な仲間の親が大変なことになってるのよ。助けなきゃ! 親ってのはね、唯一無二の存在なの。分かるでしょ」
カッコイイこと言うじゃねえか。てか、それならミクトランともっと仲良くしろよな!?
頼むから、メサイアも父親であるミクトランともうちょいだな……まあいい。
それは置いておいて、今は魔人とアイファだ。
「わかったよ。そろそろ、島を出る時かな」
「そうよ。まずは女神を三人集めるの!」
「アテはあるんだろうな?」
「もちろんよ。知り合いがいるから」
へえ、知り合いねえ。メサイアに女神の知り合いなんていたのか。
「まさか……」
妙に顔をしかめるベルは、遠い目をしていた。なんだ、ベルは知っているんだな。
「ヤバイ奴なのか?」
「いや、なんというか……うん、理くんも知っている相手だけどね」
「俺が?」
おかしいな、女神はメサイアしか知らんのだが。
いつの間にか会っていたかな。
メサイアによれば、三日もあれば全員集められるとのことだった。思ったより、早いな。
しばらくは任せることにした。
◆
女神が揃うまでは、俺は島の開拓を進めることに。
ここ最近では更に拡張をし続けており、最近では港の付近に釣り堀もオープンしていた。
俺とリースは二人きりで釣りをしている。
「フォルちゃん、大丈夫ですかね……」
エメラルドグリーンの瞳に覇気がなかった。ずっとずっと心配しているリースは、元気がなくて不安に押しつぶされちゃいそうな、危うい存在となっていた。俺がしっかりせねばな。
あれからフォーチュンは意識を返し、フォルに戻った。だが、途端に気絶して眠りに入った。負荷が大きいらしく、そうなってしまう。
そんなフォルをベルが面倒を見てくれていた。
俺はリースと共に気晴らしに釣りってわけだ。
「心配すんな、全部うまくいくさ」
「サトルさんはポジティブなんですね。うらやましいです」
「俺の取り柄は、惰性なところさ」
「それ、取り柄なんですか……?」
「ああ、惰性も極めれば才能に変わる」
今の俺には【超覚醒オートスキル】があるからな。惰性の俺にピッタリの最強スキル。なんたって自動で魔法スキルを発動してくれるんだからな。
「なるほどっ! 言い得て妙ですっ」
リースの釣り竿に反応があった。これは大物だぞ!
竿がもってかれそうになったので、俺は背後に回った。リースの体を支える。……それにしても、なんて小柄だな体だ。
「すげえパワーだ。釣り上げるぞ」
「はい! 一緒にがんばりましょ!」
今は楽しもう。メサイアが帰ってくるその日まで。




