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第523話 女神の血を求める魔人

「女神ィ……!」

「……女神の血ィ!」



 二人の魔人は、女神を求めているようだった。……どうやら、メサイアに気があるようだな。



「え、私!?」

「よかったな、メサイア。魔人からモテモテだぞ」


「え、やだ、キモイ」



 ドン引きじゃねぇか。――って、それもそうか。あんな人間離れした風体の二人組から迫られるとか俺だって嫌だ。


 てか、今のメサイアは『死神』のハズなのだが、どうして女神として認識されているのだろう?



 不思議に思っていると、背後から影が現れた。うぉ、なんだ!?



「私が説明しましょう」

「ミクトラン! いきなり現れるな、心臓に悪い」


「おや、サトル殿。小さくなっておりますね」

「まあな。魔人ガスマンに噛まれて若返った」


「ほう、ガスマン……つまり、元大神官フロリアンのことですね」



 だから、そうだってーの。

 下手をすれば、俺もあの二人の魔人のようにスライムを吐かされていたかもしれんがな。それだけは絶対に嫌だが。



「で、なんでメサイアを女神扱いしているんだ?」

「いい質問です。実は、メサイアはもう『女神』に戻っているのですよ」


「なにぃ!?」



 俺はメサイアの方向へ振り向く。

 すると、慌てて動揺しまくっていた。なんで、そんな挙動不審なんだよ。

 つか、いつのまに死神から女神に戻っていたんだ。気づかなかったぞ。そんな片鱗すらなかったのに。



「……い、言わなくてゴメン。ミクトランに頼んで戻してもらったの」

「そうか。じゃあ【死の呪い】も解除したんだな」


「うん、そもそも微量だったから、抜き取るのも簡単なのよ」



 そんなカートリッジ式みたいな扱いなのか……?

 まあいい、なんであれ魔人を討伐せねば……島がメチャクチャにされる!



「メサイア、お前は下がってろ」

「いえ、今回は私にやらせて。少しは島の責任者として戦わなきゃ!」



 珍しく腕をまくって立ち向かうメサイア。……おぉ、マジか。

 コイツがこんな積極的に戦闘に参加するなんて、珍しすぎる。本来、サポーター的な立ち位置なのだが、戦えないわけでもない。

 俺と同じで、ただ……面倒くさがりなのだ。


 それが今は島を、人々を守る為に立ち向かっている。素晴らしいことだ。


 そうだな、今回はメサイアに譲ろうではないか。

 女神の力とやら見せてもらおうか――!!



「がんばれ! 応援しているぞ!」

「ありがとう、サトル。魔人といえば、女神が戦わなきゃ……!」



 ニッと白い歯を見せて笑うメサイアは、なんだかカッコよかった。……おいおい、マジで女神だぞ!



「女神ィ!」

「血ィ!」



「女神とか血とかうるさいわ! そんなに欲しければくれてやるわ!」



 建築スキルを発動するメサイアは大量の『角材』をヤツ等の頭上に落としていた。



 ――ズドンッ!



 物凄い音がして、魔人二人が角材の重圧に(もだ)えていた。




「ギャアアアアアア……!」

「グゥゥアァァゥァ……!」




 おぉ、メサイアのヤツ、まさか建築スキルをそのように使うとは考えたな!

 島に別荘(ヴィラ)やら建物を建てまくって余った角材が大量にあったんだな。てか、そんなモンをアイテムボックスに放置していたとはな。アイテム整理くらいしなさい!


「さすが姉様!」

「メサイアさん、凄いですね!」



 フォルとリースも絶賛。

 そうだな、珍しく活躍してるしな。珍しく。



「こりゃ驚いた。シアが魔人相手に戦ってるじゃん」



 ぬっと現れるベル。お前も帰還していたか。



「よぉ、ベル。ミクトランとの話は終わったんだな」

「うん、まあね。それより、任せて大丈夫なの?」

「ああ……今のメサイアは『女神』だからな」


「あー、なるほどね」



 納得するベルは、その場に座った。自分の出番はないと悟ったようだ。


 再びメサイアに視線を移す。

 すると、駆け出してジャンプしているところだった。



「ていやあああッ! シュネーヴァイス!」



 魔力を込めまくるメサイアは、女神専用スキルを打ち放つ。その白い光は、魔人にとっては間違いなく弱点であり、脅威。


 角材にまみれている二人は、抵抗できない。


 よって、シュネーヴァイスは確定で命中して――激突。



「「ウギャアアアアアアアアアアア!!」」



 魔人二人組の断末魔が響く。

 そして、とうとう女神の力によって灰塵(チリ)となっていた。……これはつまり、浄化されているようだな。


 しばらくして、二人は消滅したかと思ったが――なんと“人間”に戻っていた。




「え、俺たちはいったい……あ、もしかして、貴女様が俺たちを救ってくださった!?」

「確か魔人にされて……ありがとう、ありがとう!!」




 心を入れ替えたかのように二人は、地面に額をこすり付けて感謝していた。そんなメサイアは超ドン引きしていた。つーか、その角度はメサイアのパンツが見えるだろうが! 見たら殺すぞ!



「い、いいのよ。さあ、帰りなさい」


「本当すみませんでした! 心を入れ替えます!」

「もう悪いことはしません。感謝します! 女神様あああっ!」



 悪役貴族みたいなヤツ等だったのに、人格を変えちまったぞ。これが女神の力かぁ……スゲェや。



「がんばったな、メサイア」

「えへ……えへへ」



 珍しく照れまくるメサイアは、とてつもなく可愛かった。ああ――間違いなく女神だよ。

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