第521話 女神と聖騎士の関係性
その後、マナスとアロンダイトがおっさんを確保。
カジノから追い出されていた。
――って、あの二人が警備係なのか……?
「なにしてんだよ、二人とも」
俺が話しかけるとマナスは「ん? 君は誰だい?」と疑いの眼差しを。アロンダイトは「子供がいるような場所じゃないぞ」と俺をつまみ出そうとする。
しかし、ベルが止めた。
「あー、まった。この子は理くんだから問題ない」
「「なにィ!?」」
そういえば、花の騎士たちに俺が子供化してしまったことを話していなかった。そりゃ、驚くわな。
「そういうことだ。ショタで悪いが」
「サトルだったのか。魔人と戦ってこのような姿になるとは……」
物珍しそうにマナスは俺を観察する。珍獣扱いだな、こりゃ。
一方のアロンダイトは「信じられん……信じられん」と過剰に困惑していた。そっちが普通の、一般的な反応だろうな。
◆
カジノはかなり順調だ。
花の都ネオフリージアからの流入も多く、遊びに来る人も増えていた。
向こうと違い、こっちは甘めの設定だから好評だ。それに、美人なバニーガールも多いからな。
しかも、なぜかチャルチとカローラがバニーガールをしてくれているし。
二人とも脱ぐと凄いと判明した……。
「この分なら、かなり儲かりそうよ」
満足そうに金貨を数えるメサイアは、目まで金貨になっていた。儲かって笑いが止まらんらしい。
俺としても、稼げてラッキーだがな。
「そりゃ朗報だな。金があれば設備投資も出来るし、魔人の奇襲にも備えられる」
「え」
「え……?」
なぜかメサイアの反応はイマチイだった。なんでだよっ!
「なに言ってんのよ、サトル。まずは、あんたの体を戻さなきゃ」
「マジか! そういう風に思ってくれていたとはな……嬉しいぞ」
これは予想外だった。
てっきり島の発展しか考えていないと思っていたが、それは俺の思い過ごしだった。そうだよな、メサイアは本来は女神。今は死神だけど、それでも女神であることに変わりはない。
俺のことを考えてくれているんだ。
「ったりまえじゃない! ずっとショタのままなんて……悪くないけど、シックリこないのよね」
それは俺自身も感じていたことだ。
さすがに子供のままは……ちょっと不便すぎる。
無条件で愛され、人気者なのは最高なんだが。
「姉様の言う通りです。元の兄様に戻っていただかないと」
「フォル、戻ったのか」
「ええ。あんまり稼ぎすぎると姉様に悪いので」
どうやら、ある程度は稼いで満足したらしい。
続いてリースも合流。
勝利の笑みを浮かべて、ルンルン気分だった。ほぉ、珍しく大勝利っぽいな。
「えへー、勝ちましたぁ!」
「やったな、リース!」
「ルーレットって楽しいですねっ」
あとはベルだが、まだスロットで遊んでいるのだろうか。
腹も減ったし、そろそろ別荘へ戻りたいところだな。
「おや、控室にいましたか」
ミクトランが顔を覗かせていた。
そや、ずっと何をしていたのやらな。
「遊んでいたのか?」
「いえ、さきほどまで外出しておりました。ただいま戻ってきたところです」
「そうなのか」
「少々、ベルと話があるのでお借りしますよ」
「それは構わないけど――」
「では、後ほど」
颯爽と去っていくミクトラン。ベルと話しねえ。またロクな話でなければいいがな。
頼むから、変な討伐クエストだけはカンベンしてくれよ。
◆
カジノの運営をマナスに任せることに。
てか、花の騎士がずいぶんと積極的だな。
「なあ、メサイア」
「なによ」
「騎士たちをあんな顎で使っていいのかよ?」
「いいのよ。彼らは聖騎士であり、フリージアの花の騎士。なにが言いたいかというと、立場的にはこっちの方が上なのよ」
「へえ?」
――そうだったの?
知らなかったぞ。
「姉様の言う通りですよ、兄様」
「つまり?」
「だって、女神の方が位が上ですから。……まあ、今の姉様は死神ですけど、でもそんなの見た目だけでは分かりませんから」
いやいや、見た目で死神だぞ、コイツは。
まず服装が黒すぎるし!
髪の色も黒いし、瞳だって赤だ。
本来なら死神というのが正しいだろうが――とにかく、メサイアの方が上だったわけか。
「はえー、メサイアさんってそんなに凄い人だったんですね」
「そうよ、リース。これでも私は偉いんだからっ」
よくよく考えればミクトランの娘って時点で気づくべきだな。つか、誰も親子だとは思わんわな。似てないし。
騎士たちが従順な理由が分かった。
それはそれとして、飯にしよう。
「よし、ご飯タイムだ。今日はドラゴン肉でバーベキューだな!」
「いいわね、サトル。贅沢にいきましょう!」
そうしてカジノを出たところで事件は起きた。……え、冗談だろう?




