第517話 島の発展と聖女の恐怖のスマイル!
更に三日後。
グースケとパースケのおかげだろうか、島に観光客が増え続けていた。さすがに別荘だけでは足りないと判断し、メサイアは、ついにはホテルとカジノも作ってしまった。
木材やら石材やら材料集めに俺が駆り出され、そこら中のフィールドやダンジョンを駆け巡った。
超覚醒オートスキルで楽々とはいえ、歩き疲れたぞ。
だが、島の文明レベルが一気に上がった。
もはや『島国』だな――こりゃ。
「どんどん快適になっていくね~」
建築されていく建物を楽しそうに眺めるベル。最近やっとステータスとスキル振りが終わったようで、今度こそ大丈夫だと胸を張っていた。……大丈夫かなぁ。
「聖地アーサーへ行く目的からは外れているが、まあいいだろ」
「急ぎじゃないし、それに今は世界の為にも魔人討伐が先だね」
ならばと、この島を強化しまくって迎え撃てばいいんじゃね? みたいな話まで進んでいる。
今のところフォルの聖域スキルで守られているし、襲われる心配もなさそうだが……守護効果がミクトランのミレニアムと同等ならいいんだけどな。
「ベルの言う通りです。この島を囮にした方が花の都の被害も少ない」
ぬるっと現れるミクトランは、笑顔で言い切った。……それしかないかもなぁ。ただ、メサイアが建てた建築物を吹っ飛ばす可能性がある。その時、キレられるかもな。
「あんた、最初からそのつもりだったのか」
「……さあ、どうでしょうね」
あれから、俺の蘇生回数も三回に増えた。とうぶんは死を恐れる必要はなさそうだ。メサイアの死神化もそれほど世界に影響は出ていないようだ。
微量の【死の呪い】を使っただけだから、今のところは問題ないとミクトランも保証してくれた。いざとなれば女神に戻すとまで言ってくれたし、当分は死神で活動することになった。
それにしても、別荘は快適だな。
小屋に比べれば雲泥の差だ。
こんな場所でスローライフできるなら、永久にしたいねっ。
俺は、リクライニングチェアでリラックス。
浜辺には、水着姿のフォルとリース。二人とも仲良く遊んでいるようだ――ん?
「――てやああああああッ!」
叫ぶフォルは、海に向かって拳を打っていた。
すると、モーセよろしく『ぱかぁん』と海が真っ二つに割れていた。……こんなところで修行なのか……?
「わぁ、フォルちゃん凄いです!」
「へへーん。わたくしの魂の拳なら、こんな奇跡も起こせるのですっ」
気持ちよさそうに胸を張るフォル。……マイクロビキニだから、とんでもないぞ。
そんな光景を見て驚く貴族や観光客。
そりゃそうだ。
あんな細腕の銀髪女子が海を割るとか信じられないよな。だが、拳ひとつで戦う殴り聖女だからな。
「へえ、凄いね、君たち!」
「しかも、めちゃくちゃ美人じゃん。俺たちと遊ぼうぜ~」
と、二人組の男がフォルとリースに詰め寄っていた。あの品にある服装からして貴族っぽいな。……ナンパかよ。
「……はい?」
当然、リースは怯え、フォルは汚いものでも見るような目で男たちを睨んでいた。……目つき怖ッ!
いつも俺に対しては目をハートにしているのにな。ここまで違うとは。
本当に他の男には興味ないんだな。
「水着えっろ!」
「お、聖女様じゃね? こんな爆乳だったとはな!」
一応、利用客のようなのでぶっ飛ばすワケにもいかんよなぁ。
「とっとと消えやがれください」
恐怖のスマイルを向けるフォルは、リースの手を引っ張って去っていく。一方で、二人組は呆然としていた。
「……え、今、消えろって言った……?」
「せ、聖女フォルトゥナ様じゃないのか……? ニセモノ?」
さすがの二人も恐怖で小さくなっていた。というか、俺もビビったぞ。いや、チビるねっ!
いずれにせよ、安心していると――突然、空が黒く染まっていた。
ん、なんだ? スコールか?
『…………』
ずっごおおおおおおおぉぉぉぉと激しい音がすると、何かが落下してきて男二人組のいる場所に落ちた。
「「ぎゃあああああああああああ!!」」
そこにいたはずの男たちが一瞬で蒸発して――死んだように見えた。
……いや、これは……この気配はまさか。
魔人か……!?
「……ようやく侵入できた」
砂埃が晴れると、砂浜に白髪で白髭の老人のような――だが、明らかに人間ではない異形の男が立っていた。なんて巨体な……!
つーか、筋肉ムキムキだろう。
魔人サリエリではなさそうだが、気配は似ている。
「サトル、あれはいったい!」
別荘の中からメサイアも出てきて、驚いていた。
「たぶん、魔人だ!」
「ええ!? あんな魔人は見たことないわよ」
「新たな魔人ってことかな」
「うそー…」
なんにせよ、聖域スキルを突破された事実がある。……いや、スキルが解除されていたというべきか?
もしかしたら、フォルは魔力切れを起こしていたのか。
まあいい、追及は後だ。
この老魔人を倒さねば、島はめちゃくちゃだぞ。
というか既に二名の犠牲者が出ちまった。
ならば、せめて仇だけでもとってやらねば。




